やるべきことは・・・鳥の声を聞くこと

オジロワシ
写真提供: (c) Yathin S Krishnappa, Wikimedia

バードライフ・インターナショナルのCEOパトリシア・ズリータと申します。私はエクアドル出身のエコノミスト(特に環境に関連する)で、現在はケンブリッジに住んでいます。英国在住のラテン・アメリカのエコノミストが、一体全体欧州の生物多様性について何を言うのか不思議に思って居られる方々の疑問にお答えしたいと思います。多分、一つか二つの説明で済むでしょう。

最初の理由にはある人の影響があります。哲学者で、初期のエコノミストHenry Sidgwickです。彼は1800年代の中ごろに外部性(経済用語:ある個人・企業の行動が市場を経ずに他の経済主体の行動に与える影響)に関する先駆的研究を行いました。これはエコノミストたちが呼んだ‘経済活動による望まぬ結果’です。彼の研究はその後有名なArthur Cecil Pigouにより飛躍的に発展しました。彼らは考慮に入れられていなかったものの価値を理解し、計ろうとした最初の人たちでした。即ち、自然資源の破壊とそれによる人の生活(健康)への影響です。

それ以来多くの研究が行われ、時の経過と共に言葉も変わりました。最近、最も普及している表現は‘生態系サービス’です。しかし実際には、生態系サービスの価値を数値によって表そうとする試みに対する巨額な投資にもかかわらず、私たちは依然として自然破壊に巨額を投じています。干拓を行い、湿地を耕し、あるいは、小川の流れを変えたり埋め立て…種が絶滅する時、私たちは何をどれほど失ったかを適切に考慮することさえ出来ません。

けれども、これは最早次の世代の問題ではありません。私たちの問題なのです。明日ではなく、今日の問題です。

数日前の公開討論で私たちはEU副委員長のTimmermansの「問題が起きる度に法律を作らなければならないとは私は思いません。」という言葉を聞きました。私たちは別の手段を用いるべきだというわけです。けれども聴衆が「どの手段ですか?Timmermansさん。良い法律以外で何が自然破壊を食い止めるでしょうか?」と質問すると殆ど答えらしい答えは出ませんでした。

欧州には特別な自然保護法があり、その中心がEU野鳥指令と生息地指令です。これらは現場に大きな影響を与える明確なビジョンを持った良い法律です。EU自然指令はナチュラ2000の創設にもつながりました。これは世界最大の自然保護区のネットワークで、EUの面積のほぼ5分の1をカバーするものです。そして、その桁外れな結果は自然だけではなく、人々や開発、それも理に叶った開発になっています。

何故バードライフ・ケンブリッジに居るエコノミストが、昨今の‘目的にかなっている’かの第2の理由は・・・鳥の目からの視点です:

鳥には驚くほどの視覚があります。残念ながら彼らは話をすることは出来ません。もし話が出来たら、鳥はEUの法律は地域全体で均一に施行されておらず、地域や一部の経済分野で罰せられることなく組織的に違反が行われていると言うでしょう。その鳥は真の欧州の公平な場を確保するためのより良いツールを求めるでしょう。別の鳥は繁殖地に戻ったら生垣、樹木、池、草原、営巣場所などが見つからないと言うでしょう。全部が耕され・・・殺生物剤で覆われてしまっていると。

欧州に疑いと不安があり、EUの役割あるいは存在そのものに多くの疑問が生じているこの時、私たちは声を大にしてEU自然保護法は自慢すべきサクセスストーリーだと言わなければなりません。成立以来ほぼ40年が経過した今、多くの課題が残っていますが、野鳥保護は形を変えました。ツル類、オジロワシ、オオノガン、イベリアカタシロワシ、カオジロオタテガモその他多くの野鳥が戻って来ています。生息地指令もオオカミ、ビーバー、アザラシ類その他の多くの特徴ある動物が戻って来たことが証明されて同様の効果が出ています。ユーロ・バロメーターのデータが、どのEU加盟国でも大多数の市民は環境と自然保護に対するEUの強力な役割を望んでいることを示しています。バードライフ自身の協議会でもわずか3週間で自然保護に賛成するおよそ20万もの署名を集めました。人々は声を上げているのです。

けれども現在私たちは交差点に差し掛かっています。科学は生物多様性と気候変動の両方への災害を避けるために保護活動のスピードを上げなければならいと告げています。現在進められている野鳥指令と生息地指令の‘フィットネスチェック’は正念場です。これら指令の見直しはこれまでの数十年間のハードワークを無にすることを意味します。それは自然保護活動を保留にし、社会的紛争を助長し、責任ある企業が行う投資の安全と安定を弱体化することを意味します。

もう一つの道は真の問題に取り組み、対策を実施することに本気になることです。これこそ自然と富、そして私たちの健康を守るのです。

そして、皆さんがやらなければならないのは・・・鳥の声を聞くことです。

以上は、ブリュッセル緑の週間の63日に行われた開会式でのパトリシア・ズリータのスピーチからの抽出です。

(報告者: パトリシア・ズリータ)

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