渡り鳥の保護
渡り鳥は生息地の劣化や過剰な狩猟などの脅威によって個体数が減少しており、多くの種が地球規模で絶滅を危惧されています。
渡り鳥は、繁殖、渡り、越冬のために特定の地域の森林や湿地等に集まる傾向があるため、渡りのルート上にある各国が協力して種や生息地の保全に取り組む必要があります。
渡り鳥とフライウェイ
フライウェイとは渡り鳥の渡りルート(Migration Route)を、地域レベルで包括的にくくった範囲のことで、世界で9範囲に分けられています。アジア地域には、「中央アジアフライウェイ」、「西太平洋フライウェイ」そして「東アジア・オーストラリア地域フライウェイ」という3つのフライウェイがあります。日本に飛来する多くの渡り鳥は東アジア・オーストラリア地域フライウェイを利用しており、その地域はオセアニア、東南アジア、日中韓等が含まれる北東アジア、そしてアラスカまでが対象地域となります。
渡り性水鳥の保全と東アジア・オーストラリア地域フライウェイ・パートナーシップ
渡り鳥の中でも水鳥は、渡り性水鳥と特に呼ばれています(シギ・チドリ類、ツル類、ガンカモ類、海鳥など)。東アジア・オーストラリア地域フライウェイ地域では、渡り性水鳥とその生息地の保全を推進するために、「東アジア・オーストラリア地域フライウェイ・パートナーシップ(EAAFP)」が発足しています(2006年発足)*1。このパートナーシップでは、以下の2つを大きな目的としており、東アジア・オーストラリア地域フライウェイに属する国の政府機関や国際機関、NGOが参画し、協力して保全活動に取り組んでいます。
- 渡り性水鳥の重要生息地の国際的なネットワークを構築すること
- 渡り性水鳥の重要生息地の普及啓発、そして保全活動を促進すること
バードライフも本パートナーシップに参加しており、管理委員会のメンバーや日本国内のパートナーシップの事務局などとして、重要な役割を担っています。
本パートナーシップの下、バードライフでは、東アジア・オーストラリア地域フライウェイに属する国のパートナー団体と協力し、フライウェイレベルでの渡り鳥とその生息地の保全のために、国際的に重要な渡り鳥の生息地における具体的な保全活動や、絶滅が危惧される渡り鳥の保全活動を展開しています。これらの事業は、バードライフのIBA事業や種の保全事業と相補的な関係にあります。
*1 EAAFPの詳細については、以下のEAAFP事務局のホームページを参照してください。
渡り性の陸生鳥類保全に向けた取り組み
渡り鳥の中には、スズメ目鳥類やタカ類など陸生鳥類(渡り性水鳥以外の渡り鳥)と呼ばれる渡り鳥もいます。この中でも特に、シマアオジなどは、近年急激に数を減らしており、絶滅の危険度も上がってきています。
渡り性の陸生鳥類は、ほとんどの種で渡りのルートや集結地、生息数などの基本的な情報が乏しく、保全活動が遅れているのが現状です。
この課題を解決するためには、アジア地域の各国が協力して調査・研究体制を立ち上げ、渡りルートや生息数の変化などの現状を把握し、保全活動へとつなげる必要があります。バードライフでは、日本、ロシア、中国、韓国等の各国を巻き込み、共同で陸生鳥類のモニタリング体制を構築し、保全を促進する活動を展開しています。