森林と湿地の保全

鳥や多くの生き物が生息する森林や湿地は、生物多様性を育む重要な生態系です。また、地球温暖化を防止し、私たちに生態系サービスとして様々な恵みをもたらしてくれます。しかし今、森林と湿地は危機に瀕しています。


森林保全の重要性

陸地の31%を占める森林ですが、放牧地や農地への転換、薪炭採取、違法伐採等で、6秒間にサッカー場1つ分、1年間におよそ1,200万ヘクタール(東京ドーム256個分)の熱帯雨林が消滅しています。特に深刻なのはインドネシアです。アマゾンに次ぐ面積を誇るインドネシアの熱帯雨林ですが、これまでに80%が失われ、現在も年間250万ヘクタール(東京ドーム53個分)が消えています。熱帯雨林は、百万もの生物種を育む重要な生態系の一つであるとともに、私たちに生態系サービスとして、有形無形の恵みをもたらしてくれます。また、森林が吸収し、蓄積する何十億トンもの炭素は、地球温暖化の防止につながります。一方で、森林を破壊すると、そこに蓄えられていた二酸化炭素が大気中に放出されることで、地球温暖化が促進されてしまいます。


湿地保全の重要性

湿地は陸域のわずか4%にすぎませんが、今、世界中で湿地の埋め立てや都市化が進んでいます。日本では、過去100年で60%の湿地が失われました。湿地は200種以上、約5,000万羽の水鳥にとって欠かせない生息地です。例えば、世界に9つある主要な鳥の渡りルートの1つである、 東アジア・オーストラリア地域フライウェイは、日本を含む20か国以上にまたがる沿岸湿地を結んでいますが、これらの湿地は鳥たちが次の旅に進む前に餌を取り、休息できる重要な生息地となっています。そして、私たちもまた、湿地から多くの恩恵を得ています。湿地は、洪水、海面上昇、高潮の影響から海岸を保護し、食糧、雇用、レクリエーションといった様々な生態系サービスを提供しています。さらに泥炭湿地は、炭素を吸収・蓄積するため、こうした湿地を保全することは、地球温暖化の防止につながります。また、森林と同様に、湿地を破壊することで、大量の炭素が大気中に放出されてしまうのです。


バードライフの取り組み

バードライフは、森林破壊が鳥類に及ぼす影響を調査・研究し、絶滅の恐れのある種を「レッドリスト」として公表をしています。また、世界資源研究所の協力により、過去20年間に、森林に依存する何千もの鳥類種の生息域でどれだけの森林喪失が起きたかを再評価しました。

近年はインドネシアやマレーシアで、パートナー団体と協働し、地域の人々を支援することで、持続可能な環境保全活動を進めています。また、渡りのフライウェイに沿った地域社会と協力し、鳥類をシンボルにした湿地の保全と復元に取り組んでいます。パートナー団体と協力し、重要な湿地のラムサール条約等への登録を進めることで、保全体制の構築を促しています。

さらに、森林や湿地がもたらす生態系サービスの価値を適切に評価するためのTESSAの普及を進めています。ミャンマーでは初のラムサール条約登録湿地で生態系サービスの価値をTESSAの手法で測りました。そのほかベトナムの干潟でも実施するなど、普及を進めています。

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