過剰な水利用によりスペインの湿地の鳥が危機に
スペインのドニャーナ国立公園は何千羽もの渡り鳥の重要な中継地です。しかし、過剰な灌漑によって貴重な湿地が脅かされています。
渡りの季節には、数十万羽の鳥がスペイン、アンダルシア州のドニャーナ国立公園に飛来します。
この公園には湿地や水深の浅い小川、砂丘などの環境があります。ヨーロッパやアフリカからやって来た鳥は休息を取り、栄養補給をし、繁殖をするためにこの場所を訪れるのです。一年間で300種以上の鳥を見ることができます。その中にはカオジロオタテガモ、イベリアカタシロワシ、ヒメノガンなどの希少種も含まれます。ヨーロッパ最大の自然保護区でもあるこの公園は、ユネスコの世界遺産とラムサール・サイトの両方に指定されています。また、グアダルキビール湿原IBAの一部でもあります。しかしバードライフは、ここを世界で最も危惧されるIBAの一つと考えており、「危機にあるIBA」に指定しています。
残念ながらSEO/BirdLife(スペインのパートナー)の最近の報告によると、現在この湿地とそこに生息する鳥は多くの危険にさらされています。それらの脅威の根源は過剰な集約的灌漑です。ドニャーナの地下水は井戸や周辺の農家に水を供給するために汲み上げられています。しかし、季節外のイチゴやブルーベリーの栽培のために、違法で持続不可能な水の利用が行われており、湿地が危機にさらされているのです。事態はが非常に深刻で、ドニャーナで定期モニタリングの対象になっている絶滅危惧種の鳥の半数が、減少傾向にあることが分かりました。特に、ウスユキガモなど一部の種は極めて絶滅のリスクが高くなっています。さらには、メジロガモなどは既に地域絶滅したと考えられています。
その対応としてSEO/BirdLifeは、スペイン政府(世界遺産条約の締約国)に対して、ドニャーナの帯水層が過剰に採取されていると宣言すること、全ての違法な水の汲み上げを止めさせること、地下水の違法利用の取締を強化することを求めています。
しかし、このような変更が行われたとしても、ドニャーナには他の問題もあります。家畜の放牧はこの公園の社会文化遺産の一部となっていますが、過放牧によって鳥の巣や鳥が踏みつけられたり、植生にダメージを与えられたりしているのです。加えて、増え過ぎたイノシシも大きな問題となっています。イノシシは地上または低い位置に営巣する何十種もの鳥の卵や雛を食べてしまうからです。2017年だけで約800のムラサキサギの巣とクロハラアジサシの繁殖コロニーのほぼすべてが食い荒らされました。
このまま問題が放置されると、ドニャーナの生物多様性は危険な速度で劣化し続け、ドニャーナ国立公園を特徴づけている原始の自然美も永久に失われることになりかねません。そうなれば、世界遺産、国立公園、EUの特別保全地域としてのドニャーナの地位にも深刻な影響が及ぶことになるでしょう。
報告者:Margaret Sessa-Hawkins