アルバトロス:感動的な伝説と神話
アホウドリ類(アホウドリ)は、古くから文学や文化の中で神秘と幸運の象徴とされてきました。古来より、その存在は船乗りに幸運をもたらすと言われています。伝説や神話の中には私たちの記憶から消えてしまったものもありますが、海を旅する彼ら・彼女らへの尊敬の念は今もなお続いています。「世界アルバトロス(アホウドリ)デー」にちなんで、アホウドリにまつわる物語をご紹介します。
幸運の象徴
かつて、アホウドリは亡くなった船乗りの魂を宿し、治癒を助ける魔法を持っていると多くの人が信じていました。アホウドリに危害を加えることは、海の怒りの前触れでした。サミュエル・テイラー・コールリッジの作品「The Rime of Ancient Mariner (老水夫の歌)』(1798年)では、主人公が弓矢でアホウドリを殺し、この事件が船員に不幸をもたらすのではと恐れられます。物語が進むにつれ、船員たちの不安は確信に変わり、船員たちは懺悔の意味も込めて主人公にアホウドリの遺骸を首にかけるように強要しました。そして、このアホウドリは何世紀にもわたって、過去の過ちや罪に対する後悔の念を表すものとなりました。
アホウドリは、海風を利用して公海を旅する優れた航海士です。そのため、アホウドリを観察することで、危険な状況を回避するために進路を調整することができた船乗りもいました。大海原を渡るアホウドリがいないことは、かえって悪い予兆であり、その姿を見るだけで、迷信深い船乗りたちは旅の成功を確信しました。
力強さ
18世紀、動植物をラテン語の属名と種名で表す「二名法」を確立したカール・リンネは、戦士ディオメデスの仲間たちが鳥に姿を変えられたというギリシャの伝説にちなんで、アホウドリ類をディオメデア(Diomedea)と呼ぶことにしました。当時のヨーロッパでは、翼の長さが3メートル以上もある巨大な鳥が、南氷洋の荒波にもまれる船のそばを悠々と滑空していったという記録が残っており、リンネはその記述にちなんだようです。
アホウドリは、「波の王子」とも呼ばれています。それは、体が大きいだけでなく強い翼を持っており、陸に戻ることなく非常に長い期間海上を飛ぶことができるためです。羽ばたくことなく、とてつもなく広い海域を飛び回ることができる飛行の達人で、成鳥になると何千キロもの距離を飛行し、何年も世界を旅します。アホウドリは常に動き続けていることが多く、南極を2~3周してから、南氷洋やインド洋の離島にある繁殖地へ向かう種もいるほどです。
永遠の愛
アホウドリは基本的に陸上で群れることはありませんが、繁殖期だけは多くの種が離島で大きなコロニーを形成します。つがいの多くは生涯にわたって添い遂げるため、鳥類の中で最も離婚率が低いと言われています。手の込んだ求愛ダンスを披露することも知られており、例えば、ワタリアホウドリのつがいは、頭を回したり、翼を広げたり、くちばしを鳴らすなど、少なくとも22種類のダンスをするのです。また、コアホウドリの印象的な求愛行動には、独特な声を出したり、頭を振ったり、くちばしでパチンと大きな音を鳴らしたりカタカタと音を立てるなど、24の異なる動きが含まれます。このような求愛の儀式は時とともに進化を続け、唯一無二のものになるのです。そして、夫婦となったつがいは、1つの卵を産み落とします。
アホウドリの夫婦は、卵を産むまでの短い期間は繁殖地にとどまり、限られた時間しか一緒に過ごせません。その後、抱卵と海での採餌を交代で行います。やがて2羽とも、成長を続ける雛に栄養を与えるために海で餌を探し回るようになり、雛が巣立つと夫婦は非繁殖期間中別々に海の旅をし、次の繁殖期に再会します。
絶滅の危機
アホウドリにまつわる多くの神話や伝説があるように、アホウドリは長寿でもあります。最も有名な鳥は、1956年にミッドウェー環礁で研究者によって足環が付けされた、ウィズダムという名のコアホウドリです。ウィズダムはミッドウェーに戻り続け、素晴らしいことに36羽の雛を育て上げたと推定されています。少なくとも70歳という年齢は、記録されている鳥類では最高齢です!
残念ながら、すべての海鳥がウィズダムのように長寿なわけではありません。世界中で何千羽もの海鳥が、漁業で不要になった魚やその内臓などにおびき寄せられて漁船に遭遇します。悲しいことに、多くの海鳥が釣り針にかかったり、トロール船のケーブルに衝突したり網に引きずりこまれて、犠牲になっています。実際、毎年推定10万から50万羽の海鳥が漁業によって偶発的に命を落としており、それは「混獲」と呼ばれています。世界中のバードライフ・パートナーは、こうした影響を減らすために懸命な取り組みを行っています。
保全活動
英国王立野鳥保護協会(RSPB、イギリスのパートナー団体)とバードライフ・インターナショナルは、アホウドリ類やミズナギドリ類の死亡率を減らし、最終的に絶滅危惧種の海鳥の保全状況を改善するために、アルバトロス・タスクフォース(ATF)を発足し、いくつかの漁業で目覚ましい成果を上げています。
まだ多くの課題が残っていますが、ATFが開発を続ける費用対効果の高い混獲対策のガイドラインを、忠実に実施している漁船は、毎年数万羽の海鳥を混獲から守っています。これらのシンプルで効果的な対策には、鳥を釣り餌と漁具に寄せ付けないトリラインや、海鳥が届かない深度に釣り餌と釣り針を素早く沈むようにするための加重枝縄などがあります。南アフリカのメルルーサを狙ったトロール漁ではアホウドリの混獲が99%減少し、規則によって海鳥に安全な漁法が義務付けられている他の6つの漁場では、海鳥の混獲が85%も削減可能であることが実験的に示されています。
私たちの活動目的は、政府や漁業界と協力し、世界で最も危機に瀕しているグループの一つである海鳥を守るために必要な改善を実施することです。ATFとバードライフ・インターナショナル海洋プログラムの取り組みにより、アホウドリ達が神話や伝説になってしまうことを防ぎたいと考えています。
報告者:Cintia Baranyi
原文 ”Albatrosses: Inspiring Legends & Myths”
(本文を一部編集しました)