フラミンゴの死は開発による環境影響の表れです

渡り鳥にとって衝突事故は命取りです。フラミンゴの飛来地のインドでは多くのフラミンゴが衝突事故の犠牲になっています。これは、人間による開発が野生生物に影響を及ぼしていることを浮き彫りにしているのです。

 

アリアナ・ローア著

 

華やかなピンクの羽を大きく広げ、細く長い脚を垂れて飛ぶフラミンゴの姿は、壮観以外の何ものでもありません。悲しいことに、現実はこればかりではありません。越冬地であるインドの湿地周辺では、フラミンゴが電線や自動車、飛行機と衝突し、鋭い衝撃と音とともに生気を失った姿で地面に叩きつけられています。

 

オオフラミンゴとコフラミンゴは、毎年冬になるとインド南部の湿地帯に越冬のために飛来します。11月から5月にかけて、この地で藻類や微生物、小さな甲殻類などを食べながら過ごし、5月から7月にかけて、繁殖のために北部へと旅立ちます。

 

人口2,000万人を超えるムンバイ近郊のターン・クリークは、フラミンゴの群れで知られる湿地で自然保護区になっています。ここではフラミンゴの数が年々増加しています。都市の流出水が湿地に流れ込むことで、フラミンゴが好む藻類が増殖しているからです。

 

オオフラミンゴ Phoenicopterus roseus © Ritesh Khabia / Shutterstock

 

フラミンゴの訪れは、ムンバイの人々に歓迎され、ボンベイ自然史協会(BNHS,インドのバードライフ)は定期的に観察会を開催しています。大都市圏でこのような美しく魅力的な鳥が見られるのは素晴らしいことですが、その反面、都市に近いということは危険でもあります。

 

ターン・クリークは、道路に囲まれ、頭上には多くの送電線が張り巡らされています。更に空港がわずか20㎞圏内にあるため、自動車事故や低空飛行の飛行機、そして送電線との衝突が頻発しており、今年5月には39羽が命を落としました

 

ターン・クリークのコフラミンゴ Phoeniconaias minor © Avinash Deo / Shutterstock

 

道路や送電線などの拡張は、人口増加を続けるインドの生活を支えるために不可欠な取り組みです。インドでは再生可能エネルギーの開発が進み、国のエネルギーの42%の供給を担っています。再生可能エネルギー比率を更に増加させるためには、送電網を拡張する必要があります。

 

再生可能エネルギーの拡大は、温室効果ガスの削減に貢献しますが、野生動物もまた植物の受粉、種子の散布、分解などを通じて温室効果ガス削減の一翼を担っています。ターン・クリークのフラミンゴの場合は、富栄養化や魚の死滅につながる可能性のある藻類を食べることによって、既存の炭素を吸収し、生態系の維持に貢献しています。再生可能エネルギーのインフラ等の開発において野生生物に配慮をしなければ、大気中に炭素を放出するリスクになりかねないのです。

 

では、鳥類やその他の野生生物に害を与えることなく開発を続けることは可能でしょうか?例えば、既存の送電線との衝突を防ぐため、bird divertersが使用されています。エネルギー計画のためのオープンソースツールであるAviStepは、鳥類が影響を受けやすい場所での再生可能エネルギーインフラの開発を避けるのに有効です。これらのツールは、送電線を埋設することが有益な場所の特定にも役立ちます。野生動物の横断を知らせる標識や速度制限の強化は、大型鳥類との交通事故にブレーキをかけることができます。一方、飛行機によるバードストライクを防ぐには、航空関係者、パイロット、地上の人々の間で多大な協力が必要です。

 

これらの解決策が、将来フラミンゴの群れが空に留まり、前向きな開発が継続することを可能にします。地域社会とそれを取り巻く野生生物の両方が繁栄できる健全な地球を確保するためには、非常に微妙なバランスが求められますが、やってみる価値があるのではないでしょうか。

 

コフラミンゴ © David G Hayes / Shutterstock

 

 

原文 Flamingo Deaths Highlight Development Tensions – BirdLife International

(本文を一部編集しました)

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