ボン条約で点と点を結ぶ

動物の移動(渡り)の世界地図

バードライフは、政府、NGOや科学者が一体となり、渡り性の種の保全を進めるための重要な世界会議に、今週参加しています。この強力な連携がどのように作用するのか、また今年のバードライフの目標がどのようなものか探ってみましょう。

渡り性の野生動物が一国に長い期間留まることは稀なため、彼らを保護するための活動は国境を越えて広がり、渡りのルート上の国々は団結しなければなりません。そのために、ボン条約[移動性野生動物種の保全に関する条約、CMS:行動を引き起こし協調させるための130の参加者(129ヶ国+EU)をまとめた国際条約]はあるのです。1979年に採択されたボン条約の使命は、地球上の渡り性野生生物の保護に努め、政策立案と科学のための国際的プラットフォームを提供することです。

ボン条約は3年ごとにCOP(締結国会議)を開催します。これは加盟国が国および国際的レベルで野生生物を保護するための政策、戦略、助言についての合意を行う場です。ここでの決定は、今後数年に絶滅の恐れのある渡り性の種の存続を確かなものにするために政府が取らねばならない行動を定めます。今年のCOPは、今まさに(2020年2月15日~22日)インドのガンディナガルで開催されています。

今年の会議のテーマは、“地球をつなぐ移動性生物の帰巣を歓迎する”です。点と点を結ぶというアイディアは、渡り性の種を保護するあらゆるイニシアティブの中心課題で、私たちの今年の重点課題でもあります。以下は、今回の会議におけるバードライフの主要目的の一部です。

フライウェイ沿いの国々を結ぶ

鳥が渡りを行う時、彼らは共通のルート、即ち「フライウェイ」を一緒に旅をする傾向があります。そのため、フライウェイのルート上の国は連携して鳥を守らなければなりません。生態学的連結性と国際協力は、2020年10月に開催される2020年国連生物多様性会議で定められる予定の、新しい国際生物多様性目標の重要な要素です。そのため、今回の決定は自然のための広範な国際的計画に組み込まれるでしょう。

今回のCOPで、私たちは渡りルート上の重点地域における渡り鳥の密猟問題に取り組み、アフリカにおける持続可能な土地利用の促進に焦点を置いて「アフリカ-ユーラシア渡り性陸鳥行動計画」に一層の協力を惜しみません。

今年、私たちは特に、CAF(中央アジア・フライウェイ)に焦点を絞ります。ここは世界の主要なフライウェイの中で唯一、渡り鳥を守るための制度的な枠組みを欠いています。インドは非繁殖期にCAFの種が最も多く生息する場所のため、インドがこのルートにおける保護活動に踏み出したことは妥当なことです。インドは、ボン条約の2005年「ボン条約 水鳥行動計画」に貢献した国家行動計画により、渡り鳥を保護するための多くの経験を積みました。COPにおいて、バードライフはこの軽視されてきたフライウェイの保護を主導するためにインドを支援します。

最善のエネルギー活用によりステークホルダーを結ぶ

不完全な計画により作られた風力発電所は鳥にとって致命的なものになる
写真提供:©Bildagentur Zoonar gmbh / Shutterstock

再生可能エネルギーへの移行は、地球の存続にとって重要です。しかし、エネルギー・インフラのこれほど大きな転換は、鳥や生物多様性に危害が及ばないよう慎重に行う必要があります。そのためバードライフは、エネルギー分野全体での決定に、渡り鳥の保護を含めることを目指すイニシアティブである「ボン条約 エネルギー・タスクフォース(ETF)」を調整します。ETFはあらゆる段階で野生生物にとって安全な決定が確実になされる様、政府、投資家、企業およびNGOを統合します。同タスクフォースは、風車や電線などの構造物が野生生物にも、安全になるような革新的な新しい改善策を模索します。

同会議においてETFは、今後プロジェクトを次の段階に進めることに興味を持つ資金提供者や投資家に協力を要請するつもりです。バードライフはCOPにおいて、このためのサイド・イベントを主催し、再生可能エネルギーと渡り鳥に関する二つのボン条約決議の改定を支援します。

ノガンを保護するために洞察と行動を結ぶ

インドは再生可能エネルギーに関し、大規模なことを考えています。同国は既に世界第4位の風力発電の生産国で、2022年までに175基のギガワット級の再生可能エネルギー設備を建設する予定です。自然保護団体ネーチャー・コンサーバンシー(米国)の分析によると、この計画は約12.5百万ヘクタールの陸地を必要とします。この計画が不十分だと、風車や送電線などの建造物が数千平方キロメートルのIBA(重要生息環境)を含む自然環境を害する恐れがあります。これらの施設が、インドオオノガン(絶滅危惧ⅠA類)などの種の絶滅に加担する恐れがあるのです。現在、インドオオノガンの最大の死亡原因の一つが送電線との衝突です。

幸いにもインド全体には、エネルギー目標を達成するのに十分な土地があります。ですから慎重で戦略的な計画があれば、インドは野生生物へ悪影響を与えずに再生可能エネルギー目標の達成ができるのです。バードライフは、開発業者が避けるべきエリアを特定できるよう、鳥の個体数分布のデータを用いた鳥類センシティビティマップ作成技術を開発しました。今回のCOPにおいて、バードライフとBNHS(ボンベイ自然史協会:インドのバードライフ・パートナー)は、センシティビティマップを野生生物保全の重要なツールとして推奨する予定です。

ハゲワシを守るために問題点と解決策を結ぶ

ネパールのベンガルハゲワシの個体群は復活の可能性がある
写真提供:©Jyotendra Thakuri

ハゲワシ類は、アフリカ、ヨーロッパ、アジア全域で驚くべき速さで減少しています。自然廃棄物処理の専門家として不可欠な鳥類であるハゲワシ類を保護するために、2017年に開催された前回の COPでは「アフリカーユーラシアのハゲワシ類を守るための複数種行動計」が承認されました。今回の会議でバードライフは、これまでのこの計画の成功を強調し、参加国に一層の貢献を促します。

この計画は、インドや他の東南アジアの国々では部分的に成功を収めています。これまで、鎮痛剤、特にジクロフェナックにより手当てを受けてから死んだ家畜の、死骸を食べたハゲワシを意図せずに毒殺していたのです。しかし、これらの国では、ジクロフェナクの使用禁止と合わせた「ハゲワシ安全地帯」、繁殖センター、安全な給餌場所などの対策が成果を出し始めています。今ハゲワシの減少は、ヨーロッパとアフリカで広がっており、これらの地域でも、同様のアプローチを取ることに合意することが期待されています。

報告者:Jessica Law

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