第一回「世界アルバトロスデー」を一緒にお祝いましょう

求愛ダンスをするゴウワタリアホウドリ© Nick Holmes/RSPB

記念すべき第一回「世界アルバトロスデー」を皆さんと一緒にお祝いできることを、とても嬉しく思います。なぜこのような記念日を通して、アホウドリ類(アルバトロス)への関心を高めることが重要なのでしょうか?アホウドリたちがいかに特別な存在で、どのような脅威に直面し、私たちに何ができるかをご紹介します

世界環境デー、世界海洋デー、世界シャクシギの日など、幅広いもしくは特定の環境問題への認識を高めるための記念日について、メディアを通して見かけたことがあるかと思います。しかし、世界アルバトロスデーは今まで存在しませんでした。ではなぜ今年から、6月19日にアホウドリ類の特別な記念日をお祝いすることになったのでしょうか?

愛鳥家や環境保全に携わる人々は、アホウドリ類の驚くべき生態や、なぜ保全活動がとても必要な状況になってしまったかを既に知っているかもしれません。しかしアホウドリたちが晒されている脅威は、環境保全関係者達だけでは解決しきれないほど大きな問題なのです。世界アルバトロスデーは、アホウドリ類及びミズナギドリ類の保存に関する条約(ACAP)が制定し、多くの環境保全団体が賛同していますが、アホウドリ類について全く知らない人々を含む多くの方々に大切なメッセージを伝える最高の機会なのです。

アホウドリ類は堂々とした姿の海鳥ですが、既に多くの人が知っていることとは何でしょうか?単に大きいカモメのような鳥だと思っている人がいるかもしれません。また、Samuel Taylor Coleridgeの有名な詩「The Rime of the Ancient Mariner」のなかで、アホウドリが災難をもたらすとされていたため、良くないイメージを持っている方もいるでしょう。実際に、一般的な英語表現では、アホウドリは一生背負う重荷を意味します。上記の詩が多くの人に知られる前は、アホウドリは幸運のシンボルだったのですが、メディアの効果を思い知らされます。

アホウドリ類の体がいかに大きくて、世界レベルの持久力を持っていることを知っている方もいるでしょう。危急種(VU(絶滅危惧Ⅱ類))であるであるワタリアホウドリDiomedea exulans が翼を広げた長さは鳥類最長で、なんと3.5 mにも達します。アホウドリ類は一回の採餌の旅で、16,000 kmも飛ぶこともあります。しかしこのような数値は、素晴らしいアホウドリたちの人生(鳥生)について、ほんの少しかじっただけにすぎません。

アホウドリ類は長生きで、とても子煩悩ということは、詩のような大衆文化では伝わってきませんでした。アホウドリの多くは、一度つがい相手を見つけると生涯連れ添います。非繁殖期はそれぞれ一羽で長期間海を彷徨っても、繁殖期には毎回相手の元へと戻ります。求愛の時は見事なダンスを披露しますが、長年一緒に練習をすることで、完璧な仕上がりになっていくのかもしれません。求愛ダンスは種類によって違います。準絶滅危惧種(NT(準絶滅危惧))であるコアホウドリPhoebastria immutabilisの場合は、ペアが同時に頭を上下させる求愛ダンスで、甲高い声で鳴き合います。ワタリアホウドリのダンスでは驚異的な大きさの翼を広げ、空に向かって声を限りに鳴き叫びますが、この行動をスカイコーリングと呼びます。

 

コアホウドリの求愛ダンスのビデオ

サウスジョージアのバードアイランドで、求愛ダンス中のワタリアホウドリに遭遇した忘れられない経験を、バードライフ・インターナショナルの海洋プロジェクトマネージャーであるStephanie Princeが語ってくれました。「10羽以上のワタリアホウドリがペアになってくちばしを触れ合ったり、巨大な翼をさっと広げて左右に揺らしたりする魅惑的な求愛ダンスを、草むらに座りながら観察していた時です。後ろから何かが私の頭に触れた途端、とても大きくて白い翼が目の前に現れました。ダンスを始めようとしていたオスのワタリアホウドリが、翼を大きく広げながら真横を歩いてそのまま過ぎ去って行ったのです。私が草むらに座っていたことに、この鳥は全く気付かなかったようです。でも私にとっては、アホウドリのダンスの世界にちょっとお邪魔させてもらったような、忘れられない経験となりました。」

アホウドリ類は一回の繁殖につき雛を一羽だけ育てますが、それもまた、のんびりしているように見えます。卵が産み落とされてから雛が無事に巣立つまで、1年かかる種類もいて、このような繁殖期が長い種類は翌年は海で過ごし、繁殖サイクルは隔年です。何千年もの間「スローライフで長生き」というスタイルで上手く過ごせていましたが、悲しいことに、近代ではこの生き方が、特に人間の活動による悪影響を受けやすくさせています。哺乳類の天敵が本来いなかった島では、近年は、人間が島に持ち込んだ外来種に多くの卵や雛が食べられています。アホウドリ類は進化の過程で、このような天敵に対応する術を身に着けてきませんでした。

しかし、アホウドリ類にとって一番大きな脅威は、商業漁業です。餌をとるための飛行範囲がとても広いため、世界のどこでも漁船に遭遇することになります。何千ものアホウドリたちは、漁業に使われる餌や残渣におびき寄せられ、誤って漁具にかかること(混獲)によって命を落としています。混獲率が非常に高いため、個体数を維持することが難しく、世界の22種類のアホウドリ類のうち、15種類で絶滅が危惧されています。

このような状況でも、希望はあります。バードライフはイギリスのパートナー団体(Royal Society for the Protection of Birds)と一緒に、2005年にアホウドリ・タスクフォース(ATF)を立ち上げました。ATFは国際的な専門家チームで、政府、地域、現場の漁業者と協働し、先駆的な混獲回避対策を導入しています。科学的知見に基づき、様々な国や国際的な漁業に関する法律を改善し、世界中で最悪と言われていた特定の漁業を、海鳥にやさしい事業へと変革することにも成功しました。バードライフのパートナー・ネットワークを通して、外来種の駆除により島の環境を修復し、アホウドリ類の繁殖地環境のバランスを取り戻す活動も行っています。

 

アホウドリ・タスクフォースのビデオ

「アホウドリ類の鳥たちは、いろんな意味で本当に凄いんです。」とATFのプロジェクト・オフィサーであるNina da Rochaが言います。「悲しいことに、人間の活動による影響で、アホウドリたちはとても危機的な状況に陥っています。でも、どうすれば状況を改善できるのか、対策は既にあるんです。記念すべき第一回目の世界アルバトロスデーをお祝いすることによって、世界中の皆さんと一緒に、海をさすらうこの素晴らしい鳥たちを守る取り組みをしていきましょう。」

皆さんのご協力があれば、保全活動を更に充実させることが可能です。ハッシュタグ#世界アルバトロスデー(#WorldAlbatrossDay)を通して、この記念日の情報を多くの方と共有してください。バードライフの活動のサポートはこちらからお願いします。多くの人々がアホウドリたちに対して抱いていた負のイメージと悲しい現状を、一緒に希望へと変えていきましょう。

報告者:Jessica Law

原文はこちら

 

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