フィリピンアオバズク複合体(コンプレックス)を種に分離することで評価された自然保護活動家
1945年以後、フィリピンアオバズクは8つの亜種を持つ単一種Ninox philippensisとして扱われてきました。今回バードライフの科学者も共著したオリエンタル・バード・クラブが発行する雑誌‘Forktail’(エンビシキチョウの意味)に掲載された論文で、フィリピンアオバズクは生息する島によって異なる7種のコンプレックス(複合体)を形成しているとの提案がされています(そのうちの2種は分類学上これまで全く記述されたことのないものを含む)。これらの2種については、2人の自然保護活動家で昔からのバードライフ・インターナショナルのサポーターに敬意を表して、学名に彼らの名前を加えました。
これらのアオバズクは顕著な羽毛の型により3つにグループ分けが出来ます。第1グループは下面全体に縦じまがあり、頭部が無地なタイプ、第2グループは胸に斑点または横縞が入り、下面の下の方に縦縞があり、頭部に斑点があるタイプ、第3グループは横縞ないしほぼ無地の下面のタイプ(縞なしグループ)です。
標本は博物館のコレクションとして昔からありましたが、声の録音は2~3の島のタイプのものしか最近までなく、ほとんどが不完全か質の悪いものでした。
それでもこれらの録音はミンドロ島のタイプ(mindorensis)が基亜種のルソン島のタイプ(philippensis)とは声が全く違うことを立証するには十分で(前者の声はハイピッチな笛のような音でハスキーな声、後者は中間のピッチでの吼えるような声の連続)、それにより1999年にミンドロアオバズク(N. mindorensis)として独立種になりました。
形態的な違いがはっきりしているフィリピンアオバズク分類群を目的とした新たなフィールドワークにより、主要な島の個体群の声のレパートリーがほぼ完全なサンプルとして集められ、それによりフィリピンアオバズク複合体の種としての範囲を明確にすることが出来ました。
録音は鳥のグループでは高度な識別方法になることを明らかにします。同一グループの鳥では声のコミュニケーションが種を認識する上で非常に重要なのです。
「羽衣が異なるアオバズクは声も違います。ですからアオバズクのように本質的に異なる声を持つグループを1種として分類することは無理なのです。」と論文の共著者でバードライフ・インターナショナルの保護生物学のレベンティス特別会員のナイジェル・カラー博士は言いました。
論文著者の分析に基づき、彼らはフィリピンアオバズク複合体を次の7種に分類することを提案しています。
Luzon Hawk-owl Ninox philippensis
Mindanao Hawk-owl Ninox spilocephala
Mindoro Hawk-owl Ninox mindorensis
Romblon Hawk-owl Ninox spilonota
Cebu Hawk-owl Ninox rumseyi
Camiguin Hawk-owl Ninox leventisi
Sulu Hawk-owl Ninox reyi
これまで記述がなかったカミギンアオバズクの学名にはバードライフの副代表、後援者、元財務部長であり長期にわたるバードライフへのサポーターであるアナスシオス・P・レベンティス氏の名が付けられました。彼はバードライフの堅実な発展にとって大変重要な役割を果たし、また特にナイジェル・カラー博士への支援は博士が過去10年に亘りフィリピンの鳥とその保護問題に集中して活動することを可能にしました。一方、セブアオバズクに対しては自然保護活動家で鳥類学者で、同じくバードライフの後援者、元財務部長、長期に亘る支援者で特にセブ島での調査と保護活動の促進に助力したステファン・J・ラムゼイ氏の名が付けられました。
これらのアオバズクの保護状況については完全な評価が行われるのを待っているところです。IUCN(国際自然保護連合)の鳥類部門のレッド・リスト指定機関として、バードライフはこれら新種のレッド・リストのカテゴリーを2013年版レッド・リストの更新に合わせて評価を行う予定です。ただし、7種のうちの5種、すなわち、Mindoro, Romblon, Cebu, Camiguin およびSuluに関しては危惧される状態の可能性があります。