オナガサイチョウを救う

木の中に隠された巣を守るオナガサイチョウ 写真提供:© Thipwan / Shutterstock

オナガサイチョウは、その硬く赤い犀角に対する需要が再燃したことで、脅威にさらされています。犀角の取引は加熱しており、絶滅危惧IA類に指定されています。彼らを救うことはできるでしょうか?

オナガサイチョウは衝突には慣れています。森の木が実をつける頃、あらゆる鳥の中でも最も激しい争いが始めます。この体長1.5mにもなるこの鳥は、巨大な翼を大きく羽ばたかせて空に舞い上がります。樹冠の少し上から50m先の相手に狙いを定め、滑空して加速し、猛烈な頭突きを交わします。その衝突の音は100m離れた林の中でも十分に聞こえます。頭突きの衝撃で後ろに弾かれますが、巧みに宙返りしてバランスを取ります。決着が付くまで頭突きを繰り返し、時には1時間もの間、合計12回も争い続けた記録もあります。

こんな決闘ができるのも、嘴(くちばし)の上にある犀角(さいかく)があるためです。朱色の犀角は主にケラチンでできており、中が空洞になっている他のサイチョウの犀角とは対照的に、オナガサイチョウの犀角は中も詰まっていて重いのです。驚くことに、犀角の重さは体重の10%以上もあるのです。

オナガサイチョウは主に食料を巡って争っていると考えられています。この巨大な鳥は様々な食物を取っており、果物、草の実、小型の爬虫類、哺乳類、鳥類(時には小型のサイチョウも)などを餌とします。しかし、大きな木々の果実、とくにイチジクがなっている時こそ、全ての森林の動物にとって至福の時です。発酵したイチジクを食べたことで酔いが回り、争いを始めるとの説まであるのです。

ところが、この空中バトルを見たことがある人はほとんどいません。それどころか、この素晴らしい鳥自体を見たことがある人すらほとんどいないのです。ブルネイ、インドネシア(カリマンタンとスマトラ)、マレーシア、タイに生息していますが、巨大なフタバガキの森林の林間に生息しているために、大きさの割に見つけにくいのです。つい最近にもこれまで知られていなかった個体群が発見されたくらいです。

オナガサイチョウは、かつては広く分布し、かなり普通に見られる鳥でした。けれども、手付かずの原生林を好む性質が仇となり、年を経るにつれて減少していきました。さらに、この鳥の「こだわり」が減少に拍車をかけました。他のサイチョウよりも食物の幅が狭く、イチジク類に大きく依存しているのです。また、巣は森の中で最も背が高い木の穴を利用しますが、そのような木は真っ先に伐採の標的になります。本種のように、大きな体を持つ森林の鳥に典型的な特徴がさらに自体を化させています。すなわち、オナガサイチョウは一度に少数の卵しか産まず、1羽の幼鳥に膨大な時間と労力を費やすため、繁殖速度が非常に遅いのです。寿命が長いため、これまではうまくやってこられましたが、森林が破壊され生息地が縮小するような状況では、真っ先に姿を消す種の一つとなってしまいます。また、少量の密猟でも大きな影響を及ぼします。

さらに悪いことに、近年新たな脅威が広がりつつあり、絶滅危惧IA類に分類されました。比較的広範囲に分布する種では稀なことです。実際のところ、全く新しい脅威というわけではなく、古くからの脅威の再発と言えます。森林に住む人たちは遠い昔から、オナガサイチョウの犀角は彫刻に理想的であることを知っていました。少なくとも1371年から、小規模な取引が大スンダ列島と中国の間で行われており、中国人の職人はベルト用バックル、ボタン、ブレスレットその他のアクセサリーなどに加工ました。ときには頭蓋骨を残したまま彫刻することもありました。これらの彫刻が西ヨーロッパなどに持ち込まれ、珍しいものが好きな人たちの関心を集めました。しかしこうした取引は大きく拡大することもなく、第2次世界大戦の混乱の中で完全に消滅したと考えられていました。

ところが、極めて不運なことに犀角への関心が再びその醜い頭をもたげてきたのです。中国で最近になって富裕層となった人たちの間でオナガサイチョウの犀角がセンザンコウの鱗などとならんで必携品の一つとなったのです。犀角を持つことがステータスとなったのです。そしてこの奇妙なマーケットには絶滅危惧種の違法取引を行う犯罪組織が関わっています。

彫刻の施されたオナガサイチョウの犀角 写真提供:© Kanitha Krishnasamy/TRAFFIC

しかし、保全団体はこの種が消えていくのを認めるつもりはありません。20188月、バードライフ、IUCN SSCサイチョウ専門家グループ、アジア種の保護活動パートナーシップ(ASAP)などの30以上の団体が参加する10年間の保護戦略・行動計画が開始されました。この計画はオナガサイチョウが直面する課題に多面的に多国籍体制で取り組むもので、BANCA(ミャンマー)、BCST(タイ)、MNS(マレーシア)、ブルーン・インドネシア(インドネシア)、シンガポール自然協会(シンガポール)、HKBWS(香港)の6つのバードライフ・パートナーも参加しています。

この計画には3つの側面があります。第1にオナガサイチョウの売買を撲滅することです。そのために取引ルートを地図化し、サイチョウ売買に関する法の履行を強化し、国際法の施行を改善する活動を行います。これにより、完全に阻止できなくても、密売を減らすことにつながります。第2に、残存するオナガサイチョウの個体群を長期的にモニタリングし、その分布域の環境を保全することです。この取り組みには未保全地域のパトロール、重要な森林の再生、違法な林業や農地開発の防止などの活動も含まれます。

3に、オナガサイチョウの個体数が維持または回復するよう情報を収集し共有することです。そのためにオナガサイチョウの生息場所(安全な避難地)を特定し、個体群の変化を把握するための基準となるデータを収集します。そうすることで、ある一定の基準より悪化した際にすぐさま対策を打てるようになります。

20185月~6月にバードライフとMNSはオナガサイチョウの専門家を招集し、分布に関する知見のギャップを特定し、対策方法を議論しました。インドネシアのハラパンの森林、ミャンマーのレニア国立公園、タイのKhlong Saeng-Khao Sok森林複合体では、個体数調査と地元の森林局との取り組みにより、モニタリング計画を策定できました。マレーシアのBelum-Temengor森林では、地域コミュニティがMNSと共同で14年間にわたってオナガサイチョウのモニタリングを続けています。

これら取り組みは全て、密猟と戦い、安全に暮らせる場所を確保するためのものです。オナガサイチョウには、それだけ価値のある鳥なのです。

報告者: Dominic Couzens

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