鳥の秘密:性生活が明らかに

ウミガラスは長期にわたるつがい関係を持つ一方で、乱交が多い鳥です。 写真提供:© Menno Schaefer / Shutterstock

長い間ほとんどの鳥は一夫一婦制だと考えられていました。この理想的なイメージは、研究が進んで一夫多妻制、一妻多夫制、長期の交尾期、精子競争などのライフスタイルが明らかになると吹き飛ばされました。鳥の秘密の繁殖生活にようこそ。ショックを受けましたか?それが自然淘汰なのです。

1960年代末には大部分の鳥類は、一般的に一夫一婦制だと思われていました。実際に、ほとんどの動物の雌は1頭(動物により1羽、1匹)の雄とだけつがいになり、貞操を守るというのが社会通念でした。ところが何か特別なことが起きました。1962年にヴェロ・コプナー・ウェイン・エドワーズの著書「社会的行動に関連する動物の分散」が、動物は種または一緒に暮らす集団の利益のために行動するという考えを広めました。彼は、例えば、もし食物が少なくなると、一部の個体は他の個体の繁殖に十分な食物が回るように、自分の繁殖活動を止めるだろうと示唆しました。

ウェイン・エドワーズの学位論文は、自然淘汰を理解している少数の生物学者からの強い反論を引き起こしました。デイビッド・ラックやジョージ・ウイリアムズなどの専門家が、エドワーズの群選択説には誤りがあると指摘しました。自然淘汰は個体に対して作用するもので、集団あるいは種に対するものではない、としたのです。それでもこの論争から新しい研究分野が生まれ、その後、行動生態学と呼ばれるようになりました。

この新しい個体選択の考えは、性選択を再び関連のある刺激的なものにしました。雌雄の外見と行動の違いを説明するためにチャールズ・ダーウィンが提唱した性選択は、暫くの間にスポットライトを浴びました。1940年代と50年代までにこのスポットライトは主に、性選択がどのように作用するかを理解していなかった偉大な科学の普及者ジュリアン・ハクスリーによって色あせたものになりました。

20世紀の初頭にハクスリーは、今では古典的研究となっているカンムリカイツブリの求愛行動により動物の行動の研究の先駆者になりました。カンムリカイツブリの精妙なディスプレーはペアが確定されたのちに行われるので、ハクスリーはこのディスプレーはパートナーを魅了することには全く関係がなく、従って性選択とも関係ないと主張しました。あまり知られていないハクスリーのマガモの求愛と交尾行動の研究も、ほぼ同じ時期に行われました。

彼が研究した2種(カンムリカイツブリとマガモ)の対比は、これ以上大きくなることはないでしょう。優雅なカイツブリの雌雄による素晴らしいディスプレーは明らかに一夫一婦制に見えます。一方、極めて見境のない雄のマガモは無理やりに雌の上に乗り、時には残虐で数も多いため雌が溺れ死ぬことがあるほどです。ハクスリーは、カイツブリは淫らなマガモよりも高度のレベルに進化したと説明しました。更にハクスリーは、選択は種の利益になるように作用すると信じていたので、マガモのレイプは有害以外の何ものでもないと考えました。

カンムリカイツブリは一夫一婦制で、お互いに素晴らしい求愛ディスプレーを演じます。
写真提供:© Rostislav Stach / Shutterstock

私の人生を変えた学生時代の講義は、鳥ではなくヒメフンバエという昆虫でした。一夫一婦制とは全くかけ離れて、雌のフンバエは乱婚型で、いつも数匹の雄と交尾をします。オスも同様に数匹の雌と交尾をします。この行動はダーウィンによって長い間信じられてきた雌は一夫一婦制であるという神話を完全に覆しました。これはまたこのような乱婚が適応的である可能性を示しました。三番目に、性選択はダーウィンが想定したようには個体がパートナーを得た時点で終わらず、それに代わって交尾の後でも精子競争と呼ばれるものにより続く可能性を示しました。若く熱心だった私にはこれは驚くべきエキサイティングなことでした。これは性、行動および選択に関する新しい考え方でした!

私は昆虫で観察された乱婚が鳥類でも起きているかどうか知りたくなり、これを研究したいと決めました。このことを大学の指導教授や友人に話をすると、彼らは笑って言いました。「鳥は一夫一婦制なのは誰でも知っていることだよ。時間の無駄だよ。」

私の博士号はウミガラスの行動と生態の研究で取得したもので、ウミガラスはつがいの絆が長期にわたるのにもかかわらず、彼らがフンバエとよく似た多くの乱婚の行動を取ることが分かったのは運が良い事でした。

1970年代半ばから1980年代にかけて行動生態学が進展するのに伴い、特に雌における性的な一夫一婦制は基準ではなく、例外であることが明らかになりました。勿論、雄については昔から乱交型であることが知られていました。1970年以前に一般的だった乱交型を何らかの異常あるいはホルモンのアンバランスが原因と決めつけず、現在研究者は、「次世代に自分の遺伝子を届けようとする」個体を対象とするようになりました。これを達成するのに乱婚に勝る方法があるでしょうか?

行動生態学が始まる少し前にデイビッド・ラックは、その後の研究に信じられないほどの影響を与える本となった「鳥類における繁殖のための生態的適応」を刊行しました。その中で彼は鳥類の90%超は一夫一婦制の配偶様式を取っていると述べています。残りの10%弱がハゴロモガラスエリマキシギのような一夫多妻制か、ごく僅かがレンカク類のような一妻多夫制です。従って、鳥は一夫一婦制が基準で、例外を探すよりも研究を必要とする基準でした。

行動生態学の誕生と共に焦点は、例外および一夫一婦制に対する「例外」即ちペア外交尾に移りました。研究が進展し、DNA指紋などの技術により父系を確定することが出来るようになったのです。これが最終的に、少なくとも雄に関しては、乱婚が利益をもたらす動かぬ証拠を提供したのです。これは鳥類における‘社会的一夫一婦制’と「性的一夫一婦制」の違いを区別することを可能にしました。性選択のプロセスを受精前(例:配偶者選択)と受精後(例:精子競争)の両方で理解することにより、かつては説明不能とされていた現象を説明する助けになります。

雄の生殖器を例に取ってみましょう。配偶システムにマッピングされた大型類人猿内の相対的な生殖器のサイズの大きな違いという、1970年代に偶然に発見されたことが、その後ほぼ一般法則となることを明らかにした様々な動物の分類群における一連の発見の始まりになりました。即ち、相対的に大きな生殖器を持つ動物は、雌の乱婚制を示す確かな証拠です。それは不完全ですが長い歴史のある考えで、1676年にフランシス・ウィラビィとジョン・レイが最初の鳥類学百科事典を書いた時に遡り、彼らはヨーロッパウズラの巨大な雄の生殖器に言及し、「このことからヨーロッパウズラは好色な鳥だと推察する」とコメントしています。ヨーロッパウズラは確かに乱交型の鳥ですが、進化の文脈無くしてはこの現象はほとんど説明が出来ません。

それでも観察は真実を捕えます。体のサイズに比べて大きな生殖器を持つ鳥は例外なく特別な配偶システムを持っています。ヨーロッパカヤクグリは最も乱婚の多い種の一つで、一夫一婦型のペア、一妻多夫型トリオ(2羽の雄と1羽の雌の組み合わせ)、更には多妻多夫型(2羽の雄が2羽の雌を共有)までの様々な繁殖形態を持ちます。本種の生殖器は雄の体重のおよそ3.4%にもなります。これに対してウソは雄の体重の0.29%しかない、体重と比べて最小の生殖器を持つことから、厳格に一夫一婦制を保っているようです。

オスの体重の0.29%しかない体のサイズに比べて最小の生殖器を持つウソは厳格な一夫一婦制。写真は亜種ベニバラウソ
写真提供:© Francis Franklin

睾丸は精子の工場の役割を果たします。大きな工場ほどより多くの精子を作ります。受精のための競争(即ち精子競争)においては、精子の数が多ければ多いほど成功する見込みが高くなります。これは宝くじに当たるのと同じで、くじを多く買うほど当たるチャンスは良くなります。

次は多くの種で単により大きな精子の入れ物を持っているだけでは十分ではないという受精競争です。結局、選択が働くのは、他の雄よりも有利な条件を持つ雄が子孫を残せる機会が増える場合です。それぞれが巨大で大きさが同じ生殖器を持つ2羽の雄の間では、他方よりも多少でも長い生殖器を持つ方が雌の卵管内でより都合の良い場所に精子を届けることが出来、受精の機会を高めるのです。明らかにこの雄は受精競争の勝者になる可能性が高く、それ以後、選択は生殖器の長さを選ぶように働きます。

雌の乱婚が多く見られる種では、雄の繁殖成功を強化する行動的適応にはほとんど制限がないように見えます。動物界での例は多数ありますが、ここでは鳥類に的を絞りましょう。

ほとんどの鳥には生殖器がありません。精子は単に雄の総排出腔から雌のめくれ上がった排出腔に移されるだけです。乱婚型でご存知のヨーロッパウズラは雄の総排泄腔の近くに目立つ腺を進化させ、そこから授精に際してシェービング・クリーム状の塊りを出します。これは精子の活力を強めるものです。アカハシウシハタオリはハーレムのような一夫多妻制で繁殖しますが、2羽の雄が連合を組み、最大で12羽の雌の集団を共有します。受精競争は厳しく、雄は授精の成功率を上げるために総排出腔のすぐ前に偽の生殖器を進化させました。

2羽の雄が最大12羽の雌の集団を共有するハーレムのような一夫多妻制で繁殖するアカハシウシハタオリ。
写真提供:© Greg Tee

この長さ1-2㎝の導管のない硬い棒状の結合組織の正確な機能は謎のままです。それは雌の総排出腔に挿入されるわけではなく、極めて長時間の交尾の間そこに擦り付けられるのです。ほとんどのスズメ目の鳥の交尾は1-2秒です。これに対してウシハタオリは30分間もの交尾をします。雄によるこの長時間の総排出腔マッサージは明らかに雌に他方の雄ではなく、この雄の精子を使わなければならないと「説得」しているのです。

目立たない小型の茶色の鳥ハシボソヨシキリは、ポーランドやベラルーシの湿地で繁殖しますが、ウシハタオリと同様30分間も交尾をします。この種は雌雄間に全く絆を持たない完全な乱婚制のようです。繁殖可能な状態の雌は、手当たり次第に交尾をしているように見えます。雄は雌の背中にしがみ付き、2羽はネズミのペアのように草地の中を一緒に跳び回ります。この間、雄はおよそ7分ごとに雌を受精させますが、主な目的は雌の器官を精子で一杯にするのです。雄のハシボソヨシキリは大きな生殖器を持っていますが、分子の研究により一腹雛に異なる父性が混じっているのが普通であることを確認しています。

私のお気に入りの例は、クロインコ属です。鳥でこれほど極端な例に出会ったことがありません。それはまるでイヌで見られる長時間の交尾のようでした。雄と雌は交尾器を30分以上もつなげていました。マダガスカルの同僚が、野生のクロインコが乱婚制であることを見ていました。湿った保存状態の雄の博物館標本を解剖し、生殖器が巨大であることを見つけた時、私はこの特別な種は博士論文研究の魅力的な対象になるものと決め、事実そうなりました。配偶様式は、完全に乱婚制で、雌雄ともに異なるパートナーと度々また長時間交尾します。雌は原則的に交尾と引き換えに雄に食物を求めます(雌はこれを雛に食べさせる)。雄は出来るだけ多くの雌と、当たりくじを確保することを「期待」して交尾をし、代わりに雛を育てるための食物を雌に渡します。交尾との関係性は、半時間余り雌を独占するための適応で、他の雄を寄せ付けないことにより雌の卵子を授精させるために彼の精子が使われる機会を最大にするためです。

今のところ雄の最終的な適応は精子の細胞です。精子競争の研究の初期段階では精子には違いがなく、数が重要だと想定されていました。現在私たちは、実際には数と共に質が重要であることを知っています。精子は雄内および雄間の両方で、またデザインと性能の両方で違いがあります。ヨーロッパカヤクグリの極めて高い乱婚制の配偶方法から予想できるように、雄のカヤクグリは均一でスマートなポルシェに似た精子を大量に作ります。これに対してウソは、数が少なく雑多なトラバント(旧東ドイツで作られていた小型乗用車)のような、非常に多様で特に良く出来ているわけではない精子のコレクションを作ります。それでもその中には受精を確実にするには十分な良い精子があるのです。他の雄と競争する必要性が低い場合、品質管理への投資で頭を悩ます必要はないでしょう。雄のウソの戦略は、単純に彼のパートナーの卵子が受精するのを確実にするために十分なまずまずの精子を作るというものです。ヨーロッパカヤクグリにとっては個々の精子が重要で、品質管理も欠かせません。

鳥類の精子の分野における私たちの最も特別な発見の一つが極めて一夫一婦制を守っているもう一つの種キンカチョウに関することです。ウソと同様キンカチョウも多様性の高い精子を作ります。キンカチョウの一部は長い中間部(精子へのエネルギー供給に重要)がある長い精子を作り、他の一部は長い中間部のある短い精子を作り、更にその他は短い中間部の短い精子を作ります。これらの異なるデザインは、遺伝子的に決まっています。それらは精子の泳ぐ速さを決めるので、そこから他の雄の精子と競争する際に競争力を決めます。全体的に長い精子は泳ぐ速さが早いので、雌の卵子を受精させやすいでしょう。

これまでのところ、私の事例は主として雄に集中していました。では雌はどうなのでしょうか?長い間、雌は単なる受け身の受容体で、雄の配偶子のための導管と考えられて来ました。性選択は主として雄に対して起きるというものでした。確かに雌の乱婚制に対しては、解剖学的証拠として相対的な生殖器のサイズほどはっきりとした違いを示すものはありませんでした。ところが、乱婚型の雌は自身の卵子を受精させるために使う数羽の雄の精子を決めることが出来るのではないかとの見解が出て来ました。このような「謎めいた雌の選択」が行われているのを、どこで見ることが出来るでしょうか?もっとも明白な機会は、雌が受精をさせる雄を交尾前に選んでいるとは思えないような状況にありました。「謎めいた雌の選択」(「謎めいている」理由は、この選択が外からは見えない雌の卵管の内部で起きているため)が見られる可能性のあるもっとも明白な状況は、ハクスリーガモ(Huxley’s duck)の場合で、生殖器で武装した雄が雌を効率的に襲うのです。

雄のマガモは無理やり雌の上に乗り、時には極めて残酷に大勢で雌を溺死させます。
写真提供:© AnemoneProjectors

私はこのことを調べようと思い、博士研究員のパトリシア・ブレナンと一緒に雌のカモの生殖器系を調べました。驚いたことに、それは私が何年も解剖して来た多くの他の雌の鳥(すべて路上に死んでいたもの)とは違っており、他の鳥では膣は単なる管だったのです。要するに雌のカモは種が違っても複雑な形状の膣を有しており、その複雑性は雄の生殖器の長さと関連しているのです。一部の水鳥の生殖器は小さく、一方アルゼンチンに生息するコバシオタテガモなどの生殖器は雄の体長よりも長いのです。

一部の水鳥の膣には子宮あるいは卵殻腺との分岐点に、らせん構造と最大3つまでの側枝があります。私たちはこれらを襲った雄の精子を寄せ付けないための仕掛けだと考えています。無理に受精させられそうになった時に、雌はそれ以上の挿入を防ぐためにらせん部をギュッと占めるだけで、雄のヘビのような生殖器を袋小路になっている通路に導き、そこで精子は卵子を受精させることはほとんどできません。彼女が卵子を受精させたいと「望む」パートナーとの場合は、雌はリラックスして受け入れるのです。

最後の思わぬ展開があります。鳥類とヒトを含む哺乳類では、新しい生命の始まりに違いがあります。よく知られているように1個の卵子を受精させるには1個の精子だけで良く、ここから新たな生命が始まります。ところが鳥類では違います。1個の精子は確かに鳥の卵子を受精させますが、それが新しい命とはならないでしょう。1900年代の初め以降、排卵の直後から鳥類の卵子は胚盤(雌のDNAがある領域)の中に数個(最大60個まで)の精子を含んでいます。厳密にはこれらは精子の数だけの核です。不思議なことに、極最近までこのことに疑問を抱いた人がいませんでした。

これらの余分な精子は、何のためのものなのでしょうか?キンカチョウを使って私たちは精子1個だけが卵子に入ることを可能にする方法を見つけました。それだけで本来十分なはずなのですが、私たちはその場合それに続くべき胚発生が起きなかったことを示しました。より多くの精子が入るようにすると、受精と胚発生の両方が得られました。余分な精子は何らかの方法で「ヘルパー」の役割を果たしており、明らかに胚発生を引き起こすのに不可欠なのです。このことは発生のレベルで注目に値しますが、同時に乱婚と関係するいくつかの疑問を喚起します。例えば、もし雌が2羽の雄により受精させられ、そして両方の雄の精子が卵子まで届いたら、雌のDNAと結合する雄のDNAは「ヘルパー精子」のDNAではないという状況が起きるのではないでしょうか?1羽の雄が望んでもいないのに、他の雄を父とする新しい命の始まりを助けるなどということがありうるでしょうか?解明すべき多くのことが残っています。

行動生態学の見地から、未解決の難問があります。なぜ雌はわざわざ1羽以上の雄と交尾をするのでしょうか?雌にとってどのような目的があるのでしょうか?雄にとって乱婚はより多くの子孫を残すので報われます。雌にはこれが当てはまりません。雌の乱婚制については、予備の雄の子孫は質が良いのではないかという考えを含め、多くの説明が行われてきました。しかし、多くの研究があるにもかかわらずそれが当てはまるとは思えません。これは解決を待っている難問なのです。

 

報告者:Tim Birkhead

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