帰ってきたチャタムヒタキ: 次の自然保護活動の成功に向けて

チャタムヒタキ© Leon Berard

1980年、ニュージーランドの固有種であるチャタムヒタキは、世界でただ1つの孤島にわずか5羽しか生存していませんでしたが、集中的な保護活動によって危機を脱し、わずか半世紀で見事な復活を遂げ、IUCNのレッドリストでもランクが引き下げられました。

2022年のIUCN(国際自然保護連合)レッドリスト改定版は、依然として、多くの種にとって厳しい状況が続いていることを示していました。新たに追加された絶滅の危機に瀕している種の数が、改善に向かう種の数をはるかに上回っていました。しかし、綿密な計画と十分な資源、そして関係者の強い意志があれば、自然保護は最も危険な状況にある種の運命を変えることができることも示されています。本記事ではその一例を紹介します。

ニュージーランドの本島から遠く離れたチャタム諸島の固有種であるチャタムヒタキは、自然保護活動により復活した例として有名です。哺乳類がいない島で進化してきたチャタムヒタキは捕食者に対して脆弱だったため、1870年代にネズミやネコが持ち込まれたことで、5つの島のうち4つの島であっという間に姿を消してしてしまいました。

その後、最後の生息地だったリトル・マンゲレ島(その名の通り、0.15平方キロメートルの小さな島)の環境も劣化し、20世紀の間にチャタムヒタキは減少し続け、1976年には、わずか7羽が残されただけでした。そこで、著名な自然保護活動家であるDon Mertonとニュージーランド野生生物局のチームが動きました。チャタムヒタキは、生息地となるように10万本以上の木が植えられたマンゲレ島の大きな島に移されました。これには、まず鳥と一緒に険しい岩肌を下ることが必要とされ、簡単なことではありませんでした。

カカポを含む多くの種の復活の立役者、Don Merton© Errol Nye/National Kakapo Team

この後、さらに2羽のチャタムヒタキも死んでしまい、1980年には生息数は5羽となってしまいました。そのうちの1羽、「オールドブルー(足環の色から命名)」だけが繁殖力のあるメスでした。いよいよ絶滅に近づき、研究チームは思い切った保護活動を試してみました。

チャタムヒタキの巣から卵を取り出し、別の種(今回は近縁種のニュージーランドヒタキ)の巣に入れることで、チャタムヒタキのメスが再び産卵し、ニュージーランドヒタキがその卵を「里親」として育てるということを試しました。この方法は「人為托卵(クロスフォスタリング)」と呼ばれ、理論的には繁殖力を2倍にすることができます。

また、巣の縁の不安定な場所に卵を産むメスのために、巣の中央に卵を押し込むなど、保護活動家たちの献身的な活動によって、チャタムヒタキの個体数は増加していきました。現在、マンゲレとランガティラには300羽の比較的安定した個体群があり、これらはすべて「オールドブルー」の子孫です。この驚くべき回復は、2022年のレッドリストの改定で、チャタムヒタキはそのランクが危機(Endangered)から危急(Vulnerable)に引き下げられました。

外来種の哺乳類が島に入り、最も深刻な個体数の激減を経験したことによる遺伝的多様性の欠如が、現在、この種の脅威となっています。しかし、50年も前に絶滅の危機に瀕していた鳥が、このように回復したことは驚きです。

このような事例は、ニュージーランド野生生物局とその後継組織である自然保護局の功績を示すものです。カカポやセアカホオダレムクドリ(1つの島に36羽しか確認できなかった1964年以降移住に成功し、2022年には低懸念(Least Concern)に引き下げられた)などの、絶滅は避けられないと思われた種の危機を回避した経験も持つこの2つの政府機関の徹底した保護活動がなければ、チャタムヒタキは今日、地球上に存在しなかったでしょう。

 

セアカホオダレムクドリ© Jake Osborne/Flickr

 

バードライフのレッドリスト・オフィサーであるAlex Berrymanは、「チャタムヒタキをはじめとするニュージーランドの鳥類を救うために導入された方法は、太平洋地域全体にインスピレーションを与えています。これらの先駆的な技術から学んだ教訓がなければ、多くの太平洋の島国の鳥類を失っていたに違いありません」と語っています。

バードライフの長い歴史で培った経験が、次の世代につながるよう、私たちは活動を続けていきます。

 

報告者:Liam Hughes 

原文 “Black is back: Next chapter in one of conservation’s great recovery stories”
(本文を一部編集しました)

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