ワタリアホウドリのトワちゃん、無事に巣立ちました!
2021年に皆さんにも一緒に成長を見守っていただいたワタリアホウドリのトワちゃん。今回のブログでは、生まれる前から巣立ちまでを振り返ります。
トワちゃんの誕生
トワちゃんは、アホウドリ物語が始まった2019年にも見守った主人公家族のパパ(ワタルさん)とママ(チヒロさん)のもとに生まれました。ワタルさんは子育てに積極的で子煩悩なイクメンパパ。チヒロさんは微笑んでいるような優しい表情のべっぴんさんです。前回2羽の間に生まれたひなちゃんの成長記はこちらからご覧いただけます。
トワちゃんが生まれた当時、ワタルさんは43歳、チヒロさんは38歳で、それまでに共に10羽の雛を巣立ちまで無事に育て上げたベテラン夫婦です。12月28日に現地の調査隊が産卵を確認し、産卵で疲れたチヒロさんを休ませるかのように、産卵直後はワタルさんが卵を温めました。その後約2ヶ月半ほど、ワタルさんとチヒロさんが交代で大事に卵を守りながら温めました。
長い抱卵期を終えてついに3月13日にチヒロさんの足元で卵が割れ始め、3月16日にトワちゃんが誕生しました。4日間かけての誕生で、誕生時はワタルさんが優しく見守っていたようです。トワちゃんよく頑張りました!
無事トワちゃんも誕生したところで、このシーズンでは、皆さんに主人公家族の名前を考えてもらうことになりました。たくさんの方に素敵なアイデアをいただき、悩んだ末3羽の名前が決定しました。ワタルさんは、大海原を遠くまで渡ることから。チヒロさんは深い愛情で子育てするイメージから。トワちゃんは、無事に巣立って何世代も先に永く繋げていけるようにという願いを込めて名前がつけられました。
1羽でお留守番できるように
生まれてしばらくは体温調節ができないので、しばらくはチヒロさんとワタルさんが交代でお腹の下でトワちゃんをしっかりと守っていました。4週齢になると、トワちゃんは1羽でお留守番できるように。そんなトワちゃんは、調査員が近づいても羽繕いをしたり、スヤスヤ寝ていたりなど、一羽でもへっちゃらな様子。これは将来大物になりそう!?と密かに思ってしまうほどでした。
お留守番が退屈なのか、巣をいじって羽を少し汚したりするなど、おてんばなトワちゃん。10週齢になる頃にはモフモフ度はかなり上昇し、可愛らしい姿を見せてくれました。
徐々に大人っぽい姿に
9月に入り20週齢を過ぎると、トワちゃんのフワフワな白い羽が、少しずつ濃い色の羽に生え替わってきました。最初はお腹や翼の部分からかっこいい羽が見え始め、やがて顔を含め、大人っぽい輪郭に。ワタルさんとチヒロさんがしっかりと餌を獲ってきてくれたので、トワちゃんもスクスクと成長しました。
そんなトワちゃんに悲しい出来事が起こりました。ワタルさんとチヒロさんから餌をもらった際に、釣り針を飲み込んでしまったのです。これは漁業で魚を獲るための餌に仕込まれた釣り針で、ワタルさんかチヒロさんが餌を獲った時に誤って飲み込んでしまったものと考えられます。親鳥は消化させた餌を吐き出して雛に与えるため、親鳥が飲み込んだ釣り針も雛がそのまま食べてしまうことがあるのです。今回は金属探知機での調査によって釣り針を発見しました。実は雛が釣り針を飲み込んでしまうことが深刻な問題となっており、トワちゃんの巣を含むコロニーの一部では、金属探知機を使った調査が行われました。金属の足環に探知機が反応することを避けるため、調査対象になった巣では雛の足環付けを遅らせる必要がありました。トワちゃんが釣り針を吐き出せたかは未だにわかりませんが、健康に影響がないことを願っています。
この調査が行われたあと、27週齢に突入したトワちゃんはついに足環デビュー。足環に刻まれた番号によって、いずれ大人になってサウスジョージア島に帰ってきた時にトワちゃんだということが分かります。足環による個体識別は、それぞれの鳥のデータ収集を可能にするため、アホウドリの保全に欠かせないとても重要な役割を果たしてくれます。
大海原への旅立ち
生後7ヶ月を過ぎると羽の生え替わりも徐々に終盤を迎え、みるみる大人っぽい姿になりました。この頃からはすでに巣の近くをちょっとお散歩をして居心地の良いところを見つけたり、翼を広げて飛ぶ練習をしていたりなど、巣立ちに向けた準備を着実にこなしていたようでした。この時のトワちゃんの体重は9kgで、くちばしが少し小さめであることから、おそらく女の子だろうというこということが分かりました。そんなトワちゃん、12月中旬についに巣立ちの日を迎えました。直前には巣から300mほど離れたところまで移動し、飛び立つための場所を見つけて羽ばたく練習をしていたようです。
これからは長い海の旅が始まります。生まれ故郷に戻るのは数年後で、それまでずっと海での生活が続きます。釣り針の件もあったように、海では漁具にかかってしまう混獲などの危険が潜んでいます。心配ではありますが、無事に戻ってこれると信じています。いつの日か元気な姿のトワちゃんと再会できますように!