アホウドリとの暮らし:バードアイランドで活躍する調査員 (前編)

ワタリアホウドリのつがいとアレックス

「南半球アホウドリ物語」をフォローし、アホウドリのひなちゃんが成長する様子を見ていると、亜南極の天候が極端に変わりやすいことがわかります。私たちは普段の生活をしながら身近にあるSNSを通して海鳥たちのすばらしさを見ることができますが、現場であるサウスジョージア島のバードアイランドで活動しているチームはというと、アホウドリたちの調査や研究、保護に欠かせないデータの収集に日々奮闘しています。

今回はバードアイランドで生活しながら活動している英国南極調査所のアホウドリ現地調査員、アレックス・ドッズさんにアホウドリとの暮らしについてお話を伺いました。インタビューは、ワタリアホウドリのひなちゃん1代目が巣立つ前の昨年11月頃に行われました。

 

こんなに遠くの地での暮らしは、どのようなものですか。

ここに来るには丸1日飛行機に乗り、さらに数日間船の旅だったので、着いたときはずいぶん遠くまで来たような気がしました。でもあっという間にバードアイランド独特の小さな世界に夢中になりました。一晩中聞こえてくるのは車の騒音ではなく、オットセイや夜行性の海鳥の声で、光害もありません。

調査隊の仲間にもすぐに溶け込めましたし、基地での生活やフィールドワークにもあっという間に慣れました。少しホームシックになったり快適な暮らしが恋しくなったりすることもありますが、仲間の誰もが経験してきたことですし、また経験していくことですから、誰か気の合う人に話を聞いてもらうと、とても気持ちが楽になります。

職場や仕事内容はいうまでもなく、Alexさんの勤務地は他の職業とはかなり違います。どのような経緯で、亜南極という場所とアホウドリの仕事に関わるようになったのですか。

ここ数年の間に私はちょっとした島好きになり、英国周辺や海外にある英国領の様々な島で働きました。沿岸部での仕事中、水陸の生態系が互いに影響しあう様子を見るのが大好きです。大海原で食べ物を調達し、島で子育てをする海鳥は、そんな私にはぴったりの生き物なんです。

アホウドリは、自然のドキュメンタリーや学校で読む船乗りたちの神話や迷信(「老水夫の歌」など)に出てきたことで知り、昔から畏敬の念を抱いてきました。現場での生態系の保全を主な活動分野とすることで、私なりに自然界に貢献し、自然がいま直面している問題の解決に役立てると思っています。

バードアイランドでの1日について教えてください。

いまのところ、私たちアホウドリコンビ(アホウドリ類調査の先輩Rosie Hallと私)は一日中、ハイガシラアホウドリとマユグロアホウドリのコロニーにある卵を確認し、卵の親鳥を調べる作業をしています。

ハイガシラアホウドリはほぼ産卵を終えていて、金属製や色付きの足環を確認し、どのつがいが親鳥かを特定しました。巣にいる個体を記録し、胸に家畜用のマーカースプレー(ヒツジに使うのと同じもの)で青い印を付けるので、いまコロニーはちょっと変な色に見えるんですよ。胸の目印は卵と親鳥を既に確認したということなので、「そっとしておいて」という意味となり、その巣の調査はそれ以上しません。胸につけた塗料はその鳥が何回か海に出て行ったときに洗い流されます。

巣立ちが近いワタリアホウドリの幼鳥

11月上旬からは、調査エリアにいるワタリアホウドリの雛についても、翼を大きく広げて飛べるようになったかどうかを毎日チェックしています。巣にいた雛たちが平らで開けた滑走路エリアにふらふらと出てきて、羽ばたきや小さくジャンプする練習をしては、少し興奮した鳴き声を上げるのを見るのは楽しいものです。

暖かく快適な基地に戻ると、その日のデータをさまざまな集計表とデータベースに入力し、翌日の作業に備えて地図や書類を印刷します。

基地での夜は、たいてい午後8時に夕食をとったあと、ラウンジで映画を見たり、ゲームやおしゃべりをしながら仲間と過ごします。私が島に来た週末はハロウィーンだったので、ドレスやフェイスペイント、化粧箱をラウンジに持ち寄り、皆で思い思いの仮装をしました。ハロウィーン定番の映画「ロッキー・ホラー・ショー」や「ビートルジュース」をみんなで見て、オレンジ色のブイをきれいに洗ってジャック・オー・ランタンも作ったんですよ。

北半球は冬に向かっていますが、バードアイランドは急速に春に近づいています。次の繁殖シーズンのバードアイランドにはどんな楽しみがありそうですか。

確実に春が近づいていて、今週はもう、サウスジョージアタヒバリが雛に餌をやっているというニュースが届きました。「南半球アホウドリ物語」の主役であるひなちゃんをはじめ、昨シーズン生まれたワタリアホウドリの雛たちは、この数週間のうちに飛べるようになるはずです。フワフワの綿羽がもうほとんど抜け替わっていますから!

ハイガシラアホウドリたちは卵を温めているし、マユグロアホウドリもそろそろ後に続きそうなので、今シーズンはたくさんのフワフワの雛たちに会えると期待しています。島はオットセイやたくさんのマカロニペンギンが戻ってきて、どんどん賑やかになっています。丘を越えてアホウドリのコロニーに向かって歩いて行くと、浜辺にいるオットセイの鳴き声は聞こえなくなって、遠くのビッグ・マックというコロニーからペンギンの大群の鳴き声が聞こえてくるんです。

バードアイランドの夕焼け

次回のブログでは、現場の仕事の大変なことや、アホウドリたちが直面している問題などについてお話ししてもらったことをお伝えします。

写真: Alex Dodds

  1. TOP
  2. アホウドリのブログ
  3. アホウドリとの暮らし:バードアイランドで活躍する調査員 (前編)