保護区を絶滅が危惧されるカンボジアのトキ類の避難場所に

オニトキ 写真提供: © Hught Wright

6年の歳月を経て、カンボジアのフン・セン首相は25万ヘクタールのランファット野生生物サンクチュアリを4つの区画に分け、世界的に絶滅が危惧される種にとって重要なエリアには追加の保全対策を行うという計画を承認しました。

これは同サンクチュアリの最も重要な森林環境を違法な伐採や人による攪乱から確実に守りつつ、同時に保護地域内の土地に生計を依存している地元コミュニティの持続可能な土地利用と開発を進めようという取り組みです。

ランファット野生生物サンクチュアリはカンボジア最大の保護区で、同国の自然保護法に則ってゾーニングされる最初の例となります。同法は2008年2月に成立し、保護区を4つの異なる管理区域システムに分けることを定めています。

・コア・ゾーン: 絶滅危惧ⅠA類が生息するエリア、または脆弱な生態系が形成されているエリア。このゾーンへの立ち入りは関係官僚と研究者を除き禁止されている。

・保全ゾーン: コア・ゾーンに隣接し、コアゾーンへの不法侵入を防ぐバッファー・ゾーン(緩衝帯)の役割を果たす重要な保全エリア。

・持続可能な利用ゾーン: 経済的な価値の高いエリアで、許可が得られれば、開発と投資が可能な場所。

・コミュニティ・ゾーン: 地元コミュニティのためのエリアで、居住地や水田などが含まれる。

カタジロトキ
写真提供: © Hught Wright

ゾーニング計画では42,000ヘクタールが‘コア・ゾーン’に指定されます。このエリアには5種の絶滅危惧ⅠA類の鳥が生息しています。その中にはオニトキカタジロトキが含まれますが、この2種は最近の数十年に東南アジアで起きている急速な森林伐採と生息地の分断の影響を強く受けています。

ランファットには3種の絶滅危惧ⅠA類のハゲワシも生息しています。ベンガルハゲワシハシボソハゲワシミミハゲワシの3種で、それにターミンジカやバンテン(ウシの仲間)などの世界的な絶滅危惧種の大型哺乳類も確認されています。

これらの種は狩猟、違法伐採、不法侵入などの脅威を受けていますが、これらの活動はカンボジア政府がサンクチュアリ内の土地の少なくとも5万ヘクタールを国内外の投資家にELC(経済的土地利用権)の形で割り当てた結果、ここ数年で増大しています。ELCは地元住民との土地利用における確執の種となっているだけでなく、カンボジアの最も貴重な環境に悪影響を及ぼすことから、カンボジア内で論議の的となっています。バードライフは‘People Resources Conservation Foundation(米国)’と共に、ゾーニング計画を主導します。

「私たちはサンクチュアリに残っているコア・エリアを守るために2012年以来このゾーニング計画の策定のために環境省を支援しています。」とバードライフのカンボジア・プログラムのマネジャーBou Vorsakは言います。「ゾーニング計画はELC(経済的土地利用権)の新規発行や拡大を防ぎます。また地元コミュニティに自身の保全地域を作るエリアを割り当て、自然資源を持続可能な方法で利用する権利を付与します。」

「ランファット野生生物サンクチュアリのゾーニング計画はこの場所の効果的な管理を可能にし、保護区当局と自然資源利用者の間の紛争を軽減するでしょう。」とSay Sam Al環境大臣は言いました。

「フン・セン首相によるランファット野生生物サンクチュアリのゾーニング計画承認により、私たちは今後サンクチュアリ内でこれ以上の大掛かりな森林伐採はなくなると期待しています。」とオ・レイ・コミュニティ保護区委員会のチーフThuy Sophannは言います。「私のコミュニティは違法伐採や不法侵入を止めるために保護区のレンジャーと共同で活動することに満足しています。」

このゾーニング計画を実践するには境界線の目印の設置、地元コミュニティの啓蒙、各ゾーンに対する施行手法の策定と実施およびコミュニティゾーンを管理するための地元コミュニティなど多くの作業が必要でしょう。増員や訓練によるレンジャーの管理能力の拡大も必要です。フン・セン首相による計画の承認は、このサンクチュアリの最も脆弱な野生生物を保護することに向けての重要な一歩となります。

 

報告者:Alex Dale

 

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