もうオリーブオイルは渡り鳥の脅威ではない

私は現代のやや複雑で長期にわたる地球の問題のほとんどは、食卓を覗いてみることで解決できるものと信じています。なぜかご説明しましょう。

欧州では大量のオリーブオイルが生産されています。「大量の」というのは世界市場の70%を意味します。私たちはオリーブオイルを料理に使うのは勿論、手や体のローション、食品防腐剤、またある程度は燃料としても使っており、オリーブオイルは欧州の血管を巡っているとさえ言えるでしょう。しかし、オリーブオイルは単なる製品ではなく、本質的に私たちの文化、風景、生活様式に結び付いています。オリーブとオリーブオイルについて考えることは、暖かい日没、ヒツジやヤギがたくさんいる静かな坂、ハチクイ、カタグロトビ、カタシロワシが点々と浮かぶ青い空を思い浮かべることと同じで、自分が一人ではないことを確信します。

全ては2018年のスペインのアンダルシアの、画像入りの短い、全く目立たない報告書に始まります。同報告書は、集約的なオリーブオイルの生産、機械による夜間収穫と野鳥の死を関連付けた初めてのものでした。示された数字は衝撃的なものでした。オリーブ農園1ヘクタールにつき、100羽以上の鳥が死んでいることから、アンダルシア地方のオリーブ農園全体に公式を当てはめたところ、年間260万羽の鳥が死んでいるという恐ろしい数値が出たのです。

さらに追い打ちをかけたのは、数十羽のズグロムシクイ、ウタツグミ、ズアオアトリなどの死骸がもぎたてのオリーブの実に混じっている画像でした。まもなく、世界中の愛鳥家、環境保護主義者、食通、消費者がスーパーマーケット、政治家、農家そしてバードライフに対して回答と解決策を求めて反対運動を起こしました。小規模ながら重大な動きもあり、それはオリーブオイル製品の迅速で過激なボイコットを提唱するものでしたが、これは持続可能な農業を支持するものとはかけ離れた、既にコロナウイルスに関連する危機やグローバリゼーションと戦っている数百の小規模農家への死刑宣告を意味します。

集約的なオリーブ農園 写真提供 ©Carlos-Ruiz

複雑でしたが、バードライフ・ファミリーは、渡り鳥には既に危険な渡りのルートに加え、この新たな脅威に耐えることは無理であるとすぐに気が付きました。パートナーのSEO/BirdLife(スペインのパ-トナー)SPEA(ポルトガルのパートナー)が私たちと共に簡潔なメッセージを出しました: 影響は事実で直ちに対応しなければなりません。しかし、全てのオリーブオイルが集約農業や機械的な夜間収穫によるものではありません。加えて私たちは、オリーブ生産者と共に相乗効果と、持続可能なオリーブ生産を促進する道を見つけるために活動しています。その一例として「EUの資金支援によるLIFE生きているオリーブの木」プロジェクトの素晴らしい活動をチェックしてください。.

3年後、私たちの活動と国際協力はこの話を覆すことに成功しました。スペインとポルトガルはこの手法の実際の影響(1ヘクタール当たり30~100羽が観察された死亡率)を分析しました。

そして、2020年3月に、これらの証拠と国際的な圧力により、スペインとポルトガルのオリーブ畑でオリーブの夜間収穫が禁止となりました。これは保護と持続可能な食料運動にとって大きな成功になりました。

欧州人およびオリーブオイル愛好者の一人として、私はこの素晴らしいニュースを祝わずにはいられません。生物学者として、欧州の生物多様性喪失に関連する苦悩を語ることに慣れている私は、このニュースを皆様と共有できることを喜んでいます。バードライフ・インターナショナルの保護部長として、私は皆様にまだなすべき重要なことがあると言わねばなりません。オリーブ畑かどうかに限らず、集約農業の脅威は生物多様性と鳥への破壊をまねき続きます。生物多様性よりも生産に重きを置く何年にもわたるEUの誤った資金支援は、私たちの農地を劣化させ、品質よりも数量を重んずる間違ったコンセプトを強めました。これは疑いもなく最後の戦いであり、私たちの食卓の上に供されるものは、人間にとって美味であるだけでなく、私たちと共に生きている全ての生物にも公平であるべきだと信じており、皆様の毎日の支援を求め続ける戦いでもあるのです。

報告者:Iván Ramírez - バードライフ・インターナショナル 上級保護部門長

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