世界初:サイチョウが人工巣箱を承認
マレーシアのサイチョウが、人工の巣箱を利用するという有望な兆候を得て「保護活動リーダーシップ・プログラム」は、2017年にRavinder Kaurのチームに繁殖機会の一層の改善を期待して、「未来の保護活動賞」を授与しました。Ravinderは、チームによるワクワクするような観察と完璧な巣箱をデザインする過程について説明しています。
サイチョウ(別名:ツノサイチョウ)は、東南アジアの熱帯雨林で見られる鮮やかな鳥です。IUCNのレッドリストでは準絶滅危惧種に分類されています。ペアになった時、雄が短く「hok」と呼びかけ、雌が「hak」と答えるデュエットを行う独特の習性があります。2羽が一緒にその歌声「hok, hak, hok, hak, hok, hak…」で彼らの一雌一雄の関係を祝います。
サイチョウは樹洞に営巣しますが、巨大な嘴と犀角(嘴の上のヘルメット状の部分)があるにもかかわらず、自分で樹に穴をあけることが出来ません。サイチョウは、キツツキやマレーグマなどの他の動物があけた穴を後に利用するのです。この地域の樹洞のある大木の多くは、伐採と農業の拡大により切り払われてしまっています。例えばマレーシア領ボルネオのキバナタンガンは、8種のサイチョウ類が生息する再生された森では、イチジクの木は豊富にありますが、樹洞のある木はありません。
この問題に取り組むために2013年9月に地元の自然保護団体HUTAN-KOCPが、チェスター動物園(英国)とボーバル動物園(フランス)の支援を受けて、体の大きなサイチョウが利用するかどうかをテストするために5個の人工巣箱を森の中に設置するという試験プロジェクトを行いました。巣箱にはサイチョウ、キタカササギサイチョウ、ズグロサイチョウ、ムジサイチョウの4種が訪れましたが、営巣を試みたのは小型のキタカササギサイチョウだけでした。
次に2016年にサイチョウ(ツノサイチョウ)が巣箱に興味を示し、繁殖の徴候である巣の入口の封印を試みました。2017年7月、同じペアと見られるサイチョウが巣箱に営巣し、巣立ちまでヒナを育てることに成功しました。これは野生のサイチョウが人工の巣箱に営巣した初めての事例です。
2017年4月に「保護活動リーダーシップ・プログラム(CLP)」は、マレーシアの若手研究者のチームに「ボルネオのサイチョウ類保護」プロジェクトを行うための資金を提供しました。キナバタンガンにおける人工巣箱の利用は、CLPプロジェクト・チームにその始まりを示しました。なぜなら、それは大型のサイチョウ類のための営巣に適した樹洞が不足しているという確信を強化したからです。しかし、6個のうちの5個の巣箱が何年も利用されないままで、1種の大型サイチョウだけが利用したという事実は、巣箱のデザインにはこれまで以上の考慮と改良が必要であることを示すものです。
CLPからの資金提供を得て、サイチョウ保護チームは巣箱のデザインの改善を行います。チームは、より良い巣箱の提供のために最長の巣を見つけるために森の中で組織的に巣の探索を行っています。今年、チームはクロサイチョウとキタカササギサイチョウの3つの新しい営巣樹洞の発見に成功しました。これらの自然の樹洞とその内部の微気候条件は、データ・ロガーを使って調べる予定です。
これらの調査で得られた知見は、新しい巣箱の開発に適用されます。チームは新しい巣箱がズグロサイチョウ(準絶滅危惧種)、オナガサイチョウ(絶滅危惧ⅠA類)など、より多くの個体の営巣を促してくれることを期待しています。それに加えて巣箱は動物園内での繁殖プログラムにも重要な補強になるでしょう。
報告者:Ravinder Kaur