野生生物と気候への壊滅的打撃

写真提供:© Siim Kuresoo

2018年1月18日に行われた欧州における再生可能エネルギーの将来に関する欧州議会議員(MEP)による投票は、MEPが農業と林業からの圧力に屈し、環境に有害なバイオマスの使用を阻止する機会を失ったために、森林、野生生物および気候に対する大打撃となりました。

投票の数日前に行われた数百人の科学者による嘆願にもかかわらず、欧州議会議員(MEP)は木の幹や丸太を燃料として燃やすことを禁じることができませんでした。EU全体ですでに数百万トンの木材が、熱や電気を起こすために使われています。樹木をまるごと燃やすことに制限をかけない限り、EUの森林は今後数年以内に今まで以上の圧力を受けることになるでしょう。

このような政策は、気候の変化も危険にさらします。炭素排出を早急に減らしたいなら木材を燃やすことは止めるべきだと、科学的な証拠が示しているのです。実際に木材の燃焼は、化石燃料と比較しても炭素排出を増加させる可能性があります。

欧州議会議員(MEP)は、バイオマスの使用を最も効率の良い発電所に限って制限することに賛成しました。これは全体的なバイオマスの使用を減らすことに繋がる可能性があります。しかし、もっとも有害なバイオマス原料の使用を禁止しなければ、欧州の森林は今後も危険な状態が続くでしょう。

一方、MEPは運輸部門では再生可能エネルギーのために新しい、増加された目標に投票しました。再生可能な運輸用燃料はこれまで環境に有害な穀物由来のバイオ燃料により供給されていました。土地利用形態の変化により、これらのバイオ燃料は環境に害をもたらし、大きな炭素排出につながる可能性があります。

これらのバイオ燃料の使用の上限が設けられ、各EU加盟国におけるバイオ燃料の寄与は、2017年のレベルに対して最大で7%に制限されます。しかし、たとえ「進歩的」でより持続可能性の高いバイオ燃料の支援対策に賛成しても、この水準は依然として有害なバイオ燃料の大量の使用が認められるものです。

これらのすべては、同じファイルを検討する同じ会議で起きた事で、MEPは野生生物に関係するいくつかの案件で、ある程度の前進を果たしました。バイオ燃料の壊滅的な結果にもかかわらず、全体的には散々な目になることは望まないので、これらの良いニュースの要因を強調することは意味があります。欧州議会がこれらの問題について強い立場を維持することは、非常に重要でしょう。

 

「再生可能エネルギー指令」のためにMEPは:

―再生可能エネルギー目標を35%に強化することを支持しました。これは委員会の提案である27%よりも改善されたものです。パリ協定の公約(2030年までに45%にすれば2050年までに炭素排出増加ゼロを実現する可能性が高くなる)を実現するために必要と考えられるレベルよりはまだ低いのですが、議会の立ち位置は少なくとも正しい方向に向かっています。

―MEPはEU加盟国に対して、空間計画と環境リスクのより具体的な分析を含む再生可能エネルギー計画へのより戦略的なアプローチを取る要望を導入しました。

 

EU加盟国の政府により受け入れられれば、これはタイムリーで費用のかかる競合なしで達成できる再生可能エネルギーのより現実的な評価を行う助けとなり、またクリーン・エネルギーの未来を追及する生物多様性に対する公約を台無しにすることは絶対にないでしょう。多くのバードライフ・パートナーと他のNGOが進歩的な空間マッピング作業(例:RSPBの2050年エネルギー・ビジョン;オランダのパートナーVBNの「鳥に関する風力発電施設のリスク」)を示したように、初期段階での風力発電施設や他の再生可能エネルギー施設をどこに建設すれば野生生物への影響を低くすることが出来るかを明らかにする努力を払い、またもっとも重要なこの情報を再生可能エネルギー設備の優先場所を決めるために利用することは私たち全員が避けている衝突を防ぐ助けになるでしょう。

 

欧州がどうすれば広くエネルギーの転換に近づくかを導く「エネルギー規制連合の管理」においてMEPは:

―「エネルギー連合」が、「国家エネルギー・気候計画」に政策と計画の自然保護への影響を評価し、特に地域のエネルギー協力の機会の特定は、EU指令2011/92と「エスポー条約」の条項に従って行われることを強調することを求めることにより欧州の自然保護との一貫性を求めました。

―またMEPは、私たち全員がその維持に真剣に努めて来た自然指令による保全の全てを踏みにじる恐れのある、大規模再生可能エネルギー・プロジェクトへの優先権を与える事を求めた有害な提案に、反対票を投じました。

―MEPは市民社会、地元当局及び政府の間での会話のための新しい場の設立を支持しました。

―さらにMEPは、EUにおけるメタン排出に取り組むための具体的な戦略を支援しました。メタンは大気中への放出後、短時間で気候変動に大きな悪影響を及ぼす可能性があります。温室効果ガス排出の半分は畜産に由来するもので、またメタンは天然ガスを抽出し、燃焼させる時にも発生します。このことを考えると、メタンがこれまでEUの気候の保全を考える際に考慮されてこなかったことは驚くべきことです。私たちは、EU加盟国政府がこれまで無視されて来たこの問題に取り組むための戦略の必要性を認識し、受け入れることを望みます。

 

欧州がエネルギーを含め確実に真に持続可能な未来を達成するためには、EU加盟国の「国家エネルギー・気候計画」が包括的な見地に立つものであり、すべての政策分野の間の複雑な相互作用をすべて考慮し、地球環境の限界を認めたものにより伝えられることが不可欠です。

私たちは議会に対して欧州委員会との交渉に進むに当たり、これら広義の持続可能性の問題をしっかりと把握することを求めています。しかし、矛盾した行動を避け、このクリーンなエネルギー法制が、私たちが必死に求めている排出削減に確実につながる真の持続可能なエネルギーの未来の実現のため、欧州は私たちのエネルギー・ミックスにおけるバイオ燃料の役割を制限するために、より強力な行動を取らなければなりません。

 

報告者:Matt Williams

 

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