アホウドリとの暮らし:バードアイランドで活躍する調査員(後編)
前編に続き、英国南極調査隊として、サウスジョージア島のバードアイランドで、アホウドリ類保全の最前線で活躍しているアレックス・ドッズさんにお話を伺いました。今回は、バードアイランドで働くことの難しさや、アホウドリたちが抱えている問題について、そしてアホウドリ類の保全の重要性についてお伝えします
アホウドリとのふれあいの中で特に印象に残っているできごとや、日々観察しているアホウドリの中でお気に入りはいますか。
毎日アホウドリのコロニーを訪れていると、おとなしくて温厚な鳥から、騒がしくて怒りっぽい鳥まで、さまざまなキャラクターをもつ鳥に出会います。種によって気質がどのように違うのかがわかってくるのも、おもしろいです。
毎日アホウドリのコロニーに通っていますが、特に天候がすごく悪い日があるとその日の作業を完了させて、それぞれの巣と鳥の記録をとることだけで精一杯になりがちです。でも鳥に囲まれた島にいることがどれだけ特別なことかを改めて実感する瞬間があります。
先日、ハイガシラアホウドリのコロニーを調査していたときのことです。ある鳥の金属製の足環の識別番号を読み取る必要があったので、その鳥に慎重に近づいていきました。そっと近づくとその鳥はおとなしくいうことを聞いてくれて、無事に足環の番号を読み取ることが出来ました。その後もしばらく私のそばにいて、なんと、興味津々な様子でお辞儀をするかのように頭を上下に動かしていたんです。私にとって、それはとても特別な瞬間でした!島で調査する 18か月の間に、これからも野生生物とのどんな特別な瞬間に出会えるのか、とても楽しみです。
仕事の内容や仕事をしている場所について、どのようなことが大変ですか。
フィールドワークで最初に大変なことは、島に着いたらまず「島歩きの脚力」をつけなければいけないことです。アホウドリ類の生態学調査をする隊員として、島のあちこちにあるコロニーまで毎日長い距離を歩いているうちに、急勾配にも耐えられる脚力がついてきました。
今はオットセイが次々にバードアイランドに戻ってきていて、丘の上の草むらの中にまで縄張りを広げています。ですから、オットセイが隠れていないか目を光らせて、出くわしたら追い払えるよう、いつでも杖や棒切れを持ち歩く必要があります。
離島で働いていると、何かが壊れても予備や修理方法がないということが常にありますし、調査活動に必要な資材が底をついたら、次の船が来るのを待つしかないんです。でも、プラトンが言うように「必要は発明の母」とは実にその通りで、遠くの地で暮らしたり仕事をしたりしていると、本当にそれを実感します。
現場の調査員として、リアルタイムで起こっている変化を感じると思います。島にいなければ気がつかないようなことは何かありますか。島に来てから、仕事やアホウドリたちの暮らしにどのような変化がありましたか。
私はほんの2~3週間前に島に来たばかりなので(インタビューは昨年11月に行いました)、まだ、バードアイランドにいるアホウドリの個体群の現状を把握している最中です。本国にいる人に比べて現場にいるからこそ見えるものがあるとすれば、営巣中のコロニーに行きつく漂着ゴミの量です。コロニーで見つかるものはたいてい、鳥たちの消化器官から不消化の食塊として吐き戻されたものです。島のあちこちで見つかった漂着ゴミは基地に持ち帰り、一覧表にしてから英国に送ります。
私の担当は、島で営巣中のアホウドリ4種の繁殖サイクルを調査することなので、子育てがうまくいく親鳥たちも、残念ながらうまくいかない巣も目の当たりにすることになります。モリモーク属のアホウドリ(ハイガシラアホウドリ、マユグロアホウドリ、ハイイロアホウドリ)の年1回の個体数調査が終われば、今シーズンを前年のシーズンと比べたり、島の個体数の全般的な動向を知ることができます。
ブログを読む私たちは、アホウドリの保護のために何ができるでしょうか。最前線からの声として、読者に伝えたいことは何ですか。
魚介類を買うときは、持続可能な漁業による水産物であることがわかるものをできるだけを買うようにしてみてください。青色のMSC認証ラベル(Marine Stewardship Council, 海のエコラベル)がついた水産物を買うように心がけることのほか、オンラインガイド(英国版)も利用すると便利です。
また、自国の漁業政策を改善するよう、政府に働きかけてください。
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使い捨てのプラスチック製品の消費量を減らせば、海洋環境に入る汚染物質の量は減ります。アホウドリなどの海鳥がプラスチックを飲み込んでしまったり、人間が捨てたゴミに絡まってしまうという問題は深刻さを増していて、成鳥、そして雛にも致命的なダメージを与える可能性があります。親鳥が与える餌の中にプラスチックが混ざっていることもよくあるのですから。
アホウドリたちを漁業による混獲から守るための国際チーム、アホウドリ・タスクフォースの活動についても、英語ですが読んでみてください。
18か月もの間、南極海に近い大西洋に浮かぶサウスジョージア島で調査活動に励むアレックスさんのインタビュー、いかがだったでしょうか。アホウドリたちの素敵な写真を私たちに届けてくれたり、現地の様子を報告してくれるアレックスさんや他の調査隊員たち。いつもありがとうございます!
写真: Alex Dodds