気候政策: いくら使うかだけでなく、どのようにやるかが課題
長時間にわたる議論、交渉、妥協の後、10月23日にEU(欧州連合)首相は2020年~2030年の期間におけるEUの気候変動との戦いのための主要目標に同意しました。EUは温室効果ガスの発生を1990年のレベルから40%引き下げ、再生可能エネルギーの割合を27%まで増やし、エネルギー効率を27%向上させることを目指します。
ちょっと見にはこれで道筋が決まり、必要なことは前進することだけのように見えますが、実際には論議が始まったばかりなのです。このような高い目標の設定が実際には何を意味し、その達成のためにどのような計画を立てるのかがEUの気候対策活動の効率と一体性の基礎なのです。
バードライフ・ヨーロッパなどの自然保護活動グループにはまだやるべきことがたくさんあります:
これまでの経験から法的拘束の無い目標は簡単に失敗することが示されていますが、エネルギー効率の改善という目標は今回も法廷拘束力のないままにされました。エネルギー消費のレベルは、最終的なエネルギー消費量のシェアとして測定される再生可能エネルギー目標を達成するために必要な投資と努力の大きさに大きな影響を及ぼします。バードライフ・ヨーロッパが依然行った調査では自然環境を損傷せずにエネルギー分野の脱カーボンを図るにはエネルギー使用を減らさずに行うことが非常に困難であることを示しています。燃やすことが出来るバイオマスの量、あるいは、建設できる発電用風車にも限りがあるのです。
増加中の再生可能エネルギーの配備が現在EUでの温室効果ガス(GHG)削減の第1の活動ですが、この再生可能エネルギーの半分以上は実際にはバイオエネルギーによるものであることが往々にして見落とされ、これを差し引いた純粋のGHG削減の大きさには大きな疑問符が付けられています。発電のために木材を、バイオガスのためにトウモロコシが燃やされる第1世代のバイオ燃料のように、使われている再生可能エネルギーの大部分が実際には大気中のGHGの量を減らしてはいない可能性が大きいのです。GHG発生を減らすための2030年における再生可能エネルギー27%目標達成の成否は私たちがどの程度の、どの種類のバイオエネルギーを使うかに掛かっています。再生可能エネルギー・ミックスの中のバイオエネルギーのシェアを制限することは、27%目標を大望に欠け、もっと増やす余地があると批判している真の低炭素再生可能エネルギーをそのままにするでしょう。
より多くの作業が行われるべきであるとする分野の3つ目の例はEUの気候政策に全ての新セクターを加えることです。泥炭地の排水あるいは森林伐採の増加などによる陸地と森林からの炭素排出が現在のEUの気候目標には含まれていませんが、今後10年の気候政策には含まれるようになるでしょう。現行の1990年排出削減の基準値にも陸地セクターが含まれていません。陸地と森林からの排出はどのように説明されるか、またどのような基準値に対して排出量が測定されるかはGHG削減目標の全体的な一体化に大きな影響があるのではないでしょうか。バードライフ・ヨーロッパは合意目標の元でこのセクターを含めるための前提条件として公平で強固な計算を強く求めています。
バードライフ・ヨーロッパはEUの気候およびエネルギー政策が生物多様性の喪失を止めつつ気候変動と二つの必須の戦いに取り組むための草案を作ることを要求する最前線に立つつもりです。
(報告者:Sini Erajaa)
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