小さな活動が大きな変化をもたらすか

絶滅危惧ⅠA類の渡り鳥ヘラシギの雛 写真提供: © Pavel Tomkovich

2018年は「鳥の年」になるでしょう。ナショナルジオグラフィック、オーデュボン協会、コーネル大学鳥類学研究所との共同の取り組みが始まるのです。ぜひこの取り組みに参加し、あなたの裏庭が大陸という大きなジグソーパズルの1ピースであることを感じてみませんか。

 

朝目覚めたら、何が聞こえますか?

窓を開けたら、何が見えますか?

太陽が昇るとお気に入りの枝に止まり、赤い胸を張って元気よく囀るコマツグミは、地元の風景の一部、あるいはまだぼんやりとした目で歯を磨いていて滅多に気が付くことのない日々のルーチンの一部でしかないかも知れません。

しかしながら、その小さな羽毛の塊は、毎年の地球規模で渡りをする数十億羽のうちの1羽なのです。渡りはその鳥のDNAに組み込まれており、その学名Turdus migratorius(「渡りをするツグミ」の意)の由来にもなっています。

毎年秋になると、コマツグミは渡りの準備を始め、みずみずしい芋虫を食べて太り、南へ向かう長い旅を始めます。夏はカナダ北部、冬はメキシコ南部まで到達し、コマツグミの分布域は北米大陸のほぼ全域に及びます。

これこそが鳥の渡りの驚異で、毎年世界中で推定500億羽がさまざまなルート(フライウェイ)に沿って、壮大かつ危険な旅に出ます。まさに驚異の渡り鳥です。

コマツグミ(別名アメリカンロビン)
写真提供: © Nature Lady

彼らには選択の余地はありません。「飛ぶか死ぬか」なのです。この鳥は鋭く尖ったナイフの上で生きているようなもので、その多くが途中で力尽きてしまいます。

世界的な現象といえるこの究極の旅では、鳥たちは目的地である繁殖地にたどり着くまでに多くの困難に直面します。アカフトオハチドリは高速で羽ばたくのに必要なエネルギーを蓄えるために多くの花の蜜を見つけなければなりません。帆翔するコシジロハゲワシは、不適切な場所に設置された送電線で感電死しないよう気を付けなければなりません。地中海ではシュバシコウが弾丸から素早く身をかわします。そして南米では、ボボリンクが餌である昆虫を求めて断片上に残されたパンパス草原を探さなければなりません。

キョクアジサシは文字通り毎年北極から南極の間を渡ります(渡りの最長距離)。翼開長1メートルにも達しないこの鳥が、時には嵐をも乗り越え大西洋を渡りきる姿を想像してください。

バードライフはこの国際的な鳥、キョクアジサシに特別な感情を持っており、世界中の人々をつなげる力を持つ鳥として、ロゴにも使っています。

 

渡り鳥は国境を越える

資料提供: コーネル大学鳥類学研究所(2017年1月4日時点のクロボシアメリカムシクイの位置情報)

広大な分布域を持つ多様な鳥を保全するには、多くの国と大陸の共同の取り組みが必要です。だからこそバードライフは「フライウェイ」のアプローチを取っているのです。渡りのルートの全域にわたって多くの国の人々の力を結集し、世界120カ国以上のパートナー(全米オーデュボン協会を含む)とともに鳥類の保全を進めているバードライフは、こうした取り組みを実施するのに理想的な立場にあります。

バードライフのこの仕組みでは、必要な地域に必要な資金を効果的に配分することも可能です。繁殖地がある裕福な北の国から、重要な渡りのルートと越冬地での保全活動資金を必要とする生物多様性の豊かな国への支援によって、お気に入りの鳥が次の年も庭に戻って来ることにつながります。

ヘラシギは絶滅危惧ⅠA類のシギ・チドリ類でロシアのツンドラ地帯からアジアの西太平洋沿岸域を通り、バングラデシュやミャンマーに渡ります。彼らの渡りの中継地は産業や、インフラ、養殖などのために埋め立てられ、残る干潟もひどく汚染されています。野生では、200ペア以下しか残されていません。

下の動画のコマは全て、「スプーニー」(ヘラシギの愛称)の渡りルート上の国の子どもたちが描いた絵が使われています。

保護活動は認識することから始まります。子どもたちが絵を描く小さな活動から、黄海沿岸のヘラシギの重要な餌場を守るための政府との共同活動まで、フライウェイの保全活動は渡りという概念を認識することから始まります。

渡り鳥の目から見た現在の大陸は、全体が道路や荒れ地、乱獲の海、アスファルトで分断された生息地のパッチワークです。安全なルートをつなぎ合わせることが年々困難になっており、多くの渡り鳥が深刻なトラブルに陥っているのです。渡り鳥の40%以上の種が減少しており、200種以上が世界的な絶滅危惧種に分類されています。

 

朝のコマツグミの目からすれば、あなたの裏庭は自然保護区であり、あなたはその番人なのです。

事実、あなたの裏庭または地元のエリアは、「渡り鳥のジグソーパズル」を完成させる最後のピースかも知れないのです。

どんなジグソーパズルも、最後のピースをはめ込むまでは完成した絵を見ることは出来ないのです。

渡りの途中のオオハクチョウ
写真提供: © Nick Ford

空を見上げて、何を思いますか?

今回バードライフは、ナショナルジオグラフィックオーデュボン協会コーネル大学鳥類学研究所と共に2018年「鳥の年」キャンペーンを始めます。鳥とその生息地を称え、保全を行う一年キャンペーンです。熱帯保全生物学者でナショナルジオグラフィック誌のフェローThomas E. Lovejoyは次のように述べています:

「鳥を保全することは、世界の環境問題に取り組むのと同じことです。」

コマツグミが毎年数十億羽の渡りに加わっているように、#BirdYourWorld運動に参加して、例えば次のような小さなことから始めてみませんか?

  • 鳥の渡りを当たり前と思わないでください。
  • 今度あのコマツグミやハチドリ、ツル、タカなどの渡り鳥を見たら、彼らの地球を横切る壮大で困難な旅のことや、彼らが空から何を見ているのか、考えてみてください。
  • わずか数週間の間に、違う国の人々が同一の鳥を目にすることを想像してみてください。
  • 最後に、渡り鳥のフライウェイにある生息地を守る活動について考えてください。全てが「渡り鳥のジグソーパズル」を完成させるピースなのです。

鳥の年2018

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原文はこちら

ナショナル ジオグラフィックのプレスリリースはこちら

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