レッドリストの更新:オーストラリアの爬虫類が危機に陥る一方で、驚愕のヒキガエル再発見

これまで絶滅したと思われていたアンデスヒキガエル属の一種 写真提供: © Gabriela B. Bittencourt-Silva

気候変動と外来種は鳥類だけに影響を及ぼしているわけではありません。IUCN(国際自然保護連合)の絶滅危惧種のレッドリストの最新の更新版がオーストラリア特有の爬虫類に脅威が高まっていることを示しています。その一方で、同更新版では絶滅したと思われていた南アメリカの4種の両生類に関する明るい情報も示されました。

 

鳥類のレッドリスト2017年更新版は外来種と気候変動に警鐘を鳴らしました。今回、IUCNのレッドリストの最新の調査結果では、鳥類の減少を速めている圧力は自然界全体に共通するより大きな問題の一部であることを裏付けています。最もショッキングな発見の一つがオーストラリアの爬虫類の7%に絶滅の恐れがあることです。

オーストラリアの爬虫類は特別な存在です。同国のトカゲやヘビは他の世界から隔絶して進化したもので、様々な多様で魅力的な種に広がり多様性を形成しました。この多様性はあまりにも豊なので、種数は世界の爬虫類のほぼ10分の1に相当します。ですから彼らが、先住民族の芸術や物語の主役になっていることは当然のことです。そしてこの消失は、彼らが支えている科学、文化、生態系にとって大打撃になるでしょう。

残念ながらこのことが起きる危険性は大きくなりつつあります。その半分以上に対する最大の危険は侵略的外来種です。野良猫だけで一年に約6億匹の爬虫類を殺していると推定されています。このネコによる最大の犠牲者の一種がGrassland Earless Dragon(和名不詳:「草原の耳なしドラゴン」の意味。実際に耳がない)です。今年、その絶滅の危険度は絶滅危惧Ⅱ類から絶滅危惧IB類に引き上げられました。

ネコによる捕食と山火事により絶滅危惧IB類になったGrassland Earless Dragon
写真提供: © Will Osborne

草原性スペシャリストの苦闘は生息地の消失により増幅しています。多くのオーストラリアの爬虫類と同様、この小型のトカゲはヨーロッパ人の入植以前には普通だった半自然の山火事のパターンに適応しています。今では農業、外来植物や伝統的な先住民の焼き畑方法の消失により、わずかな避難場所しか残しません。

全ての侵略的外来種が捕食者というわけではありません。南米原産のオオヒキガエルは1935年にCane Beetle(和名:サイカブト、サトウキビの害虫)を駆除するための試みとして意図的にオーストラリアに導入されました。この大失態はそれ以降環境破壊を引き起こしました。オオヒキガエルの高い毒性がそれを捕食したあらゆる動物を毒殺したのです。その痛ましい一例がMitchell’s Water Monitor(仮称:ミッチェルオオトカゲ)です。オオヒキガエルの渡来以後、この巨大な沼に生息するトカゲの個体数は場所によって97%も減少しました。今年、本種はレッドリストで絶滅危惧ⅠA類に加えられました。

毒のあるオオヒキガエルを食べたことによりミッチェルオオトカゲの個体数は97%減少した。
写真提供: © Stewart Macdonald

それだけでは十分ではなかったかのように気候変動が懸念を強めています。Bartle Frere Cool-skink(和名不詳)はクイーンズランド州の最高峰バートル・フレール山の頂上付近にのみ生息する寒冷気候に適応したトカゲです。その名前が彼らの苦境を反映するように、僅か摂氏1度の気温上昇で30年以内に本種個体数の50%が失われるでしょう。彼らが移動しようにもバートル・フレール山よりも寒冷な場所が他にないのです。

Bartle Frere Cool Skinkは生息地の温暖化により絶滅する可能性がある。
写真提供: © Stewart Macdonald

この写真が荒涼としているように、知識は力であり、行動を促すために利用できます。

「今回のレッドリスト更新版は、毒のあるオオヒキガエルや野良猫などの侵略的外来種と、外来植物、開発、山火事による生息地の消失の脅威との組み合わせに対するオーストラリアのトカゲやヘビの脆弱性を強調しています。オーストラリア原産の爬虫類の個々の種に対する脅威を理解することによりオーストラリア政府、地元自然保護団体および先住民と共同でこの問題に取り組む効率的な活動に役立つでしょう。」とIUCN、SSCのヘビ・トカゲ類レッドリスト・オーソリティ・コーディネーターのPhilip Bowlesは言っています。

自然には常に私たちを驚かせる力があり、レッドリストの更新版も明るいニュースなしでは終われません。今年は、以前絶滅したと思われていた4種のヒキガエルがコロンビアとエクアドルで再発見されました。ヒキガエルの仲間のRio Pescado Stubfoot Toad、Quito Stubfoot Toadとエクアドル産のAtelopus nanayの3種はすべて、世界中で両生類の個体群に打撃を与えた致死的なカエルツボカビ症に感染して絶滅したと考えられていました。またアンデスヒキガエル属の一種は生息地消失の影響を受けたため絶滅したと心配されていましたが、生き残りがいたことが証明されました。

想定と異なり絶滅していなかったQuito Stubfoot Toad
写真提供: © Luisa Coloma Centro Jambatu

このような素晴らしい絶滅の一時的猶予のおかげで、これらの種の回復を助けられる機会を得ました。

「ヒキガエル類は、依然として人由来の脅威による負の影響を受けており、絶滅を防ぐための保護対策の改善が緊急に必要であることを強調しています。」とIUCN、SSCの両生類レッドリスト・オーソリティ・コーディネーターのJennifer Luedtkeは言います。

では、私たちは鳥との関連から何を学ぶことができるでしょうか?爬虫類と両生類は鳥類ほどには美しくありませんが(異論があるかもしれませんが)、気候変動と生息地の喪失はそれでもなお脅威です。この点で鳥は人々を結集させる人気者として重要な役割を果たすことができます。鳥を救うことにより私たちは生態系を共有する他の種も救えるのです。

 

報告者:Jessica Law

 

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