終わりの兆し?
著名なアメリカ人作家のジョナサン・フランゼンに経済、倫理および地球の終わりについて聞きました。
ジョナサン・フランゼンは昔からバードウォッチャーだった訳ではありません。けれども40代の時に地元の公園でのあるきっかけが、彼を熱心な環境活動家へと導きました。ナショナルジオグラフィック誌の「鳥の年」の巻頭言「なぜ鳥が重要なのか?」を執筆した後、今回彼は自然を題材にした随筆「地球の果ての終わり(The End of the End of the Earth)」を発表しました。フランゼン氏はバードライフに彼の執筆活動を奮い立たせるもの、地球の将来への希望、彼の見解のどの部分が自然保護の世界を動揺させるのかについて語りました。
あなたの著書は、鳥たちに命を吹き込みました。どのようにして、今まで鳥に注意を払うことがなかった人たちを納得させたのですか?
何らかの方法で、人間に関する話をしなければなりません。必要とあれば私は私自身、そしてバードウォッチャーとしての私の衝動とこだわりについてだけを書きます。最近の私の記事の多くは、直接・間接的に鳥を擁護する内容になっています。鳥に対する脅威の多くが、人間活動に起因することが多いので、語るべき話がつきないからです。何度かにわたり、エジプト内で最悪となる地中海の両側での渡り鳥への迫害について書きました。それにより、私は迫害を行っている人たちだけでなく、鳥を守ろうとしている人たちとも知り合うことができました。それは本質的にワクワクする事なのです。
ナショナルジオグラフィック誌の「鳥の年」へのあなたの基調エッセイのタイトルは、「なぜ鳥が重要なのか」でした。鳥に興味を持っているとは限らない人たちにとって、なぜ鳥が重要なのでしょうか?
鳥の偉大さについて書いた後で私が至った結論は、鳥の経済的価値は問題ではないということでした。私は鳥が生態系の健康度を表す重要な指標であるという説には納得していません。私が至った結論は、鳥は私たちの前から減りつつある自然界の大使であるということです。人が直接的に自然に接する経験が益々減る中で、多くの人にとって鳥はまだ残っている例外なのです。彼らは渡りの途中で姿を見せ、一年のある時期に裏庭の木に現れます。また留鳥がいて、彼らは裏庭で生涯を過ごします。それは世界のほぼ全ての人が近付くことのできる数少ない自然のライフサイクルの現象です。
ナショナルジオグラフィック誌の最近号で、鳥の経済価値に関して焦点を当てた記事が掲載されました。これはスタッフの間で議論になりました。種の一つとして人類は、他の種が私たちのためにやってくれることに関連して常に目を向けるべき運命にあるのでしょうか?
多くの人にとって鳥は、私たちの生活をより興味深いものにしてくれる存在です。しかし、もし話が子供と鳥の数の話に及べば、これはどうしようもないことですが、99%の人は子供の数について話をするでしょう。つまり私たちは、議論を経済問題に重きを置いて、世界をコントロールしている経済システムを認めているのです。私たちは論点を倫理に移し替えなければなりません。
あなたがバードウォッチャーになったのは比較的遅いようですが。本当に鳥に注目されるようになったのはいつのことでしたか?
単刀直入に言うと、アメリカで越冬する美しい小型のビリーチャツグミを見てからです。そこは私がよく行く公園で、10年程散歩に行っていました。バードウォッチングをする妹とその夫と一緒に公園を散歩した時に初めて私がこの公園について、何も知らないのが分かりました。5月のことでしたがその日の午後、私たちは60種ほどの渡り鳥を見たと思います。それは私の生涯で最も貴重な体験の一つでした。40年もの間、見えるところにありながら私の目には見えずに隠れていた世界でした。本当に信じられないことでした。
バードウォッチングに訪れた場所で、最も素晴らしかった場所を幾つか教えてください。
お勧めは、多分東アフリカの高地でしょう。ケニアとタンザニアの素晴らしい国立公園もお勧めです。そこでは鳥たちを容易に見ることができ、多様性も桁外れだからです。2週間半ほどの間に500種は見られるでしょうし、識別困難な小鳥ばかりではありません。素晴らしいチャコやハチクイやサイチョウもいます。私にとって新しい種を見ることは大きな経験ですが、健全な個体群を見られることも素晴らしいことです。希少種を見る喜びは往々にしてその減少が心配でその価値を低下させますが、すごい数の種を見られるのは素晴らしいことです。
個人的にあなたがご覧になった最も素晴らしい鳥は何でしょうか?
ナショナルジオグラフィック誌の中で私が挙げたのはオオサイチョウです。多分私が経験したもっとも素敵な自然体験は、東インドで2羽のオオサイチョウが鳴きながら飛んで来て、木の実を食べるのを見た時です。彼らは巨大でとても素敵です。体の大きさと愛くるしさのコンビネーションが素晴らしかったです。
これからどのような鳥を直接見たいですか?
オーストラリアに生息する2種のオウム、テンニョインコと、言うまでもなくヒメフクロウインコです。ヒメフクロウインコは長い間絶滅したと思われており、その生息地への放鳥の興奮は実際にはそこにかなりの数が生息していることを思わせます。個体群はたった一つではないでしょう。
次に、皆さんが過去に何らかの誤解をされてきている気候変動について触れたいと思います。
ここでの最優先事項は、私たちが気候変動を止めることに失敗したことを認めることだと思います。それは炭素排出削減努力を止めるべきということを意味するのではなく、気候変動に適応することを止めることを意味するものでもありません。気候変動はひどく悪質な問題です。もう一つは、人々に自然のために何かさせようと動機づけるために、彼らを怖がらせたり、罪悪感を覚えさせようとしたりするのは得策ではありません。しかし、残念ながらこの方法が、気候変動への戦略になっています。この方法が上手く行かなかったのです。そのため、私は短期的な解決策のある問題に引き付けられました。結果がすぐに分かるからです。人々が好む環境に目に見える変化があれば、人々の自然を守ろうとする動機付けになるからです。
自然保護の世界では現在、生物多様性の危機に焦点が充てられています。私たちは再び同じ道を進む危険を冒しているのでしょうか?
それは自然保護界の内部で持つべき有効な方法だと思います。それは自然保護界で優先事項が何かを決める助けになります。しかし、自然について少しだけ気にする専門家ではない普通の人々にとっては、それは別な気晴らしでしかありません。
私達一人一人が、鳥の世界を良くするためにできる最善のことは何でしょうか?
各場所に対して、そこに合わせた方法が必要です。サンタクルーズで最善の方法がロンドンで一番良いとは言えません。もし猫を飼っているなら家の中で飼うべきです。その結果は目に見えるでしょう。裏庭により多くの鳥を見るようになります。地元の生息地の改善はやるべきことのリストの上位に来るべきだと思います。私が目のあたりにした最も感動的なことは、ニュージーランド沖のチャタム諸島での出来事です。あるヒツジとウシを飼っている農家が、数十年をマジェンタミズナギドリの生息地の改善に捧げようと決意しました。やがて近所の人たちもこの考えに共感しました。過去数十年間にわたり彼らは、外来種がチャタム諸島で行って来たことに無関心でした。今では多数の隣人が、藪にフェンスを立て、外来種が入り込まないようにしています。この結果、住民は一度ほぼ絶滅したミズナギドリを見ることができるのです。これは自分達の裏庭における、人々の責任とプライドの話です。
私たちは状況を逆転させることができると思いますか?地球の将来について前向きですか?
私たちが世界中で全ての炭素排出を明日止めたとしても、気温は今後数世紀に渡り上昇するでしょう。ある種の悪循環が設定されてしまっているのです。特に北極圏がそうです。氷が融ければ、恐らく大量のメタンが放出されるでしょう。それは今私たちがすることと関係なく起きてしまいます。楽観的になるのは容易ではありません。私が育ったころにはまだ存在していた素晴らしい世界は、1世紀半の間に失われるでしょう。しかし、私は鳥をとても愛しています。それが毎日何かを行う動機となっています。
報告者:BirdLife International