壊滅的なオイル漏れ後のモーリシャスでの爬虫類救出作戦

30匹のBojer's Skink(モーリシャス固有種のトカゲ科の一種:和名不明)がパス島から避難しました。写真提供:© Mauritian Wildlife Foundation

モーリシャスの自然保護区から数キロ内に貨物船が座礁した時、地元の自然保護活動家たちは、ここにしか生息していない3種の世界的な絶滅危惧種のトカゲを救うため、すぐに立ち上がりました。これらの爬虫類は、命綱を提供できる飼育繁殖施設へと運ばれました。

トカゲ科のトカゲは、非常に丈夫なトカゲという印象を与えます。短く頑丈な足を持ち、はっきりとした首のない彼らは、侵入が困難な穴や割れ目に割り込みます。捕食者がなんとか彼らを吐き出しても、トカゲ科のトカゲは尻尾を脱ぎ捨て、無防備な肉食動物の口の中でうごめくままにしておき、逃げていきます。

トカゲ科のようなトカゲが最初に現れるのは、化石記録によれば1億4千万年前で、これはティラノサウルス・レックスと同時期なので、彼らは生き残るために何か正しいことをやっているはずです。しかしこのトカゲ科のトカゲでも、切り抜けられない危険が起きています。2020年7月25日に貨物船「わかしお」が座礁した時、1000トンのオイルが周辺の自然保護区や国立公園に流出しました。人間が起こしたこの問題は私たち人間が解決しなければならなくなりました。

Bojer’s Skink、 Bouton’s Skinkと Lesser Night Gecko(いずれも和名不明)の3種はモーリシャス南東部の幾つかの島にのみ生息する爬虫類です(前2種はトカゲ科のトカゲ、3種目はヤモリの一種)。外来種の侵入と生息地の喪失により、他の場所でいなくなり、わずか数百個体が生き残っているだけです。オイルによる汚染は、トカゲ類には極めて有毒であることから、もしバードライフの支援を受けたモーリシャス野生生物基金(MWF: バードライフ・パートナー)ダレル野生生物保護基金や、モーリシャスの国立公園保全サービス、林野局などの迅速で断固とした救助がなければ、彼らを絶滅に追い込んだことでしょう。科学者たちは30匹のBojer’s Skink、6匹のBouton’s Skinkと30匹のLesser Night Geckoを、モーリシャス本島に避難させました。9月に彼らは、これらを世界的に有名な爬虫類の繁殖施設であるジャージー動物園に飛行機で搬送しました。

「この救出作戦はこれらのモーリシャスの固有種を救い、永続的な遺伝子プールを確保する機会となり、いつか彼らを再導入することも可能にします。」とMWFの保護ディレクターのVikash Tatayah博士は言いました。

オイルからのガスを避けるために、トカゲを捕らえる時にマスクをしているNik Cole博士 写真提供:© Mauritian Wildlife Foundation

ダレル基金の島嶼復元マネジャーのNik Cole博士は、モーリシャスから離れているにもかかわらず、チャネル諸島にあるジャージー動物園が、なぜこれらのトカゲにとっての唯一の選択肢なのかを、次のように説明しています。「ジャージー動物園は、モーリシャスの爬虫類の飼育に40年以上の経験を持ち、世界的な爬虫類・両生類学と獣医学の専門知識を持っているのです。これらの爬虫類を維持し、捕食者、外来寄生虫、病気から長期的に安全に保つための施設が現在モーリシャスでは利用できないため、これが生存の唯一のチャンスです。これらの種のうち2種は、今までに飼育下に置かれたことがなく、彼らには熟練した専門家によるケアが必要であることが浮き彫りになります。」

捕獲されたのはトカゲ類の個体数の5%以下ですが、それらは野生の個体群がオイル流出により深刻な損失を被る、または絶滅した場合には、重要な保存個体の役割を果たすでしょう。これらのトカゲは油の毒素が分解されたら、子孫や孫を解放して野生の個体群を補充できることを期待して、飼育下で飼育される予定です。

島嶼国家としてモーリシャスはその珍しくユニークな野生生物で有名で、数百万年の孤立により、独立して進化しました。野生生物の固有の価値と共に、モーリシャスの魅力的な動物により生まれる観光業の収入は、モーリシャスにとって重要な所得源の一つです。単一種内であっても遺伝子の多様性を保存することは、健全なレベルの変異を維持し、交雑を避けるために極めて大切です。

Lesser Night Geckoの体長が僅か6センチしかないのは「島嶼矮化」によるものだろう。写真提供:© Nik Cole

Bojer’s Skinkは世界でも遺伝的に特徴的なトカゲ科の1種です。Bojerii属の一属一種の種で、3千万年前に最も近縁な種から分岐したものです(これに比べるとヒトが近縁種から分岐したのは7百万年前以下)。雑食性のトカゲとして昆虫もフルーツも食べるので、Bojer’s Skinkは昆虫の数を押さえ、フルーツの種子を糞で散布するという重要な役割を担っています。森林の全域がこの果物好きの放浪者がいなければ再生されなかったでしょう。またBouton’s Skinkは、沿岸地域を好み、ここで海洋性甲殻類や昆虫を食べます。本種は異なる島々の全域に広がる多様な亜種に放散し、その全てを保護する必要があります。

最後は、全く異なる種類のトカゲであるLesser Night Geckoです。膨らんだ瞼のない目とほとんどのヤモリ類に共通の粘着性の足指パッドを持つ本種が、他の同族と異なるのはその絶対的に小さなサイズです。この小型爬虫類は長さ6センチ(尾を含む)までしか成長せず、その卵は僅か0.2グラムです。さすがに本種でもピンの先で踊ることはできませんが、指先に止まることはできます。このような適応は、孤島に生息する種が限られた空間と食物供給によりどんどん小型化する現象「島嶼矮化」の結果生じたものでしょう。これらの素晴らしい生き物について発見することはまだたくさんあります。

「このことは、このような状況にもかかわらず、自然保護活動家、政府、支援者の協働活動により貴重な自然環境を守るために私たち全員が達成することを示すものです。」と、バードライフのCEO、 Particia Zuritaは述べています。

 

報告者:Jessica Law

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