バードウォッチングは誰にも平等な楽しみ

ニューヨークでバードウォッチャーのChristian Cooperが巻き込まれた事件(ニューヨークのセントラルパークでバードウォッチングをしていたChristianが禁止エリアで犬にリードを付けずに遊ばせていた女性に注意をしたところ、黒人に命を脅かされたとして警察に通報された事件)と、米国や世界中で起きている「Black Lives Matter」(注:直訳すると「黒人の命を守ろう」、黒人に対する暴力や構造的な人種差別の撤廃を訴える、国際的な積極行動主義の運動)への対応、そして#BlackBirdersWeekへの初めての奨励として、英国、セネガルそしてケニア在住のバードライフ・スタッフがバードウォッチャーとしての声とアドバイスを表明しました。

「私たちはバードウォッチングチングを変えようとしています。」#BlackBirdersWeekの共同リーダーCorina Newsomeは言いました。「この活動は、黒人バーダーも同じバーダーであることを世界中の人々に知ってもらいたいと願う、黒人科学者や野外探検家で構成される大勢の有志グループから生まれました。私たちはコミュニティのメンバーに彼らがここで歓迎されていることを知ってもらい、これらの空間から疎外されないことを願っています。」

敵意を最初に経験したのは、オーデュボン協会(米国のパートナー)のニューヨーク支部の理事Christian Cooperです。オーデュボン協会は、セントラルパークでの出来事に対する声明を述べました。

バードライフの思いを反映し、Cooper自身がニューヨーク・タイムズ紙によるインタビューで語ったように、「鳥は私たち皆のものです。鳥は私たちの肌の色など気にしていません。」

バードライフのスタッフが語る以下の経験は、幸いにもほとんどが好意的であり、バードウォッチングは誰にとっても楽しく、包括的な経験であるべきことを示しています。そして、こんな時だからこそ、みんなの喜びとなるべきなのです。

“白人だけの趣味ではない”

Hazell Shokellu Thomps:環境コンサルタント:前バードライフ・パートナーシップ、キャパシティとコミュニティのグローバル・ディレクター、バードライフの暫定CEO(2014-2015年)

私はシエラレオネのフリータウンで生まれ育ち、野生生物と鳥類に生涯の情熱を持ってきました。ここでは早くから熱狂的な「鳥キチ」と見られていました。鳥類の価値を説明し、バードウォッチングは「白人だけの趣味ではない」ことを伝えることに習熟しました。この経験は、シエラレオネ大学の学生に生物学を教え、バードライフでの20年に及ぶ保護活動において、良い訓練になりました。幸いにも、シエラレオネには小さいけれど成長している若いバーダー達の結束があります。

黒人の一人として、私は仕事で世界中にバードウォッチングにでかけ、定期的に英国にも行きますが、問題が起きたことはありません。バーダーは人種に関係なく非常に打ち解けた仲間であると常に考えています。そのため、先週米国で起きたひどい人種差別事件(一方は黒人バーダー、他方は人種差別者)のグローバル化は、肌の色による差別をしない世界に対する私の希望に対して、恐ろしく痛みを伴う一撃になったのです。

バードライフでの仕事は、あらゆる世界の人種、肌の色、志向を持つバーダーや自然保護活動家と活動し、学ぶことができる素晴らしい機会でした。私たちが保護する鳥類同様、バードライフ・パートナーの世界の鳥を救う活動に国境はありません。そのために国々をつなぐ連携、パートナーシップ、協力を行っています。その全ての土台がバードウォッチングを楽しむことと、可能な限り若い保護活動家の能力形成への意欲です。

振り返ってみると、探鳥会に行った時に英国の自然保護区では、なぜいつも私だけが黒人だったのかを疑問です。同様に、もし世界中にバードウォッチングに行った時にグループに入っていなかったら、あるいは、もしもっと若かったら(人種差別者の攻撃の多くは若者と女性が対象)どうでしょうか?私の経験は違うものになっていたでしょうか?このような考えは私たち皆が回避すべき危険を明らかにします。即ち、これらの出来事が疑惑と恐れを呼び起こします。私たちはこれらの恐ろしい出来事が私たちを抑制しないようにしなければなりません。私たち(黒人、白人、全ての色の人々)は個人でも団体でも変化を求めなければなりません。警官による黒人に対する残忍な行為と迫害である人種差別は止めねばなりません。それは英国でもどこでも起きていることです。私たちはバードライフが理想とする全員による包括性、多様性、自然の楽しみを実践し、拡げなければなりません。

大勢の力と、人としての人間性

Julius Arinaitwe:バードライフ・インターナショナル、パートナーシップ・能力開発部門理事

バードライフが数週間前に#1planet1right campaignを始めた時、それは正にうたい文句の通りでした。地球は一つしかなく、地球の健全性は私たち全員が生きるために重要です。まさに人類は一つで、そうあるべきです。

COVID-19との戦い、止まらぬ温暖化ガスの排出、大規模な環境の喪失、自己実現の機会の不平等などでは不十分であるかのように、今月再び人種差別という腐った行為が起きました。黒人バーダーの一人として私は、バーダーには人種差別や他の形の差別を行う時間も余地もないと信じています。

私はウガンダの若者として、カタパルト(投石機)の先端を作る仕事から鳥を知る機会を得ました。私がこの仕事と双眼鏡を交換したのは、20代前半に大学に通うようになってからのことでした。大学でもネーチャー・ウガンダ(同国のパートナー)に勤務していた時も、人種が理由で差別を受けることはありませんでした。

大学卒業後バードライフに入りましたが、働く人々に関してこれ以上多様な職場はありません。私は6つのバードライフの地域にあるパートナー事務所の少なくとも一つを訪問する幸運に恵まれ、そのメンバーやスタッフと鳥を見に行きました。私はメンバーたちが一貫して「彼らの鳥」と探鳥スポットに強いプライドを持ち、関心を示す人たちには誰にでもそれを自慢げに披露していることに気付きました。私たちが共有する鳥に対する共通の関心により、このような外出を行うに当たっての主な焦点は、最善の状態で鳥を見て最善の経験をすることです。私をナイーブと呼んでも構いませんが、差別が生ずることは決してありません。

私はあらゆる職業の探鳥ガイドを何人か知っています。野鳥観察は所得を生む活動以上のもので、深い情熱に由来するものです。目的の鳥を見るのに長時間の探索やトレッキングが必要でも、バーダーにそれらの鳥を見せてあげたいという気持ちが熱意に火を点けます。探鳥ガイドは、多様性にペナルティーを課すのではなく、受け入れることにより探鳥会に参加した全てのバーダーが最高の経験ができるよう努力します。

世界113ヶ国、115団体のネットワークを持つバードライフは、数百万人もの幅広い支持者動員しています。私たちは多数の力を信じ、そして皆のために健全な地球を確保するという重要な仕事に従事するため、できるだけ多くの人を動員するよう努めています。私たちは鳥を生物多様性の構成要素として、そしてすべての自然の大使として愛しています。私たちは鳥を楽しみ守る人の数を増やすよう努めています。いかなる差別もこの基本原則に反し、私達の社会には受け入れる余地などありません。

“女性バーダーは強い個性とハードワークが必要”

Ngone Diop:バードライフ・アフリカ、沿岸性海鳥プロジェクト・オフィサー

私はダカール(セネガルの首都)のCheikh Anta Diop大学で生物学を学びましたが当時は鳥類学調査に従事し、鳥類に熱中するとは思いもよりませんでした。修士号取得中の初めてのフィールドワークの日、私には鳥の識別ができませんでしたが、鳥の数の多さと多様性に感銘を受けました。

この経験により、私は鳥と生物多様性保全に取り組むNGO(Nature Communauté Développement, NCD)に加わるようになりました。ここで私は幾つかの生物多様性保全活動への参加に加えて、ダカールとその周辺の月次水鳥モニタリングを調整するIBA(重要生息環境)の担当者になりました。女性のバーダーには、信頼を得るために強い個性とハードワークが求められます。

黒人としての私の有意義なバードウォッチングの経験:ツイているだけ?

Kiragu Mwangi:バードライフ・インターナショナル、上級能力開発マネジャー

昨日の夕方裏庭に座っている時に、2羽のクロウタドリがテリトリーを巡って戦っているところ、夫婦のヨーロッパカヤクグリが巣立ちしたばかりの雛の後について枝から枝に移動しているところや、モリバトの親鳥がほぼ完全に育った2羽の雛を連れているところを見ました。バードウォッチングは心に喜びを与える簡単で努力のいらない趣味です。自然の美を堪能すると、心が元気になります。私はネーチャー・ケニア(同国のパートナー)での業務を通じて20年以上前に偶然バードウォッチングを始めました。

仕事上、私は保全のための重要サイトあるいは生息地のために指標種のレベルまで鳥を学び、理解する必要に迫られました。驚いたことに、それは私にとって面倒なことではなく、むしろモニタリング・チームの一員であることや、時に友人や一人でバードウォッチングへ行くことは楽しい事でした。

バードウォッチングにより私は南極を除くすべての大陸の大部分の地へ行く幸運に恵まれました。旅行中、誰からも不当な扱いを受けるという事態はありませんでした。運が良かったのか、またはオーストラリア、カナダ、クック諸島、ブラジル、ロシア、米国などの遠隔地におけるバードウォッチングには、良い友人が一緒だったからかも知れません。ケニアから遠く離れた特別な場所でも、バードウォッチングをやっている時には見知らぬ人とつながりを持つのはいつも容易でした。

米国におけるGeorge Floyd(今回警官に殺害された黒人)の悲劇的な殺害と、それにより引き起こされた黒人のための市民権への抗議は、一部の人々がどれ程苦境に耐え、尊厳をもって扱われる権利の代わりに偏見に耐えているかを、深く考えるための機会を私に与えました。更に言えば、疑いもなくバードウォッチングを楽しむ権利についても考えさせられました。私はセントラルパークでの経験に対するChristian Cooperの対応に恐縮しました。公園の注意書きに反して犬にリードをせずに散歩させていた白人女性への彼のささやかな要望が、バードウォッチングをしていただけのアフリカ系アメリカ人の彼には悲しい事件になる可能性があったのです。

米国でこれらの出来事が起こるまで、私は自分のことを「黒人バードウォッチャー」と考えたことはありませんでした。多分これまで運が良かったのでしょう。私たちは今、他の有色人種の人々に外に出てこの単純な楽しみをエンジョイするように促す機会を得ました。後一人二人が庭でこの簡単な趣味を楽しんでくれるだけで良いのです。

鳥はあなたを遠くへ連れて行ってくれる

Kariuki Ndang’ang’a:バードライフ・アフリカ、保護活動責任者

自覚していたわけではありませんが、私は8歳のころからバードウォッチングをやっていました。その頃の私は、家畜の世話のため、ケニアのアバーデア・レンジの丘陵の樹木の繁ったフィールド斜面にいました。それは皆さんがイメージしているようなバードウォッチングではありません。それは私や友人との日常の自然との触れ合いで、味わったり、触れてみたり、壊したり登ったりする、少年がやる遊びです。私は目につきやすい動植物はどれも知っており、鳥についてはローカル名や物語も知っていました。

しかし、本当に私を魅了したのはエボシドリ、ハト類、ハタオリドリなどで、それには様々な理由があります。大学に入学し、野生生物クラブ「バードウォッチング」に入会して何人かのメンバーと知り合った時、そのサークルは私にピタッとはまりました。すでに知っている鳥の英名を覚え、より多くを知る「楽しみ」を始めました。バードリストは長くなりました。多分数千羽の鳥を手で捕まえ、足輪を装着しました。大学卒業後、私は直ちに一緒に活動してくれる鳥類学者を探しました。鳥は私にキャリアを与えてくれ、世界を旅させてくれました。今日まで兄弟の一人は私のことを「mundu wa ichocho」と呼び、その意味は「ツグミ男」で、ツグミがどれ程遠くに人を連れて行ったかを認めてくれています。

 

バードライフ・インターナショナル

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