ワタリアホウドリの追跡

ワタリアホウドリが餌を獲るための海での行動を特定し、そして漁船との関係を調べるため、バードライフ・インターナショナルと英国南極調査隊が行っている研究プロジェクト。このプロジェクトの一員として、サウスジョージア島で子育て中の、「南半球アホウドリ物語」主人公家族のママが、データを提供してくれました!

アホウドリ類調査のフィールドアシスタントとして英国南極調査隊で働くアレックス・ドッズさんは、30羽のワタリアホウドリに小型記録計を装着し、そのデータの回収を行いました。アレックスさんはこの研究について以下のように説明しています-このプロジェクトの目的は、ワタリアホウドリが頻繁に訪れる海域と、アホウドリに装着したレーダーで探知した船の情報をリンクさせ、合法的に操業している漁船、また、違法・無報告・無規制(IUU)漁船と、アホウドリたちの関係を調べることです(南極調査隊研究プロジェクト)。このプロジェクトでは、親鳥が雛を育てている期間中の他に、繁殖を一年間休んでいる成鳥と若い成鳥が、餌を求めて何処に行くのかの追跡もしています。

なぜアホウドリ類と漁船の関係についてもっと知る必要があるのでしょうか?アホウドリたちは日和見的に餌を探すのですが、飛びながら鋭い嗅覚を使って海面近くに漂う餌の手掛かりを探し、餌が豊富にありそうな海域を示すサインを追いかけます。漁船はアホウドリにとって、食べ放題のビュッフェのようなものなので、その誘惑には逆らえません。不幸なことに、世界の22種類のアホウドリのほとんどが直面している最大の脅威は、ここから始まるのです。はえ縄漁船は、アホウドリの食欲をそそるような餌がついた釣り針を、一回の操業につき数千本使って魚を獲ります。漁に使う餌をアホウドリが食べようとすると、くちばしが釣り針にかかり、海中に引きずり込まれてしまいます。このような漁業による偶発的な死を、混獲といいます。漁船の後ろに大きな網を引くという漁法から、海鳥を巻き込んでしまうことがあるトロール漁での死亡事故と合わせると、毎年10万羽以上ものアホウドリ類が混獲によって命を落としていると推定されています。この研究プロジェクトは、混獲がどのような海域で頻繁に起こりやすいかなどの知識を深め、IUU漁業の現状を把握することにも役立っています。

南半球の冬である7月と8月の間、ワタリアホウドリの親鳥は成長する雛のために、一回につき平均9日間の餌探しの旅に出かけます。この時期はちょうど、ワタリアホウドリが餌を獲る周辺国の海域や公海で、漁業活動がピークを迎えます。サウスジョージア島のバードアイランドでは今年の冬、GPSレーダー、加速度計(行動を特定)、浸漬記録計 (餌を取るためにいつ海面にいるかを特定)を組み合わせた小型装置が、繁殖中の親鳥30羽に取り付けられました。一回の餌探しの期間は数日から数週間ほどですが、そのうち2羽は、雛のために餌を獲るのに丸一ヶ月もの時間をかけました。個体によって採餌海域が異なり、ある個体はサウスジョージア島に近い海域を好み、また他の個体は3000kmも離れたブラジルの沿岸まで餌を探しに行きました。このプロジェクトでは、個体ごとの採餌海域だけでなく、どこで、どのくらいの間漁船と接触しているのかについても、前例にないほどの詳細なデータが収集されました。アホウドリたちに装着されたレーダーで検知した情報を、 グローバル・フィッシング・ウォッチによってモニタリングされている船舶自動識別衛星信号と比較することによって、大半の漁船の名前を特定することも可能です。

地図の赤い線は、「南半球アホウドリ物語」主人公のワタリアホウドリ家族のママが、ひなちゃんの餌を探すために、ブラジル沿岸まで旅した時の追跡を示したものです。ママは16日間で往復約10,500kmの旅をしました!

アホウドリ類は、世界中の鳥類のなかでも特に長生きです。ニュージーランドのタイアロアにあるコロニーに生息し、「おばあちゃん」の愛称で親しまれているキタシロアホウドリは62歳。ハワイ諸島北西のミッドウェイ環礁では、「ウィズダム」という名前のコアホウドリが69歳ということでとても長生きしており、しかも68歳の時には雛が生まれました。このように長い人生のうち、90%もの時間を海の上で過ごし、陸上での生活は繁殖期間のみでほんのわずかです。この研究プロジェクトでは記録計の回収に成功し、調査チームはデータの分析を始めています。プロジェクトから得られる知見は、ワタリアホウドリたちの長期間の海での生活について、理解を更に深めるために役立つこととなるでしょう。

 

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写真: アレックス・ドッズ、英国南極調査隊
執筆者:Samuel Wrobel
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