壁画プロジェクトで都心に野鳥を

George Boorujyによるアメリカムシクイの五重奏団 写真提供:© Mike Fernandez

2014年以降、気候変動により絶滅が危惧される100種以上の鳥類が、実物よりも大きな絵となり、ニューヨークのハーレム地区の住人を歓喜させ、認識を広めてきました。このプロジェクトは大西洋を越え、ヨーロッパでの展開が予定されており、都市の住民と自然を再び結びつけようとしています。

時には、人々の注目を捉えるのは偉大な書物です。また別の時には、力強い演説が人々を行動に駆り立てるのに必要な力となります。そしてまれに、多忙な人々をその場で立ち止まらせ注目させる唯一のものが、ビルの側面から人々を見つめる大きな美しい鳥の壁画であることもあります。

現代では、日々の暮らしの中で自然と触れあう人々がどんどん少なくなっており、特に都市に住んでいる人はそれが顕著です。「自然体験欠乏症」は、若者層で増大することが懸念されています。ある米国での調査によると、毎日屋外で過ごす子供の率がわずか1世代の間に76%から26%に減少しています。このような自然との断絶は私たちの心身の健康にとって悪いだけでなく、自然とのかかわりにも大きく影響します。調査の中では、自然の中での経験が、人々の自然保護に対する支援意欲を高めることが分かりました。反対に「自然保護のゴッドファーザー」と呼ばれているサー・デービッド・アッテンボローの言葉では、「自分が気にかけてもいないものを守ろうとする者はいないし、経験したことのないことは誰も気にもかけません。」

旧正月のツバメトビとその他の鳥
写真提供:© Mike Fernandez

この状況を打破するため、オーデュボン協会(米国のパートナー)が「オーデュボン壁画プロジェクト」で、茶色の煉瓦と灰色のコンクリートに鮮やかな色彩と美を与え、街に鳥を呼び込みます。これまで、芸術家たちが100種以上の北アメリカの鳥の巨大絵画でニューヨーク市のハーレム地区を飾りました。ここは著名な鳥類学者で、オーデュボン協会の創立者John James Audubonの昔の住居近くです。

Tom SanfordによるJohn James Audubon とミズイロアメリカムシクイの絵
写真提供:© Mike Fernandez

19世紀にオーデュボン自身が描いた見事な絵を思わせると共に、これらの視覚的な喜びにはより深いメッセージが込められています。壁画に描かれている鳥はいずれも気候変動により直接絶滅の危機にさらされています。例えばオーデュボン協会の2019年版気候報告「気温に伴う生存率」によると、地球温暖化によりミズイロアメリカムシクイ(準絶滅危惧種)が生息地である森林の火災により高い危機に直面しています。最終的に本プロジェクトは、オーデュボン協会の2014年版「鳥類と気候変動」報告書に示された、地球温暖化により脅かされる314種の北米の鳥類すべての壁画を制作することを目指しています。

ATMによるズグロシルスイキツツキ
写真提供:© Hillary Eggers

壁画は早くも影響を与え始めています。オーデュボン協会のウェブサイトで、グラフィティー・アーティスト(落書き芸術家)のATMは、インタビューでこう語っています。「私が絵を描いているといつも人々は立ち止まり、どれほど絵が気に入ったか、そしてどれほど近隣の景観が改善されるのを喜んでいるか、賞賛の言葉をくれます。」

視覚的な楽しみに加えて、壁画は人々に自然保護について考えさせることにも成功しています。ワシントン・ハイツのGeorge Boorujyの壁画を見た後で、昔からここに住むAida Rojasは、オーデュボン協会に対して次のように述べました。「地球上に作られた最も美しいものの幾つかは、自分自身を守ることが出来ないという弱点を持っています。これらの鳥の一羽一羽が生き永らえ、その美しさを表現する機会があることを願います。」

Peter Daveringtonによるハクトウワシ
写真提供:© Camilla Cerea

しかし、気候変動で脅威を受けているのは北米の鳥だけではありません。また、自然とのつながりを失っているのは、ニューヨーク市民だけでありません。新型コロナウイルスのパンデミックが欧州を襲う前には、このプロジェクトはフランスにも拡大する予定でした。バードライフのフランスのパートナーLPOは、同様に気候変動の脅威を受けている欧州の鳥に10カ国で光を当てるため、オーデュボン協会と芸術と環境のNPOであるCOALを支援しています。同プロジェクトはフランス全土での壁画に続き、John James Audubonが育ったロワール=アトランティック地方で2020年4月に展開される予定でした。今後の予定はまだわかりません。しかし、フランスの都市が平常を取り戻した時、煉瓦造りの壁上の鳥の上品な優美さで街を飾る以上に素敵なお祝いの方法はないでしょう。

Mary Lacyによるマツカケス  写真提供:© Mike Fernandez

報告者:Jessica Law

 

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