レッドリスト2019年版:グアムクイナが野生絶滅から復活

グアムクイナ 写真提供:©Andersen Air Force

今年のIUCN(国際自然保護連合)の絶滅危惧種のレッドリスト更新版は、野生絶滅から前代未聞の復活を遂げた鳥類を含む素晴らしい保護活動の成功例を示しました。その一方で、人間活動による脅威でその他の種の再起を困難にしています。

グアムクイナは、「野生絶滅」が宣言されたにも関わらず復活を遂げた、史上2種目の鳥です。最初の種は、1980年代末のカリフォルニアコンドルで、その苦境はカントリー・シンガーのJohnny Cashが起こした森林火災事故により不名誉にも広められました。今年のIUCNの絶滅危惧種のレッドリスト(バードライフが鳥類部門を担当)の更新版では、グアムクイナが注目を集めています。

かつては西太平洋のグアム島に広く分布していたこの速く走る飛べない鳥は、第2次世界大戦の終わりに米国の軍用貨物船から偶発的に島に移入されたミナミオオガシラ(蛇の一種)により急速に減少しました。この外来の捕食動物は、それ以後3種の固有鳥類を絶滅に、また他の数種を同様に危惧すべき状態に追いやり、島の生態系を大きく変えてしまいました。1987年に本種を守る最後の望みをかけて、21羽のグアムクイナが捕獲されました。現在、35年にわたる捕獲飼育プログラムのおかげで、蛇のいない近隣のココス島に小さな個体群がしっかりと根付いています。しかし、ココス島は38ヘクタールしかないことから、個体群は極めて小さなものに止まるものと思われ、そのため本種は依然としてCR(絶滅危惧ⅠA類)に分類されています。グアム本土に戻すためには、ミナミオオガシラの駆除が必須です。

モーリシャスでは、モーリシャス野生生物基金(同国のパートナー)と国立公園保全サービスによる捕獲飼育と生息地の移転を含む保護活動のおかげで大成功を収め、モーリシャスホンセイインコが順調に復活しています。現在では750羽が野生状態にあり、本種は2007年のCR(絶滅危惧ⅠA類)からEN(絶滅危惧ⅠB類)への改善に続き、今年VU(絶滅危惧Ⅱ類)に再分類されました。この成功はモーリシャスの別の種モーリシャスバトにつながりました。モーリシャスバトは、捕獲繁殖プログラムのおかげで去年EN(絶滅危惧ⅠB類)からVU(絶滅危惧Ⅱ類)に再分類されましたが、一時はわずか9羽しかいなかった本種が復活したことによります。

モーリシャスホンセイインコはもう絶滅危惧Ⅱ類ではない。
写真提供:©Colin Houston

「グアムクイナやモーリシャスホンセイインコの復活は、効果的に目標が設定された保護活動により、何が出来るかを示した素晴らしい証拠です。しかし、すでに自然環境が破壊されている場合は、全ての種を絶滅の縁から回復させることができるわけではないことを銘記することが重要です。優先事項は、個体数減少や絶滅が起きるのを防ぐために欠かせない生息地の保全です。」とバードライフの種の保全のためのグローバルサイエンス・コーディネーターのIan Burfield博士は言っています。

正にこのメッセージを強調するように、2011年のアニメーション映画「リオ」で有名になったアオコンゴウインコが、「絶滅」と想定された他の3種と共に、公式に「野生絶滅」に再分類されました。これら3種の絶滅のうちの2種は、ブラジルの縮小しつつある大西洋岸森林で生息しており、この地で起きている森林破壊の壊滅的影響を反映しています。

アオコンゴウインコの野生復活のプロジェクトが進行中。
写真提供:©Al Wabra Wildlife Preservation

アオコンゴウインコを野生に戻すための優先事項は、安全な生息地の確保です。現在約160羽が捕獲飼育されています。現在ドイツを拠点とする絶滅危惧オウム類保護協会(ACTP)が、今後2年間のうちに50羽をブラジル国内にリリースするためにブラジル政府と活動しています。その準備として、彼らはアオコンゴウインコのかつての生息地であるバイーア州北西部の乾燥森林内に繁殖・研究センターを建設しています。また、去年SAVE Brasil(ブラジルのパートナー)の支援により、同エリア内に約29,000ヘクタールの野生生物保護区が作られました。他の重要な準備には、違法な野生生物売買を防ぐために行う地元住民への教育と交流プログラムがあります。

「リリース・プロジェクトのための主な挑戦は、モデルになるような野鳥がいない場合には捕獲鳥を野生に戻すことを教えることです。それに加えて、地元コミュニティが関与している場合でも、常に密売の危険があるということです。」とSAVE Brasilの会長Pedro Develeyは言います。

アオオビカザリドリは絶滅危惧ⅠA類ですが希望はあります。
写真提供:©Ciro Albano

どのようにすれば野生化するか分からない鳥の全個体群を抱えている場合は、捕獲リリース・プログラムが最後の唯一の手段であるべきです。南米の大西洋岸森林におけるバードライフの活動は、これ以上の絶滅を防ぐためにこの貴重な生息地を確保するために努力しています。今年アオオビカザリドリは深刻な森林破壊によりCR(絶滅危惧ⅠA類)に引き上げられました。状況は厳しいですが、幸いにブラジル、アルゼンチン、パラグアイのバードライフパートナーが森林の長期にわたる保全のために自然保護区、エコツーリズム、持続可能な農業を統合する重要なプロジェクトで一つになりました。これがぎりぎり間に合うことを望みます。大多数の絶滅は、グアムクイナのように元に戻せるわけではないからです。

報告者:Jessica Law

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