2016年度版レッドリスト: 島嶼の固有種には吉報、飼い鳥には凶報
この記事はバードライフの「The Magazine」誌のレッドリスト版に掲載されたものを翻訳・編集したものです。
今年のIUCNレッドリストの更新版は、ペットとして特に人気のある鳥が直面している苦境が反映されてています。多くの愛すべき種が罠で捕えられ、野生絶滅に近い状態になるほど取引されているのです。
より高い危惧のカテゴリーに格上げされた種のうち、最も象徴的なのはヨウムでしょう。今回、絶滅危惧Ⅱ類から同ⅠB類になりました。頭が良く、カリスマ性があり、人の声を真似するのが上手いヨウムは北アメリカ、ヨーロッパ、中東で最も人気のあるペットの一つです。世界中のペット・ショップで多くの人がヨウムが絶滅の危機にあると知って驚くのはよく見られることです。
けれどもヨウムが危険な状態になったのは正にペットとしての人気が原因です。毎年数千羽の野生のヨウムがアフリカの熱帯雨林で捕獲されています。こうした持続不能な捕獲速度のために、アフリカの一部ではヨウムはほぼ絶滅の状態です。1992年に行われた塒のカウントを再現したガーナでの最近の調査で、同国のヨウムの個体数はこの間に90%以上、恐らくは99%も減少したことが分かりました。
状況はアジアではさらに深刻で、19種が格上げされ、そのうちの6種は絶滅一歩手前の絶滅危惧ⅠA類に分類されました(詳しくはこちら)
これらはすべてインドネシアの固有種で、森林伐採も減少の原因ではあるものの、最大の原因は鳥の売買です。この現象は主としてジャワ、スマトラ、ボルネオで起きており、鳴禽を飼うことがこれらの島に根付いた文化であることが根源にあります。
島嶼の固有種の復活
一方、2016年度版レッドリストは地球上すべての遠く離れた島々にとっては良いニュースになりました。
一つの島または群島にだけに生息する鳥は世界で最もリスクの高い種です。分布域が狭いだけでなく、島に持ち込まれたネコやネズミなどの捕食者に対応できないのです。こうしたことから、鳥の絶滅の多くが島嶼の固有種で起こってきました。
けれども今年のレッドリストでこうした島嶼の鳥が格下げされたことは、島嶼の個体群の復活の努力が報われることを示しています。
アゾレスウソは彼らが好む常緑樹の森林が外来植物の侵入の脅威により1970年、80年代にはアゾレス諸島に恐らく300羽が残るだけとなったヨーロッパで最も希少なスズメ目の種になったことがあります。けれども過去10年の集中的な生息地復元活動によりその個体数は3倍になり、本種はこの10年で2度目の格下げがなされ、今回絶滅危惧ⅠB類から同Ⅱ類になりました。
モンセラートムクドリモドキは1995年に起きた島の村や森を破壊した火山噴火でほぼ一掃されたのですが、RSPB(英国のパートナー)の徹底した監視により個体群が徐々に回復し、今回絶滅危惧ⅠA類から同Ⅱ類に格下げになりました。
セントヘレナチドリも絶滅危惧ⅠA類から同Ⅱ類に格下げされました。この小型の渉禽類はこの南大西洋の離島にかつて生息していた9種の固有の陸鳥のうち、唯一生存している種です。捕食性外来種と空港(結局不使用のまま)の開発と建設による生息地の喪失により、セントヘレナチドリがその仲間と同じ運命をたどる恐れがありました。けれども、生息地の復元プロジェクトにより、今回格下げされました。
2016年度レッドリスト更新版で評価された全11,121種に関するファクトシートはこちらからダウンロードできます(Excelファイル)。
報告者: Alex Dale
原文はこちら