今月の科学情報:アホウドリの疾病リスクやデンマークの農耕地の鳥の減少について
鳥とその生息地保全のための世界的調査や活動を促進する査読付き季刊誌「バード・コンサベーション・インターナショナル」最新号の主要記事をご紹介します。
表紙:アホウドリ類と大型ミズナギドリ類には、病気による危険はあるか?
海鳥は世界中で減少しており、特にアホウドリ類と大型ミズナギドリ類が危惧されます。漁船による混獲、ネズミやネコによる捕食、プラスチック公害による死など、これらの鳥は複数の脅威にさらされています。地理的隔離と密集した繁殖コロニーにより彼らは特に病気の発生に対して脆弱ですが、この危険の程度についてはあまり知られていません。
この論文では、著者はアホウドリ類と大型ミズナギドリ類に対する病気の影響に関する現在の知識の見直しを行っています。彼らは鳥コレラが最大の脅威であり、ポックス・ウィルスも一般的に見られ、様々な病気が広がっていることを知りました。けれども、アホウドリ類と大型ミズナギドリ類、特にその中でも世界的な絶滅危惧種の病気に関して、深刻な研究不足を抱えています。これらの極めて危惧される種の病気の脅威が見落とされることがないように一層の調査が緊急に必要です。
減少が続くデンマークの農耕地の鳥
農耕地の鳥はヨーロッパ全域で減少しました。欧州委員会の2020年EU生物多様性戦略は農業政策を野生生物にとってより良いものにすることを含め、2020年までに生物多様性の消失をくい止めることを目的としています。
この調査でDOF(デンマークのパートナー)を含む論文の著者は、1987年~2014年の間の農耕地における鳥の傾向を見て、この戦略が集約的農耕地の割合が高いデンマークで違いをもたらしているかどうかを調べました。その結果、農耕地に特化した16種、特に地上に営巣する種がその他の一般的な繁殖鳥よりも早く減少していることが分かりました。この調査は、このような減少の原因は、彼らの年間周期において他の場所で渡り鳥に影響を及ぼす要因よりも、デンマークにおける農作業の変化が原因であることを示しています。論文の全文はこちら
黄海にある渡りの中継地の干拓がシギ・チドリ類の減少につながる
シベリア、東アジアとオーストラリアの間を渡るシギ・チドリ類は旅の途中の休息やエネルギー補給を干潟に依存しています。これらの種の多くが特に黄海における開発のための干潟の干拓による脅威を受けています。黄海に面した韓国のセマングム干潟もそのようなサイトの一つです。かつては数十万羽の渡り性シギ・チドリ類が利用する場所でしたが、2006年に干拓のための壁が建設され、同サイトは黄海から分離されました。
この論文では、シギ・チドリ類に対する開発行為の壊滅的影響を示しています。壁の建設後、セマングムと隣接するグム河口のシギ・チドリ類の個体数は74%減少しました。この調査は渡り性シギ・チドリ類のための湿地環境を復元、保全するための保全対策の重要性を強調しています。論文の全文はこちら
報告者:Hannah Wheatley