新たな追跡データによって、アンティポデスアホウドリに危険な海域が特定されました

餌を求めて数千マイルも移動するアンティポデスアホウドリ。 写真提供:© Stephanie Borrelle

今行動を起こさなければ、私たちの世代でアンティポデスアホウドリが絶滅する可能性があります。この悲劇を防ぐために、研究者は63羽のアホウドリを衛星追跡し、マグロ漁船団による偶発的な「混獲」が最も起こりやすい海域を特定しました。これらの危険海域を安全にするために、私たちの取り組みをご紹介します。

大きな翼でとてつもない距離を飛べるアンティポデスアホウドリ(Diomedea antipodensis)は、不滅かのように思えます。ニュージーランド沖に点々と存在する島々で繁殖し、雄大な海を旅する種類ですが、漁業によって驚くほどたくさんの命が犠牲になっているため、我々がすぐに行動を起こさない限り20年以内に絶滅する可能性があります。

この崇高な海鳥(飛ぶことができる鳥では世界最大の、ワタリアホウドリ(Diomedea exulans)の近縁種)は、70年以上も生きることができます。アンティポデスアホウドリは10歳からようやく繁殖しはじめ、1回の繁殖ごとに産む卵は1個のみです(通常は2年ごとに)。この低い繁殖率のため、人間が引き起こす脅威にとても影響を受けやすい種類です。2004年以降、繁殖個体群の半分以上が失われたため、2018年には絶滅危惧種(EN(絶滅危惧ⅠB類))に指定されました。

以前の記事では、個体群の性比が1羽の雌ごとに2羽の雄に歪んでしまったことをお伝えしました。はえ縄漁が盛んに行われている海域で雌が採餌する傾向があるため、はえ縄漁業による偶発的な「混獲」が個体数の急速な減少を招いてしまっています。

問題改善に向けて理解を深めるために、研究者は2019年に63羽のアンティポデスアホウドリに衛星送信機を取り付け、最長12ヶ月間追跡しました。この間、漁船の近くで8台の送信が止まりました。もう1台の送信機は後に、アメリカ領サモア沖の公海上で操業するはえ縄漁船によって混獲された鳥から回収されました。

研究者がこの追跡データをはえ縄漁船の分布と重ね合わせると、最も重なる海域は西太平洋の公海、特にタスマン海中部とニュージーランドの北東部だと判明しました。この追跡情報を国別に示すと、台湾、バヌアツ(漁船は台湾または中国の企業によって運営されている可能性が高いが)、ニュージーランド、中国、スペインなどのいくつかの主要な漁船団が、アンティポデスアホウドリが頻繁に活動する海域で操業していることが明らかになりました。

赤い楕円形は、アンティポデスアホウドリにとって最も危険な海域を示しています。
出典:Bose, S. & Debski, I. (2020). Antipodean Albatross spatial distribution and fisheries overlap 2019.

この研究結果は、海鳥の混獲を減らす取り組みにおいて、どこに重点を置くべきかを知る上で不可欠です。これらの危険度の高い海域で混獲回避措置(トリライン、加重枝縄、釣り針保護装置、夜間投縄など)の実施を確実にするために、ニュージーランド政府はすでに国内外の外交ルートを通じて、漁業者に働きかけています。また、ニュージーランド北島の西側に位置する排他的経済水域で操業する商業漁船には、船上カメラの設置を必要とする規制を導入しはじめました。これらの規制は2021年にさらに展開され、混獲回避措置の遵守を確実にするために船上でのモニタリングを強化することを目指します。

公海上の他の漁船団に対処するには、世界のマグロ漁業に関する規則を管理するRFMO(マグロ地域漁業管理機関)と協力する必要があります。海鳥の混獲リスクが高い海域での混獲回避措置の実施を必要とする、既存の規制の強化を推し進める必要があります。

バードライフは、これらの海域での更なる海鳥保全を提唱するために、他の環境NGOと協力し続けています。例えば、WCPFC(中西部太平洋マグロ類委員会)は、アンティポデスアホウドリの生息域におけるマグロ漁業管理を管轄しています。ここでは、船上での科学オブザーバーによるモニタリングが5%である現状を(10年以上変わっていないレベル)、100%に増加することを提唱しています 。科学オブザーバーによるモニタリングの強化は、海鳥の混獲回避措置の遵守を劇的に改善することが既に示されています。しかし、この活動は困難です。独立した包括的なモニタリングシステムがない場合、現在の規制ではモニタリングし、実施させることが難しいのです。

バードライフが採用したもう一つのアプローチは、太平洋から漁船が入港する際、漁業者に働きかけることです。すでにフィジーでは、漁船の混獲規制について漁師に説明するために、バードライフの太平洋プログラムが地元のフィジー人を雇用し、港を拠点とした啓蒙活動を行っています。フィジーの港に入ってくる漁船のために、トリラインを作っている地元の女性グループもあります。このプロジェクトは、スバの港に到着する漁師の意識を高めています。RFMOの下での義務、そして重要なことに、アンティポデスアホウドリの窮状について、漁業者の理解は以前よりも深まりました。

しかし、漁業者やWCPFCがすぐに行動をとらなければ、アンティポデスアホウドリの将来はますます厳しくなります。この堂々として美しい海鳥が、私たちの将来の世代にも感動を与え続けることを望むなら、商業漁業による不必要な死を止めなければいけません。

この海鳥の現状を代表する種類のために、皆さんにもできることはあるのでしょうか? 実は、市場からのプレッシャーは、商業における慣行を変える最も強力な方法の1つです。MSC認定のマグロを選び、レストランではマグロがどこで獲られたのか、そして持続可能な調達であるかを尋ねることは、現状改善への第一歩です。責任を持って調達された、海鳥に優しいシーフードの需要が増えれば、企業は対応を余儀なくされるのです。

報告者:Stephanie Borrelle―バードライフ、海洋/太平洋プログラム・コーディネーター

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