ワタリアホウドリのツムギちゃん成長記

ツムギちゃんとママ ©Erin Taylor

2022年に皆さんにも一緒に成長を見守っていただいたワタリアホウドリのツムギちゃん。大分間が空いてしまいましたが、今回のブログでは生まれる前から巣立ちまでを振り返ります!

 

ツムギちゃん誕生までの秘話

ツムギちゃんは、2020年にも見守った主人公家族のパパ(トモルさん)とママ(ルリさん)のもとに生まれました。ツムギちゃんが生まれたとき、トモルさんは25歳でルリさんは36歳。これまで一緒に3羽の雛を巣立ちまで育て上げた夫婦です。2021年12月24日に現地の調査隊が産卵を確認した後は、トモルさんとルリさんが交代しながら大事に卵を温めました。

抱卵中のトモルさん(左)とルリさん(右)©Erin Taylor

そしてついに、長い抱卵期を終えて2022年3月11日にツムギちゃんが誕生しました。その瞬間にはトモルさんが立ち会い、その数日後には海から帰ってきたルリさんともご対面。その時の喜びようと言ったらもう…!

(実はここまではまだ3羽に名前が付けられていないのですが…)

ツムギちゃんのお顔初お披露目©Erin Taylor

無事ツムギちゃんも誕生したところで、皆さんに主人公家族の名前を考えてもらいました。たくさんの方々に素敵なアイデアを送っていただき、3羽の名前が選ばれました。

 

トモルさん:家族を温かい光で包み込むイメージから。

ルリさん:空や海の美しい瑠璃色のような深い愛情を注ぐことを願って。

ツムギちゃん:将来の世代まで生命を紡いでいけるよう元気に育ってほしいという想いから。

 

1羽でお留守番できるように

生まれてしばらくは体温調節ができないので、トモルさん・ルリさんが交代でお腹の下でツムギちゃんを守っていました。4週齢になるとお留守番デビューを果たします。でもやっぱり1羽じゃ心細いのか、少し寂しそうな表情でパパとママを待つツムギちゃんでした。

お留守番デビューしたツムギちゃん©Erin Taylor

お留守番の際には、なんとなく寂しげな表情でちょこんと座るツムギちゃん。大丈夫かなという心配をよそに、スクスクと成長していきます。日本が夏真っ盛りの季節、ツムギちゃん達が暮らすサウスジョージア島のバードアイランドは真逆の冬真っ盛り。雪が降り積もる中でも、ツムギちゃんはへっちゃらな様子です。柔らかい綿羽が空気の層を作るので、体温を逃がさずにいれるようです。そしてモフモフ度もいよいよピークに達します。

雪景色に映えるツムギちゃん©Erin Taylor

 

徐々に大人っぽい姿に

9月に入り20週齢を過ぎると、ツムギちゃんのフワフワな白い綿羽が、少しずつ濃い色の羽に生え替わり始めました。最初は翼やお尻の部分から黒い羽が見え始め、やがて表情も含めて全体的に大人っぽい雰囲気に。それでもまだモフモフが残っている頃は、まるでコートを着ているかのようです。

27週齢に突入した9月16日に、ツムギちゃんはついに足環デビュー。足環をなぜつけるかというと、個体識別を行うことでアホウドリ類の保全に必要な情報が得られるのです。足環に刻まれた番号によって、サウスジョージア島に帰ってきた時にその個体がツムギちゃんだということがわかるのです!

ツムギちゃん絶賛変身中©Rosie Hall

 

大海原への旅立ち

羽の生え替わりも徐々に終盤を迎え、だいぶ黒い羽が目立つようになってきました。この頃からは巣の近くにちょっとお散歩に出かけたりして、巣立ちに向けた準備を着実にこなしていたようでした。

そんなツムギちゃん、1月前半についに巣立ちの日を迎えました。残念ながら巣立つ瞬間は目撃されなかったそうで、巣の周りで3日間確認がされなかったために巣立ち「認定」となりました。ツムギちゃんは他のひなちゃん達と比べて成長は少し遅かったため心配でしたが、最後には無事に巣立つことができてよかったです。

今頃は長い海の旅を続けていると思います。生まれ故郷に戻るのは数年後で、それまでずっと海での生活が続きます。アホウドリ類は海の旅で群れることはないので(餌に集まるとき以外)、一羽で寂しくないかなと思うとやや心配ではありますが、無事に戻ってこられると信じています。いつの日か元気な姿のツムギちゃんと再会できますように。

実は巣立ち直前の身体測定で、女の子だろうということが分かりました。何年か後には、ツムギちゃんがママとなって子育てする姿を見ることができるといいなと思います!

パパに餌をもらうツムギちゃん(巣立ち前最後に観察された様子)©Ashley Bennison

 

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