EU自然保護政策に揺らぎ ― 「単純化」か「破壊」か?
今夏、欧州は森林火災や洪水などの気候災害に見舞われました。このような危機に直面しているにも関わらず、欧州委員会は「環境規則の簡素化」と称して環境保護法を緩和する動きを進め、市民から強い反発を受けています。わずか10日間で20万人近くが「#handsoffnature」と声を上げ、自然保護の重要性を訴えています。
「簡素化」というEUの新しい流行語
欧州委員会フォン・デア・ライエン委員長は演説で「簡素化」を繰り返し、企業の負担軽減を強調しました。しかし実際は、規制緩和を進める口実に過ぎず、人と自然を守る明確なルールを奪いかねません。
詳細は、政策責任者のアヌーク・ピュイマルタンによる動画やFAQをご覧ください。
資金の行方
次期7年間のEU予算案は、生物多様性と気候に関する資金が不足し、自然保護の柱である「LIFEプログラム基金」も削減の危機にあります。公共資金を何に使うのか、今後の議論が重要です。
農業の未来
農業政策(CAP)の簡素化が進み、草地や泥炭地の保護が後退、そして、資金に関する透明性が低下しています。農業の未来に必要な生物多様性や気候レジリエンスへの投資が必要です。
森林破壊
森林破壊規制は立案者によって施行が1年延期され、弱体化の動きが進んでいます。森林モニタリング法案も加盟国によって骨抜きにされ、欧州議会での審議が進まない限り、法案撤回の危機にあります。今年の山火事が示すように、規制後退は極めて危険です。
海洋保護
「Ocean Pact」の政策参入や「Maritime Spatial Planning Directive」の改定は、海洋保護を強化する好機となります。10月13日からの「Ocean Week」では、エネルギー転換や混獲などが議論される予定です。
詳細はこちらをご覧ください:https://www.oceanweek.eu/
今すぐ鉛を禁止せよ
毎年4万4千トン以上の鉛が狩猟や釣りから自然環境へ流出しています。欧州委員会は2025年2月に規制案を発表し、現在加盟国で議論中です。
自然への投資で温暖化を防ぐ
来年公表予定の気候適応戦略は、自然への投資が気候変動に対する最善の解決策であると示しています。健全な生態系は炭素を吸収し、水資源を調整し、地域を災害から守ります。
自然保護とクリーンエネルギー
再生可能エネルギー導入の迅速化が進められていますが、自然保護と両立する仕組みが不可欠です。自然回復とエネルギー普及を結びつけることが、EUが必要としているアプローチです。
私たちは自然保護の前進に向けて、今秋以降も続く重要な動きを注視していきます。
原文 Simplification or sabotage? EU’s nature agenda under pressure – BirdLife International
(本文を一部編集しました)