鳥を愛することの大切さ

ヘラサギ 写真提供:© Ondrej Prosicky / Shutterstock

私たちは、大好きな鳥たちの姿を知っています。しかし、なぜそのように進化したかご存知ですか?解剖学を通して、人と自然のより強固な関係を築くための、新しいプロジェクトを紹介します。

ヘラサギを見て、他の水禽があんな嘴がなくても上手くやっているのに、なぜヘラサギはあの様な独特な嘴を持っているか、考えたことがありますか?鳥類の身体的特徴は、鳥類学の世界で常に写真に撮られ、記録され、説明されています。しかしこうした特徴は通常、種の特定や、類似の別種との識別をするためだけに使われています。そもそも、鳥がなぜこのような身体的特徴を進化させてきたかについては、世界の科学文献の中にほんの少しあるだけです。

これは本当に残念なことです。鳥の身体的適応が素晴らしいからというだけでなく、私たちは自然を知れば知るほど、尊重し自分と関係付けるようになります。著名な冒険家で自然保護活動家だったジャック・クストーは、「人は自分の愛する者を守り、自分が理解できるものを愛し、教えられたものを理解する」と言いました。自然が壊滅的に失われている現代において、このような教育は人々の意識を変える上で必要なことです。

謙虚なシジュウカラのことを考えてください。シジュウカラは可愛いビーズのような眼をした丸っこくてフワフワした鳥です。冬は人間からもらうピーナッツを収容するために腸の長さを調節し、夏は昆虫を消化するために短くしていることをご存知でしたか?今度、この鳥に出会った時、あなたはシジュウカラが生きるために行っていることに対して、敬意を払うことでしょう。

このような知識は、一種でも鳥が減ったり絶滅したりすることが、なぜそんなに深刻なのか理解する助けになります。それは単に遠くにいる綺麗な鳥が一種いなくなるというだけではありません。それは、相互作用が複雑に絡み合った重要な一部が失われることであり、生態系全体が破綻しかねないことなのです。このことを知らなければ、シジュウカラが森からいなくなってもたいしたことではないと思うかもしれません。同じ役割を果たす、似たような鳥が他にもたくさんいると思うからです。しかし鳥たちの嘴を良く見てみると、彼らの嘴がそれぞれ皆違うことに気が付くでしょう。シジュウカラは薄い針のような嘴で昆虫を食べ、シメのような厚く強力な嘴を持つ種は硬い種子を割るのに適しています。シジュウカラがいなくなれば、害虫の大群に遭遇することになるでしょう。シメがいなくなれば、全景観への種子散布が止まってしまうのです。

シジュウカラ(左)の嘴は細く、ピーナッツを叩き割り粉々になった粒を食べます。シジュウカラの腸は冬、種子を消化するために長くなります。シメ(右)は周年消化が困難な植物を食べますが、嘴は種子を砕くために強力です。嘴がこの目的のために適応しているだけでなく頭骨や筋肉もそれに適応しています。

鳥の身体を知ることで、全く同じ食物を食べている場合でも、なぜ特有の脅威が異なる鳥に対し、異なる影響を与えるのかを説明できます。食物の消化の方法が異なるため、フクロウ類は汚染された生息地でも全ての栄養素を取り入れることができますが、ハイタカのような昼行性のタカ類にはできません。このことがタカ類の個体数が劣化した森林で減少した理由の一つでしょう。

そろそろ、あなたも鳥の驚くような内なる生命について、もっと知りたくなったことでしょう。幸いにも、「鳥類生態形態学プロジェクト」で知ることができます。生物圏科学基金が主催したこの世界的なイニシアティブは、各鳥が有す独特な生体構造の背後にある魅力的な説明を発見し伝えることで、これまで一般の人たちが見たことがない鳥の生態を見せることを目的としています。この魅力的な知見をより多くの聴衆に広めようとしています。

重要なビジョンの一つが「鳥類生態形態学地図」の作成で、鳥類界全体に見られる物理的特性を説明するものです。多くの鳥の本のように近縁種ごとにグループ分けするのではなく、非常に異なる種が類似した問題に対応するために類似の適応力を進化させたケースを比較するものです。例えばハチドリとキツツキには、頭骨内に非常に長い舌を収納するための溝がありますが、長い舌は果汁を飲んだり昆虫を引っ張り出したりするためのものです。鳥の解剖学的特徴に関するこのような総合的なまとめはこれまで行われたことがありません。

 

キツツキとハチドリでは生活様式でも解剖学的にも非常に違って見えますが、極めて高い共通の適応的特徴があります。

鳥類界の多くのミステリーへの答えを見つける準備をしています。なぜフクロウの羽根は、紫外線の下ではピンク色に輝くのでしょうか?なぜツルや他の水禽にはループ状に曲がった特別に長い鳴管があるのでしょうか?研究チームはこれまでに発見したことを報告するだけでなく、どのように発見したかも示す予定です。これは非常に魅力的です。彼らは標本サンプルを調べるために、博物館、動物園や野鳥救命センターと共同で活動します。鳥の美しさを映した写真やビデオは、鳥の生理学や行動に関する重要な情報を得るために精査されるでしょう。

これらの発見は大衆を惹きつけるだけでなく、直接的に保護活動を支えます。プラスチックや公害などの物理的な脅威の確たる目に見える証拠を持ち寄ることにより、自然保護活動家や関係当局の注目も集めることができます。

本プロジェクトは、類似のドキュメンタリー、BBC デービッド・アッテンボローの「鳥の生活」の成功を足掛かりに、SNS、テレビ、ラジオなどを通した普及啓発活動を支援をしてくれる資金提供者やパートナーとの協力を求めています。いつか、誰もが美しい羽毛の向こうにある鳥の信じられないような進化の傑作を見ることができるようになるでしょう。

報告者:Jessica Law

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