お粗末な農場管理のために渡り鳥が繁殖地を失っている
‘夏休み’という言葉を読めば、おそらく旅行や田園風景やくつろぎと結び付けるでしょう。もしツバメやヒメハイイロチュウヒなどの秋になると暖かい場所へ渡る前にヨーロッパで繁殖した渡り鳥が言葉を話せるなら、その答えは全く違うでしょう。
農耕地は渡り鳥にとって極めて重要な環境です。65%の渡り鳥がライフサイクルのどこかで農耕地を利用します。しかしながらこれらの鳥が欧州で出会うものはとてもリラックスできる状態ではありません。「農業生態系に依存している種や生息環境は一般査定よりも状況が悪くなっています。」とEEA(欧州環境機関)による‘欧州の環境状況’報告は述べています。
広範囲にわたる工業的性質を持つ農地の集約化と管理、草原の質と量の劇的な減少、自然空間の喪失などのため、EU加盟国は農業が渡り鳥に取っての主な脅威の一つであると報告しました。バードライフも農業の集約化と拡大がほぼ80%の世界的絶滅危惧種と準絶滅危惧種の渡り性陸鳥と水鳥の主な脅威であると特定しています。これらのことは、状況を改善しようとする多くの努力に反して起きてしまっています。
EU野鳥指令と生息地指令はこのような悲観的な状況に向き合っています。これらの政策はこれまでにも種を守ることの重要性とその価値を証明して来ましたが、特に農地に関してはより一層の努力が必要です。他方で、もう一つのEU法のCAP(共通農業政策)は助けになると言うよりも障害物です。
CAPは最近改革が行われ、表面的にはより環境に優しいものになっています(また、これにより巨額の公的資金を注ぎ込むことを正当化しています)。この改革の中心となるのは今年正式に導入された‘グリーン化’で、農家に対して3つの方法に配慮することを求めています。すなわち、草原の保全、作物の多様化、農地の5%を生垣や花壇などの自然に優しい利用の目的で残しておくこと(生態学的に重要なエリア)、です。
これらの環境に良い実践を農民に奨励するために彼らがEUから受け取る所得支援の30%はこれらの方法を実行することが条件となっています。
これらの対策がもし期待通り実施されれば、ヨーロッパの農耕地の質を改善することにより、渡り鳥と農耕地の鳥全体に大きな違いをもたらすことが出来るでしょう。けれども、欧州委員会による概観は加盟国の実施状況が一様ではなく、法制に導入される数多くのオプション、逸脱、抜け道が利用されています。そのためこの対策による成功は望めそうにありません。
例えば、EU加盟国のほぼ全てが、この“生態学的に重要なエリア”を自然に優しい利用ではなく、窒素固定作物の栽培を認める道を選んでいます。土地利用が作物の栽培に偏ってしまった今、私たちに必要なのはより多くの作物ではなく、殺虫剤の散布や他のかく乱物のない野生生物が必要とする自然のスペースなのです。
およそ半分の加盟国だけがかなりの面積の草原を環境に影響を受けやすい場所としてナチュラ2000に指定し、それにより追加的な保全を行っています。従って、環境に影響を受けやすい草原の残りの半分は有害な可能性のある農地管理からの適切な保全を受けることがないままです。
それ故バードライフは来るべき欧州委員会による生物多様性中間レビューがCAPによる生物多様性への結果を厳しく評価し、少なくとも最も明白な野生生物虐待を正す道を示すことを望んでいます。思い切ったやり方の変更なしには渡り鳥は夏が来る度により望ましくない光景を今後も見ることになってしまうでしょう。
報告者: Trees Robijns
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