ハゲワシを殺す薬がEU市場で入手可能に

EU内でのジクロフェナクの販売は、ハゲワシ保護のための数十年に亘る努力と、そのために使われた数百万ユーロを無駄にしてしまう可能性があります。
写真提供:orientalizing; flickr.com

ジクロフェナクはインド、パキスタン、ネパールでハゲワシの個体群を壊滅させた強力な抗炎症薬です。今この環境災害がヨーロッパで再発する恐れがあります。ジクロフェナクに代る安全な代替薬が利用できるという事実がありながら、ジクロフェナクの使用が欧州のハゲワシの80%が生息するイタリアとスペインではこれまでにも許可されており、更に今回広くEU市場でも入手可能になりつつあります。SEO/BirdLife(スペインのパートナー)、RSPB(英国のパートナー)および‘ハゲワシ保護基金’の専門家によれば、このことは絶滅が危惧され、生態学的にも貴重な野生生物の欧州での大規模な絶滅を起こす恐れがあります。

ハゲワシは欧州では昔から好意的には見られてきませんでしたが、環境リサイクルでの汚れ役を担う種として、彼らは生態系の健全性のためには重要です。欧州には4種のハゲワシが生息していますが、その生き残りには危惧が続いています。エジプトハゲワシはIUCN(国際自然保護連合)のレッド・リストでバードライフにより絶滅危惧ⅠB類に、クロハゲワシは準絶滅危惧種に分類されています。幸いに数十年に亘る保護活動とそのために投じられた数百万ユーロのお蔭でハゲワシの個体群は復活しつつあります。今ここでのジクロフェナクの導入はこれらの努力と投資を危機にさらすことになります。

インド、パキスタン、ネパールでは1990年代にジクロフェナクが家畜の治療薬として普通に使われていました。家畜が死んでもジクロフェナクはその体内に残り、これを食べたハゲワシがほぼ即死しました。僅か10年ほどの間にこれらの国々ではハゲワシが99%も減少し、インド亜大陸で最も普通に見られた象徴的な巨鳥が絶滅の危機に追いやられました。ハゲワシが減ったことにより家畜の死体がそのまま残り、それにより野良犬が増加し、狂犬病などの病気のまん延につながって人の健康にも深刻な結果を招いたのです。RSPBとそのパートナーであるSAVE(アジアのハゲワシを絶滅から守る国際組織)による共同キャンペーンのお蔭で、インドではジクロフェナクの使用が禁止され、ハゲワシの個体数回復の兆候が見られるようになりました。

EUとその加盟国は‘EU野鳥指令’と生態系被害の回避を求める‘EU獣医薬品法’によりハゲワシを保護する法的義務があります。獣医用薬品としてのジクロフェナクの即時禁止はアジアのハゲワシに起きた運命から欧州のハゲワシを守るために必要であり、またそれは非常に危惧されているアフリカのハゲワシ個体群に既に影響を与えているジクロフェナク使用が普及しないようにアフリカ諸国を促す重要なシグナルを送ることになるでしょう。

(報告者:レベッカ・ランガー)

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