ワタリアホウドリのひなちゃん成長記(第2回)

久しぶりに海から戻ったママに、おねだりするひなちゃん

昨年12月、無事にサウスジョージア島から巣立ったワタリアホウドリのひなちゃん。その成長を振り返る第2回目は、子育て期間中のパパとママの行動に焦点を当ててみました。

夫婦になって25年。パパとママはひなちゃんのお兄ちゃんやお姉ちゃん9羽を立派に育て上げ、とても強いきずなで結ばれています。そんなパパとママは卵が産まれてからひなちゃんが無事に巣立つまでの約1年間、自分たちとひなちゃんの分の餌を探さなければなりません。ひなちゃんがまだ卵の中にいる間の2か月半は、交代で献身的に卵を守り、パパが卵を温めている間はママは栄養を補給するために数日間の海の旅に出かけ、ママが卵を温めているときはもちろんパパが餌を探しに出かけます。そしてひなちゃんが卵から生まれると、交代で規則的にご飯を与えなくてはなりません。卵を温めているときに比べて、餌を探す行き先を近場に変更し、頻繁に巣に戻ってくる必要があります。近場と言っても一日のうちに何百㎞もの距離を飛び、早くひなちゃんのもとに帰る生活が始まりました。

ひなちゃんの誕生を心待ちにするパパとママ ©Darren Fox

ひなちゃんが1ヵ月齢になったころには食べる量も増え、パパとママが交代で餌を取りに行くだけでは足りなくなってきました。そこでひなちゃん一羽を巣において、後ろ髪をひかれる思いでパパとママは海に餌を探しに出かけるようになりました。初めてのお留守番は心細かったと思いますが、パパとママの帰りを辛抱強く待つひなちゃん。そして餌を探す海の旅に出ているパパとママもすれ違いの生活が続きますが、可愛いひなちゃんのためならお互いに会えないことも我慢できます。

パパとママの帰りを待つひなちゃんの後ろ姿

ひなちゃんはスクスクと成長を続け、体重がピークに達する頃には一時期ですが、なんとパパやママより重くなるんです!パパとママの餌探しの旅の回数が少なくなる替わりに、1回に旅する距離はかなり遠くなります。餌となる魚やイカの量の変化や、同じ餌を狙う動物との競争、そして十分な食料を持ち帰るため、この期間の旅は北へ北へと広がります。アルゼンチンの海岸線を北上し、南氷洋に戻ってくるまでのその距離は何千㎞にも及びます。

サウスジョージア島で繁殖するワタリアホウドリたちに装着されたGPSロガーによる、採餌の旅の追跡データ(イギリス南極調査隊リチャード・フィリップス教授による)

ひなちゃんは知る由もなかったのですが、ひなちゃんがスクスクと育っている頃、世界では海鳥の未来を守る大きな進歩がありました。サウスジョージア・サウスサンドイッチ諸島の政府は、保護海域(120万km2)を拡大することを発表しました。さらに北の方では、チリ政府が漁業区域での海鳥の保護に関する新たな規制を発表しました。また東の方では、モーリシャスの港湾検査官たちが、アジア漁船による海鳥混獲対策の順守に関するトレーニングを受けています。このような、海鳥保全の進展はひなちゃんをはじめとする何千もの海鳥を守り、新たな命の誕生にもつながっていくのです。

ワタリアホウドリのひなちゃん成長記の最後となる次回は、ひなちゃんが大人っぽくなって無事に巣立つまでを振り返ります。お楽しみに!

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