オナガサイチョウを救うための国際計画

木の中に隠して作った巣を守るオナガサイチョウ © Bjorn Olesen

密猟と密売によって、オナガサイチョウは絶滅の危機にあります。しかし、新たな10年保全計画によって、このユニークなサイチョウに中国市場以外の行き先が確保されるかもしれません。

密猟により絶滅危惧IA類に指定されている鳥を救うため、世界の保護団体は共同で野心的な10年計画を策定しました。

オナガサイチョウは、そのユニークな赤い犀角(さいかく)に対する需要の急騰により、近年急速に数を減らしました。その犀角はサイチョウ類の中でもユニークで、とても硬いため彫刻して工芸品にすることができることから、中国で大きな需要があります。

現在、犀角は闇市場では1本あたり1,000米ドル以上で売られており、象牙よりも高いほどです。さらに犯罪組織ネットワークが関わるようになって個体数減少に拍車がかかり、準絶滅危惧種だったこの種は、2015年に絶滅危惧IA類に引き上げられました。

オナガサイチョウはタイ、マレーシア、インドネシア、ミャンマー、ブルネイの森林に生息しています。滅多に見られませんが、見つけられれば、見紛う事なきしわしわの無毛の喉、黄色い嘴、そしてその名の由来となった巨大な赤い犀角を目にすることでしょう。

オナガサイチョウの主な脅威は、犯罪組織に雇われた地元ハンターです。オナガサイチョウを捕らえるため、ハンターたちは本種であることを期待して、手当たり次第に全てのサイチョウに銃を向けます。捕らえたサイチョウは、頭部を残して捨てられ、頭部のみがジャワやカリマンタン、スマトラに輸送され、ほとんどが香港や深圳(シンセン)に密輸されます。

オナガサイチョウの犀角は、この8年で2,500本以上が押収されました。インドネシアのサイチョウ専門家で、この危機を世界で初めて国際社会に訴えたYokyok Hadiprakarsaは、2012年~2013年の間に年間約6,000羽が密猟されたと推定しました。

しかし密売を止めるのは困難な仕事です。1975年以降オナガサイチョウはCITES(ワシントン条約)により保護されているにもかかわらず、法の強制力が弱く、密売は増加しています。オナガサイチョウ売買に対する刑罰は、ブルネイでは禁固6か月、マレーシアとミャンマーでは7年です。罰金はミャンマーでは36米ドル、マレーシアでは23万米ドルです、全体としては、闇市場での価格と比較すると低い傾向にあります。

世界中の保全団体が、何年にもわたりこの鳥の保全に尽力してきました。昨年5月、オナガサイチョウ・ワーキング・グループ(IUCN種の保存委員会のサイチョウ専門家グループのサブグループ)、アジアの種の活動パートナーシップ、バードライフ、タイ国サイチョウ調査財団、サラワク林業会社、野生生物保全協会、シンガポール野生生物保護協会などの多くの団体は、10年間の包括的な保全戦略を立てるためにマレーシアに集まりました。同戦略はこの種を脅かしている密猟を止めるための具体的な活動が盛り込まれています。

30以上の団体の共同作業により、オナガサイチョウの10年間の保護戦略と行動計画が8月29日にタイのバンコクで公式に開始されました。BANCA(ミャンマー)、BCST(タイ)、MNS(マレーシア)、ブルーン・インドネシア、NSS(シンガポール)、HKBWS(香港)6つのバードライフ・パートナーも参加しています。

この計画には、密輸ルートと犀角彫刻の拠点のマッピング、保全と法施行の優先エリアのマッピング、生息地の保全、地元コミュニティの啓発など、今後の10年間に行うべき活動の概要が示されています。計画の完全版はこちら(英語)。

 

報告者:Margaret Sessa-Hawkins

原文はこちら

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