持続可能な世界のレシピ

農業は自然と対立するものである必要はありません。私たちは世界中で、野生生物と人々の生活の両方の利益につながる方法で作物を育てるプロジェクトを進めています。今回は、これから始めようという方向けに、美味しい事例をご紹介します。

地表面の3分の1以上が食糧生産に利用されており、多くの鳥がその影響を受けています。実際に私たちの最近の報告では、工業型農業が鳥に対する最大の脅威であることが示されています。けれども他にもやり方はあります。適切に行えば、農業は野生生物と食糧生産が両立する環境を作り出すことができるのです。以下は、私たちが世界各地で支援しているプロジェクトの例です。

 

まずはトキ米を

カンボジアの野生生物に優しい農業の恩恵を受けるカタジロトキ 写真提供: © Jonathan C Eames

その通りです。お米を買うことで本当に絶滅危惧IA類のトキを助けることができるのです。カンボジアの西シエンパン野生生物サンクチュアリには、世界のオニトキの25%、カタジロトキの50%が生息してます。ではこの地域を森林伐採や狩猟、農地転換から守る最善の方法は何でしょうか?答えは簡単です。地元の住民が稲作でより高い生計が成り立つなら、彼らはこれらの方法に頼る必要はありません。だからこそバードライフ・カンボジア・プログラム野生生物保全協会(WCS)は、この最重要なで「トキ米」の仕組みを導入し、非常にうまく行っています。

「トキ米」の仕組みでは、参加農家が作った米に特別料金を支払います。その代わり、参加農家は野生生物サンクチュアリ法の順守に合意しています。「トキ米のメンバーになって嬉しいです。トキ米は、私や他の村人が絶滅危惧種を守るよう促してくれます。そして、こうした生物を守ることは、私たちの生活を改善することにもつながるのです。」とストゥントレン州Khes Svayに住むThun Korkは述べています。

ibisrice.com

 

「草原に優しい牛肉」の付け合わせ

農民はパンパス草原の破壊を防ぐために伝統農法に回帰している 写真提供: © A. Parera

肉食(特に牛肉)を食べる量を減らすのは気候変動対策になります。それでも時々ステーキを楽しみたいならできる限り環境に優しいものにすることが大切です。

牧場労働者が馬にまたがりパンパスを疾走する情景は、南米の文化に深く根付いています。ところがパラグアイ、ウルグアイ、ブラジル、アルゼンチンに広がる、信じられないほど生物豊かな草原が今、疲弊しているのです。かつては草原を歩き回っていた牛は、今や屋内飼育場に閉じ込められ、牧草地は集約的な耕作作物に置き換わっています。しかし、「サザン・コーン草原同盟」がこれを変えようとしています。この地域のバードライフ・パートナーが協力して、原生の草原とそこに生息する野生生物を保護するために、持続可能な有機牛肉の放牧飼育を支援しました。この牛肉のパッケージには、この活動の恩恵を受ける12の絶滅危惧種のうちの一つ、キバラムクドリモドキのエンブレムが施されています。

alianzadelpastizal.org

 

伝統的なチャツネをどうぞ

レバノンの共同保護区が伝統に立ち返る 写真提供: ©UNDP

レバノンでは何か本当に特別なことが起きています。SPNL(レバノンのパートナー)が、6世紀以上昔の伝統を復活させる取り組みに参加しているのです。Himaシステムと呼ばれるその伝統は、アラビア半島の厳しい自然の中での人々の生活を支える仕組みとして生まれました。この言葉は「保護区」を意味し、人々の生活に必須な資源の保管場所として共同で残しておいた原生地のエリアで成り立っています。「レバノンでは、Himaという言葉は、保護地域を表す昔からの言葉mahmiyahよりも人々に受け入れられています。」とSPNLの会長Assad Serhalは述べています。

Kfar Zabad湿地では、Himaシリアセリン(絶滅危惧II類)などの鳥を守っていると同時に、観光や宿泊施設、ジャムやチャツネなどの地元の生産物の販売などの雇用を生み出しています。

 

一握りのオリーブを投入

「Olive Alive」プロジェクトによってスペインのオリーブ畑に鳥が戻って来ました。 写真提供: © JLMR

スペインのオリーブ畑には、鳥にとって最高の生息環境の全てが揃っています。オリーブの木々は在来種を祖先とした種で、数千年にわたりその環境で他の種との関係を紡いできたものです。恒久的な森林を形成し、涼しい木陰をつくり、自然と自然をつなぐ回廊の役割を果たしてきました。しかし、もしこれが本当なら、何故もっと多くのオリーブ畑が鳥の生息場所になっていないのでしょうか?問題は集約化にあります。20世紀の終わりにかけて広まった生産性の高い手法と技術革新により、スペインの農民は人工農薬を利用するようになり、農園内に点在していた未使用区画もなくなりました。けれどもこの方法は行われなくなり、カスティージョ・デ・カネナ・オリーブ畑スペインのバードライフ・パートナーSEOやBirdLifeと共に「Olives Alive LIFEプロジェクト」に参加している理由です。自生の低木とハーブや池と巣箱の設置などにより、野生生物がオリーブ畑に戻って来ているのを歓迎しています。

 

鳥に優しいワインとともにお楽しみください

南アフリカのあるブドウ園では自然の害虫駆除にアヒルを利用している。 写真提供: © Heribert Bechen / Flickr

世界で生物学上最も重要なエリアの一つであるケープ植物区を守るため、南アフリカ中のぶどう園が団結しました。彼らはワイン製造者が彼らのビジネスに環境保全の取り組みを推進する「生物多様性とワイン・イニシアティブ」のボトルを用いることで、生物多様性に貢献しています。その中のブドウ園の一つ、Vergenoegdワイナリーでは、ユニークな方法を採用しています。彼らは800羽のインディアン・ランナーという品種のアヒルを導入して生物による害虫駆除を行っています。アヒルのおかげで、カタツムリや昆虫を駆除するのに殺虫剤を使わずに済んでいるのです。毎日の「アヒルの行進」は毎年、多くのツアー客をブドウ園に呼び寄せています。また、Vergenoegdワイナリーは地域に在来の水鳥の保全にも関与しています。バードライフ・南アフリカと共同で、湿地を復元するためにため池に在来植物でできた浮島を設置することを地域の農家に呼びかけています。

vergenoegd.co.za

 

パラグアイの熱帯雨林農園で繁栄するブドウイロボウシインコ 写真提供: © Vagmak

締めくくりには日陰栽培のイェルバ・マテ茶を

 

プランテーションというと何を思い浮かべますか?同じ木の列が限りなく続く光景でしょうか?必ずしもそうとは限りません。パラグアイの日陰栽培の有機イェルバ・マテ茶のプランテーションでは、カエルや鳥の声が鳴り響き、頭上の熱帯雨林の枝からは雨水が落ちて来ます。南米のイェルバ・マテの木はセイヨウヒイラギの近縁種です。「イェルバ・マテはコーヒーの強さに茶の健康上の利点とチョコレートの幸福感が同居しています。」と日陰栽培イェルバの生産者Guayakiは得意げに言います。通常マテ茶は日向で生育しますが、バードライフ・パートナーのグイラ・パラグアイダーウィン・イニシアティブの支援を受けて、サン・ラファエル自然保護区に新しいモデルを作りました。ここで彼らは、先住民のMbya Guaraniの人々に持続可能な生活を導入しており、それがブドウイロボウシインコなどの絶滅危惧種にもプラスに働いています。

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