ペリカン・ホットライン

プロジェクトによる営巣用筏の一つに居るハイイロペリカンの群
写真提供: モンテネグロ自然史博物館

アルバニアとモンテネグロの間に位置するシュコダル湖の巨大で優雅な鳥が終日ビデオ・モニターで観察できるようになり、何か脅威が生じればリアルタイムで対処できます。地元コミュニティがペリカンの存在を受け入れた結果、繁殖成功率も改善し、再びペリカンの時代がやって来ました。

モンテネグロとアルバニアに接する湖では冷たい雨、強風、波までがハイイロペリカンにとってはロマンチックな音楽のようです。シュコダル湖では12月の初めにペリカンの繁殖期が始まり、雨水のしぶきと共に、この巨大な鳥たちが木製の浮き筏の上で走り、踊り、頭を上下に動かし、大きな嘴を真っ直ぐに雷雲に向けます。

自分のパートナーに夢中になっている彼らは気づきもしませんが、その様子は観察されています。ハイイロペリカンは攪乱に対して非常に敏感な鳥で、世界中で個体数が減少しています。そこで、保護活動家たちは新型のビデオ・モニタリング・システムを設置して、日夜遠くから彼らを観察しています。これは国連のクリティカル・エコシステム・パートナーシップ基金(CEPF)、MOVAその他の資金提供によりNoé Conservation(モンテネグロの自然保護団体)が主導する地域プログラムの一環です。

「以前は遠くの丘や船から観察するだけでしたが、今や数多くの疑問に答えを得られるでしょう。」とNoé ConservationのBjanka Prakljacicは言いました。彼はシュコダル湖のペリカンを保護するための共同プロジェクトの一環として、特製の営巣用筏に作られた巣を何時間にもわたって観察してきた人物です。

「私たちがライブ映像から見出したことは正にこの大きな鳥がどれほど脆弱かということでした。」去年のビデオ・モニタリングで見られたドラマと、筏の上に形成されたコロニーの運命を見届けて以来、今年はモンテネグロの国立公園公営企業とモンテネグロ自然史博物館が2台の筏を追加しました。

シュコダル湖のハイイロペリカンの個体数は1970年代以後減り続けています。巣を水浸しにしてしまうような気象条件の変化や人による攪乱がその大きな原因で、ハイイロペリカンはバードライフにより世界的な絶滅危惧Ⅱ類に分類されています(IUCNレッドリスト)。

新しい筏は巣の水浸し問題を解決し、新しいビデオ設備はプロジェクト・チームをペリカンと、攪乱により起こりうる脅威をモニタリングすることを可能にし、またペリカンの熱狂的な求愛と営巣行動をつぶさに観察することができるようになりました。

「この巨大な鳥が如何に優しく嘴を動かし、作成中の巣に葦の茎を上手に配置していく様子はまさに驚きです。」とBjankaは言っています。けれども、最大級の嵐による撹乱がこの巨大な鳥にとっては最大の恐怖なのです。ある時、プロジェクト・チームはペリカンが嵐で揺れ動く筏の周りを怖々と回っている様子を目の当たりにしました。残念なことに、ペリカンは卵を暖めることができませんでした。

「明るい面としては、もしコロニーが自然の島に作られていたら、巣は嵐によってすべて失われていたでしょう。幸いにも、ペリカンはすぐに人工巣に戻り、再び卵を産んだのです。」とBjankaは言っています。

 

報告者: Shaun Hurrell

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