チョコレートを食べて鳥類を保護?
チョコレートは、みなさんが思っているよりもはるかに森林破壊を進める嗜好品かも知れません。しかし、インドネシアではカカオの協同組合が地元の人たちを貧困から救いつつ森林を守っています。
何が熱帯雨林を破壊しているのでしょうか?森林伐採、家畜の放牧、パーム油農園などがその大きな圧力の主な原因であることはご存知かと思います。しかし昼食時に食べるチョコバーも環境への大きな負荷であることはご存じでないかも知れません。実際に今年カカオの生産が、熱帯地方での森林破壊を進める上位8位の商品にリスト・アップされたのです。
カカオは森林から採取される熱帯の植物として、販売されているのでこれには驚かれるかもしれません。しかし、事実なのです。貧困によりしばしば地元の農民は森林を伐採し、集約的なカカオ農場を作っています。一企業が広大なエリアを取り払うのではなく、大勢の小農地所有者が毎年少しずつ浸食するので、この脅威の追跡やコントロールは困難です。剪定を何千回も重ねれば熱帯雨林の破壊につながります。要するに塵も積もれば山となる、ということです。
このニュースはチョコレート好きを落胆させるかも知れません。しかし、別な手段があるのです。インドネシア・スラウェシ島のMakarti Jaya村の農民が緑豊かなRandangan森林を守りつつ貧困から救ってくれるワクワクするような新しいイニシアティブに参加しています。
この森林には2種の素晴らしいサイチョウが生息しています。どちらもスラウェシ島の固有種で、絶滅危惧Ⅱ類のアカコブサイチョウとカオジロサイチョウです。同島の文化でサイチョウは重要な役割を果たしています。スラウェシ島ゴロンタロの住民は、サイチョウが人を守り悪霊を追い払ってくれると信じています。しかし、サイチョウ自身は環境破壊から身を守ることが出来ません。農業訓練を受けられなかった地元住民は、彼らのカカオ農場による低収量に甘んじて来ました。害虫がカカオ豆を荒らし、化学肥料の過剰使用が土の養分を奪ってしまいました。新しい土地だけが解決策のように思えました。
このような森への浸食を懸念してブルーン・インドネシア(同国のバードライフ・パートナー)は、2015年に森林を害せずに村民が生計を立てられる新しい方法の模索を始めました。カカオだけが検討の対象となった訳ではありませんでしたが、最終的にはカカオが、これまでとは異なる方法で栽培される限り最善策になりました。その翌年ブルーン・インドネシアは、バードライフ・アジアおよびインドネシア政府と提携して新しい森林農業スキームに参加させるためにMakarti Jayaを含む6つの村に声をかけました。
このイニシアティブは景観と生活の両方を変える方向に進んでいます。新設された「ビジネス研修センター」で学び、力を得た農民は、今や自生の樹木とカカオを食用作物の隣に植え、家畜が木陰で過ごせるようにしました。異なる種で形成されるモザイクは、それ自身が自立した小さな生態系を形成しています。動物の糞と廃棄されたカカオは有機肥料となり、新しい「カカオを包む」技術が害虫の攻撃を90%も減らしました。
この打開策は収穫量を増やし、化学農薬の必要性を大幅に減らしました。これらの利点の見返りとして農民は狩猟、森林伐採および農薬の過剰使用を控えなければならないと共に、農地を広げてはなりません。幸いなことに、彼らにはその必要がありませんでした。今までよりも多くのカカオ豆を売ることができるだけでなく、彼らは2倍の価格で売ることができるのです。Makarti Jaya村のカカオ豆の品質が非常に良いのでチョコレート・ショップFossa Chocolate社の注目を集めました。同社は最初から単一品種のチョコレートを作る店です。
「私たちはMakarti Jaya村のカカオの品質に感銘を受けました。発酵、乾燥、選別が適切に行われていて、農民たちの技術を余すところなく示すものでした。」とFossa Chocolate社の創業者Jay Chuaは言いました。
3年前まではこの村のカカオ豆はインドネシアの基準にも遠く満たないものでした。今年の3月Fossa ChocolateはMakarti Jaya村のカカオ豆だけを使ったチョコレートバーを発売しました。同社はこのチョコバーを‘ブルーン’(インドネシア語で‘鳥’の意味)と命名し、このプログラムの恩恵を受けるスラウェシ島の固有種を祝いました。
「Makarti Jaya村のカカオ豆の焙煎度を最適化して、私たちはチョコレートの味にオリーブ、タマリンド、ラズベリーの美味を引き出すことに成功しました。」とChuaは言っています。これを聞いてよだれが出て来るのはあなただけではありません。そして、チョコレートの美味しさを楽しむ一方で、あなたが食べているチョコレートが鳥類と人々の両方に利益を与えているという事実に心が休まるのです。経済活動に変化が必要なことに世界が目が覚めた今、このプロジェクトはビジネスと自然が手を携える素晴らしい例なのです。
報告者:Jessica Law
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