毎年数10万羽の鳥が偶発的に薬殺されている
スペイン農業・食料・環境省によれば、2000年から2010年の間にスペイン国内で2,000羽のアカトビ(写真)、355羽のトビ、2,146羽のシロエリハゲワシ、638羽のクロハゲワシ、348羽のエジプトハゲワシ、114羽のイベリアカタシロワシ、40羽のヒゲワシが薬殺された状態で発見されました。これらの鳥は全て絶滅危惧種でEU法により守られているものです。
毎年世界全体では数10万羽の鳥が普通の作業で使われる製品により偶発的に犠牲になっています。それには、農業用の殺虫剤、毒入り餌、狩猟や釣りで使う鉛およびジクロフェナクなどの鳥には毒となる獣医用治療薬が含まれます。
これらが直接鳥を殺さない場合でも、これらの物質は通常成鳥の繁殖成功度に影響を与え、その結果脆弱な種や個体群が生き残る上での脅威となります。
けれども、専門家のアドバイスに従えば、それ程の苦労とコストを掛けずに鳥の毒殺を最小限に抑えたり防ぐのが可能であることが経験的に分かっています。SEO/BirdLife(スペインのパートナー)やRSPB(英国のパートナー)を含むバードライフ・パートナーはこの件に非常に積極的です。
スペインでは鳥の毒殺は主に肉食動物やげっ歯類を殺すための毒入り餌による結果です。自然に優しい代替薬もあるのですが、これらの薬物の多くは毒性が非常に強く、鳥に限らず野生生物全般に有害です。何年にも亘るSEO/BirdLifeのキャンぺーンの後に、スペイン政府は最終的に2004年に環境内での毒入り餌の不法使用に対する国の戦略を採択しました。これは毒入り餌を使用せずに目的を達成する技術を開発する一方、人々の関心を高めるためでした。この戦略の成否は一般市民がこれを受け入れるかどうかに掛かっていることを意識して、SEO/BirdLifeはそれ以後戦略の進展、実施およびモニタリングを主要な利害関係者と共に行って来ました。
ジクロフェナクの獣医による使用もスペインでは増加しつつある問題です。家畜の治療に使われるこの薬はある種の鳥、特にハゲワシとワシ類にとって極めて毒性が高いものです。南アジアでハゲワシの個体数が99%減った原因であるにもかかわらず、スペインでは依然としてペットや家畜用にジクロフェナクが処方されており、そのスペインにはヨーロッパのハゲワシとワシの重要な個体群の一部が生息しているのです。スペインと欧州全体で環境上の大惨事が起きるのを止めるために、SEO/BirdLifeは他のバードライフ・パートナーシップと共に現在EUで獣医用のジクロフェナク使用を禁止するキャンペーンを行っています。
一方RSPBは世界中の多くの専門家から過去2年における情報を集めて来ました。この情報は鳥の毒殺に関してアドバイスを行い、その原因を阻止、あるいは最小化し、更には可能な場所では無くすために使われています。渡り鳥に焦点を絞った一連のガイドラインが7月1日にボンで開催された‘移動性野生動物種の保全に関する条約(CMS)’会議に提出されました。バードライフや国内、地方の官庁を含む自然保護団体の専門家で構成されるこの会議ではこの提出文書を検討します。もし承認されればそれは多くの渡り鳥を彼らが直面している様々な厄災の一つから救うことになるでしょう。
(報告者:エロディー・カンタルーブ)
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