バードアイランドでの暮らしと調査

バードアイランドのワタリアホウドリ家族

サウスジョージア島のバードアイランドで、アホウドリ類に囲まれて暮らすのはどんな感じだろう、と思ったことはありませんか?今回は、バードアイランドに18か月滞在している英国南極観測局(BAS)の海鳥生態調査フィールドアシスタント、エリン・テイラーさんにお話をうかがいました。エリンさんが見た海鳥の姿、仕事の魅力、そしてアホウドリ達の未来への希望を語ってくれました。

エリンさん、海鳥生態調査フィールドアシスタントというお仕事について教えてください。

バードアイランドでの私の仕事は、島に生息する4種類のアホウドリ(ハイガシラアホウドリ、マユグロアホウドリ、ワタリアホウドリ、ハイイロアホウドリ)を年間を通じてモニタリングすることです。島のアホウドリ達のコロニーを定期的にチェックし、産卵や孵化、生存率を調査するのが私の役割です。

バードアイランドは南半球にあるため、北半球の一般的な夏の時期に冬がやってきます。冬が近づくと、私はワタリアホウドリの調査に集中し、毎月巣をチェックして、どの雛が孵化したのか、孵化が失敗した雛がいないかなどを確認します。3月に雛が孵化すると、親鳥の採餌飛行を小型GPSと浸水ロガーを使って追跡するプロジェクトを開始し、7月まで続けます。また、研究室では、昨年の夏にマユグロアホウドリとハイガシラアホウドリから採取した餌のサンプルから餌の種類を特定し、解剖します。それから、次のシーズンのモニタリングに向けて、状態が整っているか全てをチェックしています。

とても興味深いですね。では、この仕事に携わるきっかけについて教えてください。

この仕事を始めたきっかけは私の父です。幼い頃から父に連れられて、バードウォッチングや野鳥の足環付けに出かけていました。その中でも最初の思い出は、父に背負われて、ウェールズ沖のスコマー島でニシツノメドリを見たことでした。大学卒業後は、英国内の鳥類観測所の何か所かに住み込みで勤務し、余暇には島々を訪れる生活を送りました。バードアイランドは究極の海鳥の島なので、BASの一員として働くことは常に夢でした。

素晴らしい思い出ですね。バードアイランドでの仕事で一番気に入っていることは何ですか?

18か月間の滞在で、卵から巣立ちまでのアホウドリ達の生態を観察することができ、その過程で何羽もの自分のお気に入りのアホウドリに出会えることです。最近では天気が平穏な日もあり、雪をかぶった山々やワタリアホウドリの雛を見るために、仕事以外でもつい散策したくなってしまいます。人間の活動による影響を直接受けている種類の、長期的なモニタリングに携われるのは素晴らしいことだと思っています。

バードアイランドでの生活や仕事はどのようなものですか?

バードアイランドでの生活には、いくつか大変な面もあります。まず最初に言われるのは、孤立していることです。私たちは、夏には12人、冬にはたった4人のチームで活動します。このような小規模なチームでは、互いに助けあう必要があるので、人間関係の良さがより重要になります。今年のチームは仲の良さが際立っていますね。

バードアイランド自体も、草むらに覆われた丘陵地帯に急な斜面が点在し、底なしで悪臭を放つ湿地帯があるなど、厳しい環境です。全長がたった4.8kmの島ですが、端から端まで行くには数時間かかります。島での暮らしは小さなコミュニティと同じで、夕食を一緒に食べたり、料理や掃除の当番を決めたりします。毎週土曜日には、コース料理を準備して、ワインを1、2杯飲むという特別な夕食をとっています。また、映画鑑賞会を開いたり、ゲームやおしゃべりをしたり、編み物をしたりすることもありますよ。

特にお気に入りのアホウドリの種類はいますか?

ありきたりな答えかもしれませんが、ワタリアホウドリが一番好きです。彼ら・彼女らは体がとても大きく、威厳があり、神秘的という評判ですが、波の支配者でありながら、陸に戻るとまったく違う面をもち、信じられないほどおどけた姿を見せるんです。足が大きいので、歩くときはダイビングで使う足ヒレを履いているように見えます。バランスをとるため、3メートルの翼をめいっぱいに広げて歩くか、猫背で首を前後に動かしながら歩かなければならないのです。さらにこれだけでは物足りないかのように、踊り出しもするのです。同僚はこの光景を「動く洋服箪笥(大きいものが動きながら音を立てる意味で)」と表現していました。頭を後ろにそらして叫び、鳴きながらカタカタと音を立てるので。正直言って、私が今まで見た中で最も面白く、最も魅惑的な光景の一つです。

小さな毛玉のような雛は、美しい白黒の幼鳥に成長し、それぞれにユニークな個性を持っています。そう、「25番」の標識が付いた巣で育つ、世界一怒りっぽいワタリアホウドリのひなちゃんのことです。飛ぶ練習を始めると、その大きすぎる翼に風を受けながら、まるで純粋な喜びを表す叫びのような鳴き声をあげます。

翼を広げるワタリアホウドリの親鳥と家族

たくさんの海鳥を見てこられたと思いますが、一番印象に残っている海鳥の光景はありますか?

私のお気に入りの海鳥の思い出は、バードアイランドに来る前のフォークランドで隔離期間中のことです。船のタイミングが良かったので、出航前に数日間探索する時間がありました。ある日、キドニー島へのツアーを企画して、ミナミイワトビペンギンのコロニーを間近に見ることができました。そして、日が暮れ始めると、何万羽ものハイイロミズナギドリが、オレンジ色の波の上をかすめるように岸の近くまでやってきて、それはまさに壮観でした。

キドニー島

気候変動が実際にバードアイランドのアホウドリ達に影響を与えていると感じたことはありますか?

バードアイランドでの長期的なモニタリングにより、この島の調査対象4種すべての個体数が過去30年間で減少していることが明らかになりました。ただし、ワタリアホウドリの個体数は安定しつつあることを示唆する研究もあります。このような研究は、気候変動のような広範囲に及ぶ影響を考える上でとても重要です。

現在、私たちが取り組んでいるプロジェクトの一つは、GPSを使った追跡調査で、アホウドリ達にとって重要な場所を特定することができます。風向きや気温、降水量の変化により、採餌パターンやエネルギー消費量、生存率などがどのように変化するかを知ることは、ますます重要になっています。

アホウドリ類の未来に向けた希望はありますか?

今後バードアイランドで働く海鳥生態学フィールドアシスタントが、現在アホウドリ類が直面している悲惨な個体数減少ではなく、この素晴らしい鳥達の個体数の増加を記録できるようになることを願っています。追跡技術の発達により、なぜアホウドリ類が危機的状況に瀕しているのか、そしてこの状況を変えるために私たちに何ができるのかについての知識がより深まってきています。

写真撮影:Erin Taylor
原文はこちら

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