オーストラリアの森林火災 最新情報
オーストラリア全土を襲っている壊滅的な森林火災のニュースは無視できません。バードライフ・オーストラリアの保護活動部門長のSamantha Vineが火災のこれまでの状況や、オーストラリアの鳥類と生息地保全のために必要な緊急活動について報告します。
私たちの心は、壊滅的な火災で悲しんでいるオーストラリア人に寄り添う世界中の人々と共にあります。国中から聞こえて来る話の幾つかは、本当に胸が張り裂けそうです。私たちの想いは、この火災で最も影響を受けている人たちと共にあります。
火災の最前線で、熱と煙の中で長時間活動する消防士や、お互いを助け合う地域住民の頑張りには、感謝せずにいられません。
前例がないとは言うものの、このような火災は予測されていました。2008年、オーストラリア連邦政府は気候変動が及ぼす影響の調査をRoss Garnaut教授に依頼しました。Garnaut教授の報告書には、オーストラリアの火災シーズンが徐々に長期化し、激しさを増した形で、2020年までには観測されるだろうと予測していました。Garnaut教授や多くの気象学者の予測は正しかったのです。
生命と財産の大損失に加え、専門家はこれまでに5億頭以上の動物が命を落としたと推定しています。そこにはキガオミツスイ、ヒゲムシクイ、テリクロオウムなどの大切な絶滅危惧種が含まれます。多くの種が大切な繁殖地と採餌場所を失い、今飢餓に直面しています。野生生物の危機の深刻度は前例がないものです。
火災は山地から沿岸部まで広範囲の生態系に大きな影響を与えています。ユーカリの木がそびえ立つ森林から沿岸のヒースランドなど、世界遺産に登録されている熱帯と温帯雨林は、燃えることが想定されておらず、恐らく回復もしないでしょう。色鮮やかなオウムから賑やかなミツスイや小さな茶色の鳥まで多くの美しい鳥が大きな影響を受けるのは避けがたいことです。
バードライフ・オーストラリアは、既に災害対応の計画を策定し調整を行っています。私たちはパートナーと共同で鳥類への影響を理解するために活動を行い、適切な緊急復元計画を行う予定です。しかし火災はまだ終息しておらず、オーストラリア南東部はこれから火災のピーク時期を迎えるため、困難な作業となります。今回の危機の全貌を知るにはまだ何週間も掛かるでしょう。
安全に活動が出来るようになり次第、絶滅危惧種のため、火災の影響があった地域のアセスメントを行います。私たちはヒゲムシクイなどの絶滅危惧種に対する影響を評価する予定です。本種は昨年末に火災が発生したクイーンズランド南東部とニューサウスウェールズ北部に、少なくとも3ヶ所の重要な生息地がありました。また火災により、世界中で個体数が250羽以下と思われるキガオミツスイ(絶滅危惧ⅠA類)の重要な繁殖地も影響を受けたことが分かっています。
ヒゲムシクイとキガオミツスイは、壊滅的な火災の影響を受けた可能性が高いオーストラリアの200種の鳥類のうち、2例です。この2種はオーストラリアで、既に急速な絶滅の危機に瀕していたところに、この火災に襲われました。この火災により鳥類の一部は、小数の小さな個体群で数百羽以下となってしまい、その消失は種の絶滅を防ぐ活動を一層困難にします。これまでに6百万ヘクタールの低木林地が燃えてしまったことから、他の種の既知の生息地も完全に一掃されてしまった可能性があります。
オーストラリアは、火災の危険を管理し対応することにかけて世界のリーダーです。長年にわたり政府は、生命、財産、生態系へのリスクを減らすため戦略的な行動を取っており、火災抑制能力に投資を行って来ました。しかしこの活動も今回の火災を鎮火させるにはほとんど無力で、私たちの抑制能力は今回の火災の強さと規模には歯が立ちません。今回の火災の規模は前代未聞なのです。
火災阻止戦略を見直すと同時に、多くの時間と資金を投入し、また種と生態系の復元や絶滅が危惧される鳥と動物のトリアージュ活動(優先順位をつける作業)を行ったとしても、これらが一時しのぎの手段でしかないのです。森林火災はカーボン排出を減らそうとしない世界の不作為の結果です。この恐ろしい火災に直面して団結し、気候変動の猛威に対して行動を起こすべき時がやって来ました。それだけが私たちの真の解決策です。
報告者:Samantha Vine, BirdLife Australia
関連記事はこちら