サイチョウは私たち人間とよく似ています!
サイチョウ週間を記念して、この美しい鳥の行動と生態について学んでみましょう。
文: Ariana Loehr / カバー写真: Bjorn Olesen
南アジアや東南アジアでは、サイチョウは日常生活の一部で、建築、歌、踊り、祭りにインスピレーションを与えてきました。筆者がこれを書いているこの時も、2羽のサイチョウが窓の外の木の上に止まっています。
フィリピンのアンティーク州では2020年から、フィリピンにしか生息しない絶滅危惧種アカガシラサイチョウに敬意を表わす、「ドゥルンガン月間」と呼ばれる祭りがあります。アジア全域にはこの他に32種のサイチョウが生息していることから、アジアのバードライフ・パートナーもドゥルンガン月間の終わりをサイチョウ週間で祝いました。
ちょっと不器用でくちばしが長く、おどけた愛らしい表情の鳥、サイチョウをご紹介します。人間との共通点がみつかるかもしれません。
アジアに生息するサイチョウ仲間はそれぞれ独自の行動をとりますが、ほぼすべての種で共通して、イチジクが大好物です!南アジアや東南アジアの熱帯林にはイチジクの木が豊富にあり、彼らの大きな体を養うための重要な食料源となっています。カササギサイチョウのように、樹上で50羽もが集まってイチジク・パーティーをする種もいます。
私たちと同じように、鳥たちもトロピカルフルーツを好みます。巨大な嘴のおかげで、他の鳥よりも大きな果実を食べることができ、強力な翼で、遠く離れた森まで飛び、糞を通して種撒きをします。これにより、森林の生態系が維持されることから、サイチョウは「森の農夫」と呼ばれるようになりました。
イチジクや果物だけでは物足りないとき、サイチョウの多くは、トカゲ、ヘビ、カニ、コウモリなどの小動物を食べてカロリー補充しているのが観察されています。
サイチョウはかっこいいダンスでデートの相手の気をひくことはできないかもしれないですが、リースサイチョウのような種は、求愛中にロマンチックに餌を与え合います。私たちと同じように、ほとんどのサイチョウの仲間は生涯を通じて同じ相手と過ごします。
繁殖期になると、サイチョウのペアは将来の赤ちゃんのために安全な家を探します。キタカササギサイチョウのペアは、シンガポールの都心部で、穴の空いた高い木を探している姿が観察されています。絶好の穴を見つけると、メスは中に閉じこもり、産卵期間中は、餌を運んでくれるパートナーに完全に依存します。
そんななか、アジア全域ではサイチョウの密猟が横行しています。繁殖期にオスが捕まると、メスとそのヒナも餓死してしまいます。バードライフのマレーシア、ミャンマー、タイのパートナーは、希少な種の巣を保護する監視活動を行っています。
魅力的な求愛行動とは裏腹に、サイチョウは必ずしも友好的な鳥ではありません。オナガサイチョウは、縄張り争いや餌の取り合いで気性が荒くなることがあります。信じられないようなスピードで2羽が互いに滑空し、カスク(嘴の上にある大きな角ぶつけ合いを最長2時間も続けます。ケラチンで満たされたカスクは、こうした戦いで重傷を負うのを防ぐのに役立つ一方で、装飾品として密猟の標的になっています。
鳥たちが直面する人為的な脅威は密猟だけではありません。サイチョウは森林の消失にも極めて脆弱です。急速な開発と農業、特にパーム油農地の拡大は、かつて多くの種が生息していた地域にまで忍び寄っています。
プレーンパウチサイチョウは、唯一渡りをすることが知られています。1,000羽以上の群れをなすことがあり、彼らはマレーシアからミャンマーへ移動する際、実をつける木のサイクルを追って往復していると考えらえています。このルートで森林が消滅すれば、鳥たちは立ち寄る場所を失います。鳥たちはより長い距離を、より空っぽの胃袋で移動しなければならなくなり、それが現在の個体数減少の一因になっている可能性があります。
バードライフはサイチョウや生物多様性及び森林の保護のため、種の絶滅回避プログラム及び森林プログラムを各国パートナー団体と協働して実施しています。
原文 “Hornbills are more like us than you may think! – BirdLife Internationall”
(本文を一部編集しました)