アホウドリの賛歌 (後編)

ハイガシラアホウドリのコロニーを調査中のステファニー

前編に続き、バードライフ・インターナショナルと英国王立鳥類保護協会(RSPB)で国際海洋プロジェクトマネージャーをしているステファニー・プリンスに、彼女の生活がいかにアホウドリと深く結びついていったか、そして今後の計画についても話してもらいました。

2012年にアホウドリを初めて見た時から、研究者としての私はアホウドリたち一色ともいえる生活を送ってきました。最初の頃はアホウドリ類の魅力に心を奪われるばかりでしたが、個体数を調査し、アホウドリたちが急激に減っているのを目の当たりにしたことで、これを何とかしなければと懸命に取り組むようになりました。アホウドリの顔から釣り針をはずし、島で漁網や釣り糸を回収して他の生き物がからまないようにしているうちに、この大切な鳥たちのために私が声をあげるしかないと思うようになりました。

英国南極調査隊の一員としての16か月間、サウスジョージア島のバードアイランドで調査をしました。私とアホウドリたちしかいないフィールドで何時間も過ごす毎日でした。サウスジョージア島で合計3年近く過ごしてから英国に帰った後、南米とアフリカ南部の漁場で混獲からアホウドリ類を救う活動をしているRSPBのアホウドリ・タスクフォースで働き始めました。1年後にはアジアの漁業者への働きかけの担当となり、現在はアホウドリ類の混獲を削減するための様々なプロジェクト全体のマネージャーをしています。バードアイランドのあと、ニュージーランドでも、また一昨年はハワイのミッドウェー環礁でも、さらに多くのアホウドリ類を見ることができました。ミッドウェー環礁には60万つがい以上ものアホウドリが繁殖していて、私が参加した調査チームは一羽残らず数え上げたんです。

サウスジョージア島で生まれたワタリアホウドリの雛

産卵後に親鳥たちが2か月間辛抱強く抱卵した末、小さなフワフワの雛が生まれ、およそ12ヵ月たつと立派な若鳥になる ―― 繁殖期の間ずっとアホウドリたちのそばにいて、そのすべてに立ち会うのは信じられないほどすばらしい体験でした。サウスジョージア島では一時期、私と仲よしになったオスのワタリアホウドリがいました。ほんとうに特別な存在だったんです。卵の状態を調べに巣に行くと、いつもくちばしで私の髪を毛づくろいし始めるのです。きっとその頃の私のヘアスタイルが気にいらなかったんでしょうね。コロニーの中に座って、アホウドリたちの家族の一員のように扱ってもらうのはかけがえのない体験でした。できれば、いつまでもその場にいたいと思いました。

サウスジョージア島でアホウドリたちと何年も暮らしたこと、一昨年はハワイのコアホウドリのコロニーで結婚し、その後驚くほどの数のアホウドリが地面を埋めつくして巣をつくっているミッドウェー環礁で6週間のハネムーンを過ごせたことも、全てが本当にラッキーでした。実は私はまだ、アホウドリ類全種は見ていないんです。優先順位としては、大西洋の真ん中のゴフ島のアホウドリを見ることでしょうか。ゴフ島には、近絶滅種のゴウワタリアホウドリが生息しているのですが、雛を殺す侵入種のネズミが脅威となっています。ネズミを駆除し、ゴウワタリアホウドリが安全に生きていけるようにするための計画が進行中です。ネズミがいなくなった後ゴフ島に行って、繁殖が順調に進んでゴウワタリアホウドリが増えたのをこの目で確かめたいと思っています。その日はきっと来ると信じています。

アホウドリの賛歌 (前編)はこちらから。

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「南半球アホウドリ物語」はDarwin Initiative、South Georgia Heritage Trust及びFriends of South Georgia Islandよりご支援をいただいています。

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