アホウドリの賛歌 (前編)

ワタリアホウドリの卵を計測するステファニー

不思議な魅力を感じさせるアホウドリ類の生態について、バードライフ・インターナショナルと英国王立鳥類保護協会(The Royal Society for the Protection of Birds)で国際海洋プロジェクトマネージャーをしているステファニー・プリンスが話をしてくれました。人はなぜアホウドリにカリスマ性を感じるのか、その理由がよくわかります。アホウドリ類の保全に関する今後の課題とその解決策についても含め、2回に分けて掲載します。

私が初めてアホウドリを見たのは、フォークランド諸島からサウスジョージア島へと向かう船の後部からでした。英国南極調査所(British Antarctic Survey)から派遣されて、アホウドリの調査に向かう途中でした。その並外れた大きさと、翼の先で波頭を切るように海面すれすれに悠然と滑空する姿をみた瞬間、心を奪われてしまいました。

サウスジョージア島のバードアイランドに到着してアホウドリ類の実際の大きさを目の当たりにし、そのさまざまな性格や行動を知るようになるにつれ、私のアホウドリへの愛着は深まるばかりでした。鳥は全般に好きでしたが、アホウドリたちとともに過ごすのは、実にすばらしい体験でした。アホウドリ類は仲間同士のやりとりにも、人間との関わり方にもある種の深みがあり、これは他の鳥では見たことがありませんでした。アホウドリに見つめられたら、アホウドリが自分のことを思っているなあと感じることでしょう。

ワタリアホウドリの雛の健康状態を確認するための見回りも調査の一部

アホウドリにはそれぞれ個性があります。コロニーのそばを通りかかるといつも怒りだして草をむしりとる気むずかしい鳥もいれば、まるで卵を抱くように人の手を温めようとする鳥もいて、本当にさまざまです。儀式的な求愛ダンスは、アホウドリの種ごとに特有の一連の動きがあり、その目を奪われるような光景は何時間でも見ていられます。私も知って驚いたのですが、アホウドリは、数年間にわたって海上を何千kmも飛び続けるという、信じられないような生活をしています。最近行ったハイガシラアホウドリの幼鳥の追跡調査では、6か月間に49,604kmも飛行した鳥が記録されました。すごいでしょう?

アホウドリ類はまさに注目に値する鳥たちで、実際に海洋の指標種でもあります。アホウドリ類の個体群の健康状態から、海洋生態系全体の健康状態を知ることができるのです。アホウドリたちは海洋世界の使者さながらです。またアホウドリたちには、人間に似た特徴がたくさんあります。とても長生きで(70歳かそれ以上も)、親としての役割をしっかり果たし、夫婦は強い絆で結ばれています。もっと多くの人がアホウドリたちと繋がりを感じるべきだと思うのは、このように人間とよく似た特徴があることも理由のひとつですが、アホウドリ類がさらされる脅威には人為的なものもあるからなのです。私たち全員がそれについてもっと知り、私たちに何ができるのかを知る必要があるからなのです。

アホウドリ類は、オウム類についで世界で2番目に絶滅の脅威にさらされている鳥類です。漁業の混獲による偶発死のほか、島によってはマウスやラットなどの侵入種、病気や気候変動などがアホウドリの生存を脅かしています。脅威はたくさんありますが、アホウドリの種によっては状況がよくなっているものもあり、希望もあります。数年前にはアホウドリ22種のうち19種が絶滅の危機にありましたが、現在は22種のうち15種となっています。また、保護活動が目覚ましい成果をあげた事例もあります。例えばアホウドリ・タスクフォースは、南アフリカとナミビアの漁業で命を落とす鳥の数を合計で年間約29,000羽も減らすことができました。これに取り組んでいるのは、ごくわずかな人々です。もし私たちが状況を変えようと真剣に取り組めば、すばらしい結果が得られることでしょう。まだ課題は多く、鳥たちは今現在も命を落としています。しかし、海鳥の混獲には確かな解決策があります。このようにすばらしい種であるアホウドリたちに関する関心を高め、漁船団全体のレベルでの改革を行うことが重要です。

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「南半球アホウドリ物語」はDarwin Initiative、South Georgia Heritage Trust及びFriends of South Georgia Islandよりご支援をいただいています。

 

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