未知の島、バトゥ・バラ

バトゥ・バラは農業はもちろん、上陸さえも困難です。 写真提供: © Steve Cranwell

今回、このほぼ未開の南太平洋の離島の全域で生物調査が行われました。調査により島のすばらしさが示された結果、バトゥ・バラ基金はこの緑豊かな野生生物の楽園を守る活動を倍増させることにつながりました。

 

バトゥ・バラ島は南太平洋の島々の魅力と美しさが完璧に具体化された場所です。フィジーのラウ諸島の北に位置し、800ヘクタールの面積を持つこの島は、人類の歴史上ほとんどの間、無人島でした。その理由には、水が全くないことや、サンゴ礁の急峻な地形などがあげらます。

一時期、島には標高300mの頂上付近に要塞化した集落がありました。フィジーの戦士にとって戦略上重要な見張り場所だったのでしょう。しかし、それ以外には、フィジーの農場開拓時代にヤシの生産が盛んになった時期を除くと、バトゥ・バラ島は人の影響をほとんど受けてきませんでした。南太平洋の島々で大きな問題となっている外来種とも無縁であり、バトゥ・バラ島はかけがえのない野生生物の安息地となっているのです。

フィジーの先住民は詳しい知識を持っていましたが、島の公式の科学的知見は実質的にはWhitney探検隊によりもたらされたもののみでした。この探検隊は1924年にフィジーを訪れ、原産の動植物に加え、固有のヒロオビフィジーイグアナを発見しました。

IUCNのレッドリストで絶滅危惧ⅡB類に分類されているヒロオビフィジーイグアナ 写真提供:© Steve Cranwell

現在Vatuvara Private Islands社の管理のもと、島は自然保護区として守られています。11月にバードライフ・パシフィックNatureFiji-MareqetiViti(フィジーのパートナー)や米国地質調査所バトゥ・バラ基金とともに4日間の調査を実施しました。

まず、島の爬虫類、特に絶滅の危惧のあるヒロオビフィジーイグアナとパシフィックボアを集中的に調査しました。夜間には、睡眠中の爬虫類を何種類か同定のために捕獲しました。

同定のために慎重にパシフィックボアを捕獲写真提供: © Steve Cranwell

島の動物ではヤシガニが最も良く見られる種でした。日中も活動的ですが、この世界最大の節足動物ヤシガニ(体重4㎏、足から足までの長さ1メートル)は、夜に活発になり、林床を歩き回ったり、食べ物を求めて木や垂直の岸壁を登ったりします。かつては太平洋とインド洋の島々全域で普通に見られたこの独特で、40-60年も生きる長命の陸生のカニは現在脅威にさらされています。地元の珍味として扱われているため、ヤシガニの分布は、上陸困難な離島や保護地域に限られてきています。

ヤシガニは食糧として交易対象であるために脅威にさらされています。写真提供: © Steve Cranwell

バトゥ・バラは鳥の島でもあります。夜明けと夕暮れにはニクダレミツスイのほか、調査で確認した限りでは他に20種の鳥の囀りが響き渡ります。ほとんどが森林性の鳥で、バトゥ・バラ島の森林の豊かさを示しています。特に励みとなったのは、トンガバトで、この種は他の島では野良猫やネズミなどの外来種により絶滅が危惧されているのです。

外来種について言えば、ネコ、ブタ、ヤギ、クマネズミ、マングース、外来種の蟻のほか、フィジーでは普通に見られる他の外来種も見つかりませんでした。ただし、ナンヨウネズミは確認されました。このネズミは、小鳥やその卵だけでなく、多くの無脊椎動物や植物を捕食します。

フィジー語で「Baka」と呼ばれるSmall-leaved Fig(イチジクの一種)。バテゥ・バラ島の豊かな森林の大部分を占める。写真提供: © Steve Cranwell

良い調査というものは多くの疑問をもたらします。例えば、バトゥ・バラ島には海鳥がいません。ヤシガニの影響など様々な仮説が考えられます。鳥類学者Vilikesa Masibalavuは、島のFiji Whistler(Pachycephala vitiensis / モズヒタキ科の一種)の珍しい行動を発見しました。彼らは見つけることは難しくありませんでしたが、不思議なことにこの鳥は鳴き声を出さないうえに、雄が一羽も見つかりませんでした。

まだバトゥ・バラ島には未発見のものがたくさんあると思われますが、今回の調査により、フィジーの自然史における同島の重要性が明らかになりました。他の島ではますます増大する脅威にさらされている、多様な動植物が生息していることが分かりました。この事実を将来の活動のベースラインとし、鳥やヤシガニ、爬虫類の生息状況を追跡し、有害な外来種が定着しないようにすることが重要です。島を守るに当たって、バテゥ・バラ基金はフィジーの野生生物にとって不可欠な安息地を守ることに対し、明確なコミットメントを示しました。

報告者: Steve Cranwell

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