海鳥と海洋

© Joaquim Muchaxo

絶滅の危機に瀕する海鳥

鳥類の中でも海鳥は急激に数を減らしています。IUCN(国際自然保護連合)によると、約330種の海鳥の3分の1、アホウドリに至っては22種のうち15種で絶滅が危惧されており、早急な保全対策が求められています(IUCN 2014)。海鳥の数の減少の原因として、ネズミなどの外来生物による捕食や海洋汚染、繁殖地の破壊、狩猟などの人為的影響など様々な要因があげられていますが、最大の脅威は、漁業による混獲です。海洋には国境はなく、海鳥の保全はグローバルで進める必要があります。

海鳥の混獲問題

混獲とは、漁業において対象とする魚種以外の種が一緒に捕獲されてしまうことで、これには漁業対象以外の魚種に加えて、海鳥、ウミガメ、海洋哺乳類が含まれます。海鳥では、はえ縄漁の釣り針にかかったり、刺し網に絡まったりすることで、莫大な数の海鳥が命を落としています。

・はえ縄漁による混獲

はえ縄漁による混獲では、毎年30万羽の海鳥が犠牲になっています(Anderson et al. 2011)。アホウドリ類や大型のミズナギドリ類は、潜水が得意ではなく、海面付近の魚やイカをエサにしています。マグロやカジキなどを対象とした浮はえ縄漁では、釣餌として魚やイカを海に投入しますが、これらは、海鳥にとって魅力的な餌となります。海鳥は餌を釣針ごと呑み込んでしまうので、釣針が喉にひっかかり、そのまま海中に引きずりこまれて溺れ死んでしまうのです。

・刺し網漁による混獲

刺し網漁は、カレイやイワシ、サケなど、様々な魚種を対象としているので、水中に仕掛けた網で「網の壁」を築いて魚を捕らえます。特にイカリなどで固定しないものは流し網と呼ばれます。この漁ではウミガラス類やウミスズメ類などの、主に小型の潜水性海鳥が犠牲になります。海鳥が採餌をしている潜水中に漁網に絡まり、溺れ死んでしまうのです。

・解決に向けた取り組み

はえ縄漁による混獲を防ぐための対策として、混獲回避措置(ミティゲーション)が提案されており、各水域のまぐろ類地域漁業管理機関(RFMO)ごとに、使用する混獲回避措置が決められています。様々なものが提案されていますが、日本の漁業者によって考案されたトリポールと呼ばれる鳥よけは、混獲を防ぐ効果が高いことで知られており、最も普及している混獲回避措置のひとつです。

はえ縄漁と比べて、刺し網漁による混獲は調査・研究が遅れており、これまであまり被害が知られていませんでしたが、最新の研究報告によると、毎年40万羽の海鳥が刺し網漁で混獲されており、中でも北太平洋はバルト海と並んで、最も被害が深刻な海域であるという実態が明らかにされました(Zydelins et al. 2013)。また、ロシアのカムチャッカ半島、サハリン周辺の排他的経済水域内で行われているサケ・マスの流し網漁では、年平均94,330羽の海鳥の混獲が報告されています(Artukhin et al. 2010)*。
*2016年よりこの海域でのサケ・マスの流し網漁は禁止されています。

参考文献

Anderson, O.R., Small, C.J., Croxall, J.P., Dunn, E.K., Sullivan, B.J., Yates, O., Black, A. (2011) Global seabird bycatch in longline fisheries. Endang. Species Res. 14, 91–106.

Artukhin, Y.B., Burkanov, V.N., Nikulin, V.S. (2010). Accidental by-catch of Marine Birds and Mammals in the Salmon Gillnet Fishery in the North Western Pacific Ocean. Skorost’ Tsveta, Moscow, Russia.

IUCN Red List Database, accessed August 2014, www.iucnredlist.org

Zydelis, R., Bellebaum, J., Osterblom, H., Vetemaa, M., Schirmeister, B., Stipniece, A., Dagys, M., van Eerden, M., Garthe, S. (2009) Bycatch in gillnet fisheries – an overlooked threat to waterbird populations. Biol. Conserv. 142, 1269–1281.

バードライフの海洋保全プログラム

海鳥の混獲の減少と生息環境の保全、そのためのネットワークづくりを目的として、バードライフは、1997年に海鳥保全プログラムを設立しました。近年、マリーンIBAの選定を通して、海洋全体に保全活動が広がったことを受け、2014年、これまでの海鳥保全プログラムを改め「バードライフ・インターナショナル海洋保全プログラム(BirdLife International Marine Programme)」を立ち上げました。現在、10名の国際チームメンバーと20名のアホウドリ・タスクフォース(アホウドリ保護のために編成された特別チーム)のメンバーが海洋・海鳥の保全に取り組んでいます。

はえ縄漁による海鳥の混獲には、混獲を回避する漁具の開発や、アホウドリ・タスクフォースによる漁業者への直接指導、漁船の監視員の派遣、各国政府やRFMOへの保全の働きかけなど様々な活動を行っています。2015年には混獲回避措置の普及と啓発を目的としたビデオを各国語で製作し、保全活動に生かしています(日本語のビデオは こちら からご覧いただけます)。

バードライフでは、2012年より刺し網漁による海鳥の混獲問題への取り組みを開始しました。これまで欧州と北米を対象としたワークショップを開催したほか、イギリスのバーミンガム大学と混獲回避措置の共同研究を開始し、アイスランド、リトアニア、スペイン、ポルトガル、チリで漁業者と共同でその検証実験を行っています。日本でも2016年より日本経団連自然保護基金の助成を受け、天売島(北海道)にて漁業者の協力を得ながら、混獲防止策の開発に取り組んでいます。本事業は日本野鳥の会と共同で推進しています。

バードライフ・インターナショナル海洋保全プログラムの活動の様子を英文ニュースレター(SeaChange)でお知らせしています。最新号はこちらから手に入ります。

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