アラビアンナイトの鳥たち
中東の地で太陽が沈み始めると、鳥たちの多くはねぐらに入ります。けれども、他の種にとっては一日の始まりでもあります。それはもちろんフクロウ類のことです。彼ら夜行性の猛禽類はその神秘的で独特な習性によって、人々を魅了してきました。
私たちは皆フクロウに馴染みがあります。この大型で独特の目(もく)は世界全体で234種が生息しており、南極大陸以外のすべての大陸で見ることが出来ます。これほど多くの種が居るにもかかわらず、アラビア半島では留鳥、旅鳥、渡り鳥を含めてフクロウ類はあまり見られません。
それでもこのカリスマ的な鳥は、この地域でも精神的な象徴となっています。中東の文化の一部ではフクロウ類はしばしば死と破壊に関係すると考えられており、復讐を遂げられずに死んだ人の魂を象徴すると言われています。こうした理由により、中東ではフクロウは悪運と考えられることが多いのですが、この考えはこの地域の、特に農民の間で変わりつつあるようです。夜間の狩猟に特別に適応した信じられないほど効率的な捕食動物として、フクロウはげっ歯類の個体数の増加を抑え、生態系のバランスを維持することで、人々に多大な生態系サービスを提供しているのです。
フクロウは通常夜に活動するため、彼らは高度に進化した聴覚システムと桁外れの暗視能力を持っています。眼が前方を向いていることもフクロウに賢こそうな印象を与えますが、実際的なこととして、この眼が非常に強力な空間認識能力をもたらすのです。それに加えて、彼らの眼は非常に効率的に光を集めるため、暗闇の中でもうまく狩りをすることができます。更に、フクロウの特殊化した羽毛は乱気流を押さえ、音を吸収することで、ほぼ無音の飛翔を可能にしているのです。
フクロウ類の大きさと重さは種により大きく異なります。世界最大と言われるカラフトフクロウは、およそ体重3kg、体長76cmに達します。非常に小型の種も居て、体長14cm以下、体重40g以下の種もいます。アラビア半島はフクロウのホットスポットではありませんが、以下に示す画像から、この地に生息するフクロウ類が、数は少ないもののこの象徴的な鳥が持つ多様性とカリスマ性を完璧に発揮していることが分かるでしょう。
Pharaoh Eagle Owl (Bubo ascalaphus)
ファラオワシミミズク
豊かな砂丘と同じオレンジ色の目を持つ本種はアラビア半島の全域、特に東海岸に生息しています。本種はこの地方の最大種で体長約68cm、翼開帳147cmに達します。砂漠に生息し、岩石層に出来た空洞を巣として利用します。
Barn Owl (Tyto alba)
メンフクロウ
年間を通して見られ、この地方で最もよく見られる種と考えられています。中型で、体長35cm、翼開帳89cmに達します。ハート形の顔と敏感な黒い眼により他のフクロウ類との識別は容易です。「Barn Owl」という英名(barnは「納屋」の意)が示すとおり、放棄された建物に営巣することを好み、特に天井やコンクリートの割れ目に営巣します。主に小鳥を餌とします。
Pallid Scops Owl (Otus brucei)
サバクミミズク
希少な小型の留鳥で、体長は20cm以下で、翼開帳は50cm。アラビア半島の東部に周年生息していますが、滅多に見ることはできません。乾燥した地域の丘や岩の多い渓谷にある樹洞に営巣しますが、都市の公園などで見られることもあります。繁殖期についてはよく分かっていません。冬にはインド亜大陸の北西部に渡りをするものもいます。
Eurasian Scops Owl (Otus scops)
コノハズク
渡り鳥ですがが、インド北部、イラン北部、トルコ、地中海沿岸地域などの幾つかの国や地域では留鳥でもあります。冬にアフリカに渡りをする際アラビア半島を通過します。渡りの時期に狩猟の脅威を受けています。
Little Owl (Athene noctua)
コキンメフクロウ
小型なことで知られる珍しい留鳥。体長22cmでしばしば日中にも見られます。砂色の縦班と丸い頭が特徴。ほとんどの湾岸諸国で繁殖の記録があります。本種は英国から中国東部まで広範囲に生息しますが、より淡い砂色をした亜種Athene noctua lilithは中東地方でのみ見られます。
Short-eared Owl (Asio flammeus)
コミミズク
稀な冬鳥で体長は最大で38cm程度。ほとんどの湾岸諸国で記録されていますが、数は多くありません。開けた、湿地性の田園地方を好み、昼も夜も活動して、地上数フィートのところを飛び、獲物に飛びかかる前にはよくホバリングします。
Long-eared Owl (Asio otus)
トラフズク
大きさは近縁のコミミズク程度で、体長は36cmに達します。この敏捷な捕食者は森をねぐらにすることを好み、翼と体を伸ばして木の枝を擬態します。渡りのルートはアラビア半島を通っておらず、オマーンやサウジアラビアなどの湾岸諸国で数少ない観察記録があるのみです。
報告者: Faisal Hajwal